幕間 救われた知りたがりの私と、その先で待つ君

『では続きはL○Eで』

『はい!ありがとうございます!』


DMの制限が私の方に来て、もっと話したいと言ったら彼がL○EのQRコードを貼ってくれた。


『これしか無いもので……』


私だってそれしかない。寧ろ好都合だった。しかしまあ我ながらよくここまで話せたものだ。実に人と話すのは2年生に進級した時以来かもしれない。その位珍しい出来事ではある。とりあえずQRコードを読み込んでみる。


『新田』


プロフ欄にはその位しか書かれていなかった。私も同じ様な感じではある。同類という事だろう。運命かな、結婚申し込まないと。


『新田です!西谷さん!まだまだ話して下さりありがとうございます!』

『いえいえ!こちらこそまだまだ話して下さりありがとうございます!』


好きだ。丁寧な所も好き、感謝してくれる所も好き、もう全部が全部大好き。私西谷叶音は今画面の先に、そしてこのベンチから40mくらい先に居るであろう新田愛信ちかのぶに恋をしている。


『そういえば暑い時間帯になってきましたね。』


今日の気温は大体32℃、5月にしてはかなり暑い部類ではある。日傘をさしてベンチに座っていても暑い。今の私は彼への愛によって成り立ってる状態だ。


『私は部屋に居るから大丈夫なんですけど、新田さんは大丈夫ですか?』

『俺も部屋に居るから大丈夫ですよ!』


嘘だ。私は部屋に居ない。今日もただ彼を見るためだけに彼の住んでるアパートに近い公園のベンチに座っている。彼に救われた後からこの1ヶ月、彼を徹底的に尾行したおかげで今ここに座れて彼を見ている。


『部屋に居るんですか!熱中症対策気をつけてくださいね!』

『はい!西谷さんも!そういえば西谷さんご飯食べましたか?』


ご飯か、勿論まだ食べてない。あわよくば彼の横で、というのもまだ早い。まあ私の事はいいとして彼は?ちゃんと食べてるのだろうか。


『私は食べましたよ!新田さんは?』

『俺はまだですね。うち作ってくれる人が居なくて面倒くさくて……』


彼もまだ食べてないのか。まあその内食べるとは思うけども。それより作ってくれる人が居ない、か。私も居ないのでここも運命かな。やっぱり結婚申し込んでおかないと。ご飯も作ってあげたいし。


『そんな!早く食べてください!死んでしまったら元も子も無いので!』

『ありがとうございます!では少し行ってきますね!』


あ、スマホから離れたみたいだ。まあ彼の体調が第一。私も少しコンビニで買ってこようかな。彼へは今度ウー○ー○ーツ(ウーマルマルーツ)と称して持っていこう。


早く彼の隣で、一緒にご飯食べたいな。

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