第422話 氷城地下へ
翌日は、バイト終わりに氷城地上部分の探索をしていった。本に関しては、持ち帰って調べてみようとしたけど、ギルドエリアで出したら溶けてしまった。冬で結構気温が下がっているはずなのだけど、それでも溶けるという事は、氷点下の気温が必要という事になる。
なので、保管のための冷凍室を作ろうという事になった。ヒョウカの力を使えば、何とか形にはなるだろうけど、表に置いておけば、夏になった時とかに温度変化が起こる可能性もある。だから、地下室を作って冷凍室に仕立て上げた。ヒョウカにはそっちに移動して貰って、アカリの実験に加えて本の管理を任せる事にした。だから、この探索で得る本は基本的に回収していく。そして、中身を調べるのは、ヒョウカに任せた。そのヒョウカから調べた結果を受けて、私が何かに使えるか判断するという形だ。
ヒョウカの負担が増える形だけど、ヒョウカ自身が望んだ事だったので、私も了承した。ヒョウカも何かやることが欲しいのだと思うし。
この探索の結果、氷城エリアの地上部分には特に何もないという事が分かった。氷点下エリアに変わる新しいレベル上げ場所って感じが強いかな。でも、それは地上部分だけの話。まだ探索をしていない地下があるので、氷城エリア自体に収穫がないとは限らない。因みに、この探索における収穫は、最上階にボスエリアを発見した事だった。
そして、そのボスもレインの援護によって、簡単に倒した。氷霧の女王という名前のモンスターは、自身の配下である氷兵士を百体単位で召喚してきたけど、レインが一気に破壊した。ボスモンスターには珍しく会話が出来るタイプで、『なっ!? どうして!?』とか『あ、あり得ない!』とか言っていたけど、最後は首に噛み付いて全部吸い取ってあげた。手に入れる事が出来たスキルは、【魔導神】というスキルだった。
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【魔導神】:最大MPと魔法攻撃力、魔法防御力が非常に大きく上昇する。控えでも効果を発揮する。
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新しいスキルだと喜ぶ事は出来なかった。何故なら、これは【魔導王】と【魔法超強化】の統合スキルだったからだ。全然レベル上げをしていないスキルだったから、まだSPを稼げたのにというショックが大きかった。氷霧の女王は許さん。
後は、空いた時間にイザナミさんの手紙をサクヤさんに届けて、その日は終わった。
翌日。バイトもないので、早めにログインした氷城エリアに来ていた。今日は地下の探索だ。前の探索で地下への入口は見つけてあるので、レインと一緒に地下への螺旋階段を下っていく。かなり大きな階段で、城の外周をそのまま回っているような感じだった。
「私が感じる分では、下の方が上より単純な感じだけど、レインも同じ?」
『うん。中央に島がある湖が最下層で、その前の二層あるけど、特に複雑なものはないよ。大きな部屋がいくつかある感じ』
「ただただ広い部屋があるって事ね。その部屋にも何かあると良いけど」
しばらく下っていると、地下一層に着いた。階段の途中に扉があって、そこから入る形になっている。中に入ると、広い通路が十字に通っていて、四つの部屋に分かれていた。その内、手前の二部屋に入るための扉が近くにあった。右側に入る。その中は、何も区切られておらず、扇状の部屋になっていた。その中央には大きな魔法陣が描かれており、発光していた。
「何これ?」
『さぁ?』
さすがに、レインも魔法のスペシャリストというわけじゃない。魔法陣を見ただけで何かが分かるという事はなかった。私も魔法は使わないし、そもそも魔法を使えたとしても魔法陣を見て、これがどういうものなのかは分からない気がする。
魔法陣を観察してみると、これが表面に彫られたものでも、描かれたものでもないという事が分かった。これは、氷の中に閉じ込められている魔法陣だ。だから、床の氷を完全に破壊するような攻撃をしないと、魔法陣自体を壊す事は出来なさそうだ。そもそもそれをする必要があるのかも疑問だけど。
「発光しているという事は発動していると捉えて良いはず。何に使われているんだろう? 城全体かここよりも地下か……まぁ、そこら辺は探索して調べて行こうか」
『うん』
四つの部屋を調べたけど、全部同じように魔法陣があるだけだった。その全てが発光しているし、形だけで見れば、全部同じ魔法陣だった。それはその下の層も同じだ。十字の通路と四つの部屋四つの魔法陣があるだけ。それも全部発光している。
「結局何も分からず最下層か。確か、湖なんだよね?」
『うん。風がないから波もなにもないみたい。静かなところみたいだよ』
「ここに来て大自然とかだったら面白いけど」
氷に閉ざされた世界で、地下に自然豊かな場所があったら面白い。そう思いながら下っていたら、途中で壁が消えて、本当に自然豊かな場所が見えてきた。
「……マジであった。何これ。なんで、ここだけ大自然全開なの……」
湖を囲むように草むらが広がっている。とは言っても、面積で言えば、湖の方が遙かに広い。天井の高さも二十階くらいあるマンションと同じくらいの高さだ。これだけで一つのエリアと言われても違和感はない。
「下に着くまでに、一周くらいは上から見られるから、下に着いたら空を移動しようか。湖の中央に島があるんだよね?」
『うん。そうだよ』
上から目を皿のようにして草むらを見ていくけど、特に何かあるような感じはしない。
「ん?」
一瞬ピリッとした感覚が肌を撫でた気がした。それは、草むらからというよりも湖の方から来たような。
『どうしたの?』
「レインは、何も感じなかった?」
『?』
レインは、何を言っているのか分からないというように首を傾げる。レインには感じなかったらしい。私のスキルのどれかが干渉しているのかもしれない。
「何かピリッとした感じがあったんだけど……気のせいかな」
『何も感じなかったよ』
「そっか。私が構えすぎだったのかも」
レインの頭を撫でながら階段を下りていき、ようやく地面に着いた。地面はしっかりと土で出来ている。そこに違和感を覚えながら、【竜王翼】を出して空を飛ぶ。レインと一緒に並んで飛ぶために、そこまでの速度は出さない。
「水の中にモンスターはいないね」
『うん。魚もなにもいないよ』
「生き物がいない空間……そういえば、地下にモンスターっていた?」
『いたにはいたけど、四体ずつくらい。最下層には何もいなかったよ』
「本当に生き物がいない空間か……偶然か……意図的か……そもそもなんでこんな場所があるんだろう?」
この空間が存在する理由が、湖の中央にあるという島にあると考えて、そこに向かって飛んでいく。
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