第394話 三つ巴の戦闘
他プレイヤー達を倒していると、どんどんとプレイヤーが増えていった。人数が減って、皆中央に集まってきているのかな。そんな中には、私の影を引き千切って向かってくるプレイヤーもいた。さすがに上位に残るプレイヤーだけの事はある。まぁ、人斬りを使っている私は首を刎ねる事が出来れば、一撃で倒せるので、そこまでの苦労はない。
中には双剣を使っているプレイヤーもいた。師範の試験を合格出来たプレイヤーもちゃんといるみたい。まぁ、師範を相手にしていたから、ただのプレイヤーごときでは相手にならないけどね。
そんな戦いの中によく知っている人が混ざっていた。
「うげっ!? フレ姉!?」
「姉に向かってうげっとは良い度胸だな」
上から薙刀を振り下ろしてくるのを、ギリギリで受け流す。そして、他の人に割いていた影の拘束を全てフレ姉に向かわせる。フレ姉は、その影を全て斬り裂いた。
「斬っちまえば問題ねぇよなぁ!」
「その分隙があるけどね。【破衝波】」
がら空きになったフレ姉のお腹に掌底をぶつけようとする。でも、その前にフレ姉が短槍の柄を間に入れていた。フレ姉へのダメージは少なくなるけど、ノックバックは生じる。飛んでいく中でフレ姉は、短槍を私に向かって投げた。技後硬直で動けない私は、その短槍に影を絡ませて、何とか目前で止める事に成功した。止められなくても【夜霧の執行者】で無効化出来るのだけど、ここで残り三回の【夜霧の執行者】を消費したくない。
技後硬直の最中に、周囲のプレイヤーを見て魅了状態にしておく。その魅了状態になったプレイヤー達は、魅了状態にない私以外のプレイヤーに向かって襲い掛かる。当然、フレ姉にも襲い掛かる。
「ちっ! 面倒くせぇな!」
魅了状態で単調な攻撃をするだけになったプレイヤー達をフレ姉は次々に倒していく。その間に、混合熱線のチャージをする。ただ、その間に背後からソルさんが斬り掛かってきた。ギリギリのところで人斬りで防ぐ。
ソルさんが振り下ろしてきた刀は、さっき地面を割った大きな刀だった。多分、大太刀とかそういうものになると思う。かなり重い一撃だったけど、何とか受け止める事が出来た。その重みで地面が一気にひび割れて、脚が沈む。このままだと押し切られるので、思いっきり血液を噴き出して、ソルさんを押し退ける。
「無尽蔵な血っていうのも厄介だね」
ソルさんはそう言いながら、いつもの刀に戻して鞘に納める。それだけで、ソルさんがしようとしている事が分かった。
「【鏡花水月】」
ソルさんは明らかに私に届かない位置で抜刀する。普通なら目測を見誤っていると思うところだけど、ソルさんはそういう人じゃない。何かしらの秘密がある技という事だ。嫌な予感もするので、咄嗟に自分の側面を守る。すると、防御に使った人斬りに何かが触れて思いっきりノックバックした。あの刀の延長線上に攻撃判定を生む【抜刀術】の技みたい。
下手すれば、真っ二つになっていた。ちゃんと防げて良かった。絶対属性技じゃないだろうし。
技を使った事で技後硬直を受けているソルさんに向かって、【電光石火】で突っ込む。今のこの状況なら人斬りでソルさんを倒せる。そう思ってソルさんの首元まで人斬りの刃が到達したのと同時にソルさんの硬直が解けて、私の人斬りの動きに合せて、横に転がる事で避けられた。一応、耳辺りを斬ってダメージを与えられているけど、【致命斬首】の効果が発動する条件は満たせていない。
「嘘!?」
この状態でもソルさんは、全く焦っている様子はなかった。常に冷静に行動できるというのは、本当に厄介だと思う。私だったら、大慌てで影と血を使うだろうし。
「ハクちゃんに対しての技は命取りになりそうだね」
「私もソルさんに対して同意見ですよ」
「何だ。二人でイチャイチャと……私も混ぜろよ」
そう言ってやってきたのは、私が魅了したプレイヤー達を倒したフレ姉だった。そして、三つ巴の戦いが始まる。
この中で一番好戦的なフレ姉が、ソルさんに対して薙刀を振り下ろす。ソルさんは、それを難なく受け流した。そこに、白百合と黒百合に入れ替えた私が突っ込む。ソルさんに向かって左の白百合を振う。ソルさんは、私の白百合の刃を柄頭で弾いた。
