無能で死に損ないの俺と、画面の向こうの君
今日は休日。学校に行きたくない俺にとっては一種の安息日である。しかしすごい暇だ。何もやることが無いので○(サークル、旧ツマルアール、主に不特定多数の人に向けた発信をするためのSNS。)を開く。そして病む。
『今日も陽の光を浴びる。あと何回これを浴びれば良いのだろうか。家の中を動く以外に絶望しない手段は無い。』
なんて投稿を家の中を動きながらやっている。まあ絶望はどっちにしろするけれど。あ、通知が来た。
『ウエストキャニオンさんがフォローしました』
『ウエストキャニオンさんがいいねしました』
ウエストキャニオン?変わったアカウント名だ。まあ俺と名づけ方が似ている。因みに俺のはニューライスフィールドだ。どうせ本名なんてバレても大した個人情報にもならない。プロフィールも見てみよう。
『2024/4/19』
それだけだった。アカウントを始めた日にちだろうか?丁度その日は髪の長い女を助けたんだっけ。もうゴールデンウィークも終わってそこら辺の日付は曖昧になっていた。フォローフォロワーは共に俺だけ。さっきフォローを返した。あ、また通知。
『ニューライスフィールドさん、はじめまして。こんな日は暗い部屋でスマホをいじるに限りますよね。家の中で歩くの、今実践してますが確かに絶望が少し収まります。有益な情報ありがとうございますね。』
長文の返信が来た。丁寧な方だ。過去ツイートを漁ってみようかな。
『今日も彼、愛おしいな。』
『彼の名前を知った。かっこいい名前。』
『早くまた声を聞きたい……』
見てみたところ大体が「彼」という存在に対する惚気であった。ほんの極わずかに病んでいる投稿もあるが、それでも殆どが「彼」に対するものだった。とりあえず返信返さないと。
『ウエストキャニオンさん、返信ありがとうございます。はじめまして。暗い部屋でスマホ、最高ですよね。そしてフォローありがとうございます。どうぞこれからよろしくお願いします。是非とも仲良くしてください。』
仲良くして欲しいからこんなのも追加して返信した。悪い印象を持たれないといいが。なんて思うとまた通知。早いな。ウエストキャニオン。
『ニューライスフィールドさん!返信ありがとうございます!宜しければDMでもっとお話しませんか?私ニューライスフィールドさんと仲良くなりたくて!』
DMでのやり取りか。もちろんOK。俺も寂しかった所だからちょうど良かった。だから二つ返事でこう返す。
『勿論!もっと仲良くなりましょう!』
ウエストキャニオン、!とか?とか使うタイプなのか。俺も合わせて使ってみるがこっちの方が楽かもしれない。そうこうしてると今度はDMの方に通知が。
『改めてよろしくお願いします!ウエストキャニオンです!』
『よろしくお願いします!ニューライスフィールドです!貴方の事はなんとお呼びすれば?』
すぐ返信。あとウエストキャニオンは長い。もう少し打ちやすい名前とか無いものか。
『あ、普通に西谷でいいですよ!』
『あ、じゃあ俺も新田で。』
西谷か、どこかで聞いたことあるような?そして既読と返信が早い。
『新田さん!よろしくお願いします!』
『こちらこそ西谷さん。まずはどんなお話しますか?』
DMなんてのは初めてなんだが、意外と楽しいな。人と話すこと自体久しぶりだし。
なんて思って返信し続けて3時間後くらいに互いのDM制限が来て、L○E(エルマルイー、主に身内用の連絡手段に使われるSNS。)まで交換してしまうのはまた別のお話。
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