ひたすらに走る俺と、起こしてくれた君
俺は今、夢の中にいる。なぜここが夢かと断言できるか、それはここがとてつもない程非現実的だからである。その証拠に、今俺はとてつもない美少女で、ニシヤさんと同一人物であった西谷さんと一緒にご飯を食べている。
「美味しいよ、西谷さん。」
「ありがとう新田くん。所で新田くんはどうしてそんな上機嫌なのかな?」
「んっ、決まってるじゃないですか、西谷さんとニシヤさんがまさかの同一人物だった事ですよ」
「どうしてそれで上機嫌になるの?」
「だって2人共好きですから」
「……………」
あれ、西谷さんの機嫌がおかしい。
「2人共好きって何?浮気?」
「いや浮気も何もそんな……」
「私新田くんがそんな人とは思わなかったんだけど?まさか浮気癖があるなんて、信じられない!」
「え、そんな待って」
「さよなら、新田くん……」
待ってくれ……待ってくれ……そんな、そんな、また失言で大切な関係を壊すなんて……やっぱり俺は屑だ。よし死のう。どうせ現実でも同じ事が起こる。現実の西谷さんも困らせないために。まずは起き上がって……
「もしもーし……もう皆……」
あれ?目の前にいるのは夢で見た美少女……まさか、いや他人の空似だ。現実にあんな美少女が、居たとしても俺の目の前に現れるはずが無い。
「あ、誰も居ない」
「もう昼休み……終わっちゃうよ……」
あ、そういえば現実は昼休み、5時間目は物理で物理室行かないと行けないんだったか。待って?じゃあどうしてこの美少女はここに?ウチのクラスにはこんな子居なかった様な。
「あ……私は叶音……」
「叶音ちゃんね、ありがとう」
とりあえず叶音ちゃんに礼を言って……あっつい叶音ちゃんって言っちゃったよ。多分後から気持ち悪がられるだろうな。まあそんな未来の自分が後悔する災厄はさておき教室の鍵を……あれ鍵はどこに?
「あ、これ鍵……」
「ほんと何から何までありがとうね……今度お礼させて……」
「待ってる……」
まさか鍵まで持ってるとは。しかしつい純真な下心でお礼させてとまで言ってしまったが、待ってる?ワンチャンあるのかな。
「じゃあ行くね……」
「行ってらっしゃい……」
まるで熟練のパートナーみたいだ、なんて思いつつ俺は彼女に手を振って走り出した。叶音ちゃんか。名前覚えておかないとな。
しかしこんな子がどうして俺を起こしに?まあ誰かに頼まれたんだろうか。しかし急がねば。走れば間に合うかな?なんて思いながら俺は物理室までほぼノンストップでかけて行くのであった。
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