白百合を弾かれた私に向かって、下からフレ姉の薙刀が振り上げられてくる。それを黒百合で受け流したところに、ソルさんが刀による突きを放ってきた。身体の中心に目掛けて伸びてくる刃は避けきる事が出来ないので、自分の意思で【夜霧の執行者】を使い、霧となって避ける。私が霧になったところで、私を通り過ぎるようにフレ姉が薙刀を振う。私の霧を隠れ蓑にした攻撃をソルさんは予期していたように身体を逸らして避けた。
そんな攻撃をしたフレ姉に向かって黒百合を突き刺そうとする。フレ姉は、黒百合が脇腹に刺さる前に黒百合の刃の腹に肘打ちをして軌道を逸らした。そして、その肘打ちをする動きに合せて、フレ姉の蹴りが飛んでくる。その蹴りに足の裏を当てて、フレ姉の蹴りの勢いを使って距離を取る。私を攻撃したフレ姉の背後からソルさんが斬り掛かる。それをフレ姉は、背後に回して薙刀の柄で受け流した。
そこで正面ががら空きになったフレ姉に向かって【電光石火】で突っ込んで蹴りを入れる。フレ姉は、その蹴りに自分の蹴りを合せていた。化物並みの反射神経だ。でも、蹴りの威力で言えば、私の方が上なのでフレ姉が押される事になった。体勢を崩したところに、白百合と黒百合を大斧に変えて振り下ろす。そこに、ソルさんが私の首を刎ねるように刀を振ってきた。【心眼開放】で動きを見ていた私は、攻撃を中断しつつ何とか首を逸らして刀を避ける。刀を振り抜いた状態のソルさんに向けて、フレ姉が不安定な姿勢のまま薙刀を振う。ソルさんは、鞘を器用に動かして薙刀を受け止めつつ、距離を取った。私もフレ姉の後ろに抜けるようにして距離を取る。
ここまで大体一分強の戦闘だった。【心眼開放】があるから対応出来ているけど、それを持っていないであろう二人が平然と対応してきているので、二人が異常だという事がよく分かる。
そこから高速の戦闘が始まる。混合熱線などを織り交ぜたりしたけど、二人には効果はなかったので、途中で口を閉じて無理矢理中断して普通に戦う。搦め手のスキルに入れ替える事も考えたけど、二人には意味がないと考えて、いつもの武器に属性を纏わせて戦う事にした。
途中、闘技場内に他のプレイヤーが逃げてきたりもしたけど、私達の戦闘を見て、即座に戻っていた。まだ他にもプレイヤーは残っているみたい。
私達の戦闘の余波で闘技場は、どんどんと崩壊していった。それを見ただけでも、この場にはいたくないと思うだろう。そうして時間が経過していき、互いに決定打のないままイベント終了時刻を迎えた。
「決着は付かずか」
「次の楽しみが出来たね」
二人はケロッとしているけど、私はかなり疲れていた。ずっと【心眼開放】を使いっぱなしだったからだ。自分の感覚を信じて戦っても良かったけど、より安全な方法を選んだら、そうなった。
「結果発表もすぐにするらしいな」
「そうなんだ。一位だと良いなぁ」
「ハクちゃんの広域殲滅攻撃えげつなかったもんね。私は、ランクインしていれば良い方かな。あまり数は倒せなかったし」
「私も同じだ。ハクは、一位になる自信はあるのか?」
「闘技場二つ分くらいは、丸ごと倒してるから、大分稼いでると思う。次からは対策されるかな?」
「どうだろうな。正直、対策のしようがないと思うが」
影は力技でどうにかなると思うけど、【神炎】に関してはかなり強い熱対策が必要になる。私特化の対策をしていればどうにかなりそうという感じかな。
そんな話をしていると、ようやく結果がウィンドウで表示された。
「やった! 一位!」
百五十人以上倒したみたいで、二位と百近い差を付けて一位になっていた。フレ姉とソルさんは、十位と八位で一応ランクインしたって感じだ。アク姉の名前はないから、どこかで倒されちゃったみたい。ゲルちゃんは十一位にいた。
「一位おめでとう」
「ありがとうございます!」
目的のイベント一位を獲る事が出来た。優勝した商品は、目論見通り選択式レアアイテムボックスだった。しかも三つも貰えたので、本当に助かる。賞品を貰ったところで、ファーストタウンに転移させられた。大分頑張って疲れたので、ギルドエリアに行ってアカリに癒して貰おう。
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