無能で死に損ないの俺と、どこか見たことある君

あの日以降、俺は結局死ねなかった。こうしえ自分が無能で死に損ないであることを証明していっているのだ。まあ、今すぐに死にたいという訳では無いんだけれども。


そんな事を思いながら登校していく。それにしてもあの日以来、外出していると何かしらの気配を感じる気がする。ほら、今日も。


「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる…………」


何か向こうから誰かの声のような何かがかすかに聞こえる。あの日の翌日からずっとこれだ。まあ今となっては日常の風景の様になっているから特に気にはしてない。そうこうしてるうちに高校に着いた。


流石に教室に着くと、その様な声は聞こえなくなる。誰かに見られているような節はあるが、そんなものは気にせず今日もぼんやりと授業を受けていく。


「……zzZ」

「起きろ〜新田〜お前は学校に何しに来てるんだ〜」

「あ、おはようございます」

「ったくお前はいつもいつも、あっチャイム鳴ったか、今日の授業終わり」

「起立」


また寝てしまった。これもまた俺の屑たる所以の一つである。授業中に気を失う様にして寝るという厄介なもので、殆ど全ての授業でこれが起こる。これによって俺の成績はガタ落ちしているのだが、まあ気にはしていない。死ねば全て無くなりそうではあるから。


「新田と西谷ってなんか似てるよな」

「まあベクトルは違うけどヤバいやつだよなー」


寝てる振りをしてると、どこかから俺の話が聞こえてくる。しかしニシタニって誰だ?少なくとも同じクラスには居ないような。


「新田は会話に勝手に乱入してくるし授業中には寝る、文化祭ではキレ症発揮して先生沙汰になったし」


俺の日常や愚行がクラスメイトによって次々と話されていく。まあ俺が幼稚なだけなんだが。


「西谷は教室で平気でリスカやODはするけど、こっちは成績優秀なんだよな。問題行動もこれしか無いしあっちは自発的に関わってこないから、あと美少女だし」


へー、ニシタニっていうのは割といい子ちゃんで容姿も良いのか、今度探してみようかな。


「なんて言ってるとほら、あれ」

「あ、西谷」

「ドアの近くで何見てるんだ、あいつのクラスは隣の隣のクラスのはずだろ?」


ニシタニ、今このクラスの近くに居るのか。1回くらい見てみたいな、まあ起き上がりはしたくないので目は伏せておく。あ、チャイム。起きないと。


「西谷が走った」

「結構早く走れるんだな」


足も早いのか。少し見えたけどなんかどこかで見た事ある気がしたな。まあ他人の空似だろう。


「起立」


そんな勢いで2時間目は始まっていくのだった。

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