怠惰で不潔な俺と、それをほじりとる君

やはり美味い。ニシヤさんの料理は本当に美味い。今日はハンバーグだった。以前死にそうになった時以来、休日はニシヤさんが来て朝昼晩の料理と家事をしてくれる。非常にありがたい。


「新田くん、耳からちょっと何かカスみたいなのが出てない?」

「あ、本当だ……すみません、不潔で」


ニシヤさんに言われてハッと気付く。そういえば最近耳かきをしてないなと。これもまた自分が怠惰な故か、それとも忘れっぽいのがあるのか、あるいはその両方か。とりあえずニシヤさんが帰ったら耳かきするとして……


「私で良ければ……耳かき……しようか?」

「!!!!喜んで!」


すっかり年上のお姉さんの様な砕けた喋り方になったニシヤさんの、可愛らしい声での耳かきのお誘い。断る訳が無い。


「じゃあ寝っ転がって……」

「はい……」


そう言って寝っ転がる。ニシヤさんは正座に近い姿勢で俺の頭を膝に乗せる。久々の耳かき、そして久々の人の膝。最後に人の膝に頭を乗せたのはもう10年以上前だろうか。


「割と取れるねぇ……」

「っ……」


少し動いてしまいそうだ。だが俺は耐えられる。ぽりぽりとした耳をほじる音とニシヤさんの声があれば。しかし本当に気持ちがいい。まるで天国に居るかの様だ。


「お、無くなってきた……じゃあ次は反対ね……」

「はーい……」


そう言ってひっくり返る。膝の上が本当に気持ち良い。


「そんな痛がる素振り見せてないけど大丈夫……?痛くない……?」

「大丈夫ですよ……むしろ気持ち良いくらい……」

「本当?嬉しい……」


嘘偽り無い誠である。妙にニシヤさんが喜んでいる気もするが、気のせいだろう。


「そんなに気持ちいいの?」

「ええそりゃ勿論……」

「へぇ……じゃあ後で私もやってもらおう……かな……」

「へ?」

「はい、終わり」


そんな心地いい声を聞いて不抜けてる間に、至福の時間は終わってしまった。しかし後でやってもらうって……まさか?


「じゃあ次は私の分の耳かき……いいかな?」

「勿論!」


これは応じるしかない。何せニシヤさんに直接触れられる、ニシヤさんのあんな声やこんな声が聞けるかも、という2つのチャンスがあるからだ。


「あ、耳に手が届かないとあれなので一旦ヘルメットって外せますかね?」

「うん、じゃあ遠慮無く……」


そう言ってニシヤさんはヘルメットを外す。そういえばヘルメット外すの初めてだったな、一体どんな顔をしてるんだろう、クールなお姉様系?それとも案外ロリだったりして、体型はどこかで見た事あるグラマラスなものだったから……そう思いつつニシヤさんはヘルメットを外す。


「あれ?叶音ちゃん?」

「ひっ、人違いです!」


すぐさまヘルメットを着け直した。見た瞬間叶音ちゃんの顔に見えたけど気の所為かな?


「ごめんなさい……まだ恥ずかしくて……徐々に慣れていくために次からはもう少し薄い服装で行くから……」

「あ……はい……」

「今日はもう帰るね……」

「お気をつけて……」


しかし一瞬叶音ちゃんに見えたけど幻覚だよね?まさか2人が同一人物なんて事は無いとは思うけど……

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