無能で下心満載の俺と、それに乗っかっていく君

ここ最近俺は眠れていない。これは俺が怠惰過ぎて寝る事すら面倒臭いのもあるが、それに加えて、叶音ちゃんへのお返しをどうするかという悩みが頭の中から離れないという理由も一応ある。


さあどうお返ししていこうか、と考えて何日も経過している放課後に、彼女はまた現れた。


「何してるの……?」


相変わらずの可愛らしい小声でやって来てくれた。今の教室は俺と彼女の2人きりだ。


「いやー叶音ちゃんにどんなお返ししようか考えてたら何日も経っちゃって。どんなお返しがいいかな?」

「んー……私へなら強いて言えば……け、結婚……めおと……お、お友達になって欲しいな!」


お友達の前がよく聞こえなかったが、まあ友達になればいいのだろうか?しかしこんな美少女となら友達だけで無くあわよくばそれ以上の関係になりたい。その為には早く仲良くならなくては、と思って一計を案じた。


「友達?勿論いいよ!あとどうせなら近くのミ○ド(ミ○ドーナッツ、ドーナッツのチェーン店)行かない?丁度クーポン券余っててさ」

「ミ○ド!?いいの?」

「勿論さ、この位のお返しはさせてよ!」


最近送られてきた仕送りの中に入っていたミ○ドのクーポン券を利用させていただく。しかしミ○ドのクーポン券も仕送りに入れておくだなんて、今回の仕送りは随分太っ腹なものだ。そうして俺達はミ○ドに行く。


「わぁ……綺麗……ちーく、愛信くんは何選ぶ?」

「じゃあこのニューストッキングス(あまり味のしないストッキングをくっ付けた形のドーナッツ)を選ぼうかな、叶音ちゃんは?」

「じゃあ私もニューストッキングスで、お揃いにしよ?」


お揃いなんて言ってくれて嬉しいな。それにしてもこっちが名前+ちゃん付けで呼んでるのに何一つ不快感を持って無いような素振りを見せてる。本当に凄い。しかもそれに合わせて俺の事も名前+くん付けで呼んでくれるし、もう神様としか言いようがない。そもそも学年で俺の名前を知ってる奴が何人いるか。しかもこうしてくれるなんてかなり貴重だ、なんて思いながら会計を済ませて店内端の席に向かい合うようにして座る。


「いただきま〜す……」

「相変わらずかわいい……いただきます……」


おっとつい本音が漏れてしまった。叶音ちゃん可愛いから仕方ないね。


「へ……可愛い?」

「あ、うん可愛い、本当に可愛いよ?こんな奴が褒めても気持ち悪いと思うかもしれないけど……つい本音が……」

「え?そんな事ないよ……!とっても嬉しい……誰にも言われた事無いから……」


どうせ俺なんて気持ちの悪い存在だ。だからそんな俺になんて言われて嬉しいはずが無い。誰にも言われた事無いというのもただの建前だろう。こんなにも可愛いし。


「え?そう?こっちも嬉しいよ……」

「嬉しいのが嬉しくなってくる……」

「これが無限ループってやつ?かな?」

「多分……あ、食べないと」


そういえば叶音ちゃんの可愛さに見とれていてドーナッツ食べるのを忘れてた。うん美味い。


「愛信くんさえ良ければさ……また、こういう風にどっか行ったりしない……?」

「喜んで!」


つい興奮してしまった。まあドーナッツは美味いし叶音ちゃんは可愛いしで本当に良い放課後過ごせてる気がした。こんなに可愛いなら彼氏とか居るのかな、今度聞いてみようかな。

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