第389話 早速のお出迎え
廃都市エリアまでの移動は毎回黄昏エリアを通るので、アカリが作ってくれた装備の効果も確かめやすい。基本的には、空を飛んでいるからモンスターを見る事はないけど、前に一回モンスターを見る機会があった。ファントムシャドウという黒いというか何というかもやもやとした陽炎みたいなモンスターだったけど、軽い混乱状態になって方向感覚が失われるくらいで済んだ。防具の【血液変換】で混乱の状態異常の回復速度を早めて、方向感覚を取り戻してから廃都市エリアに入ったので、大きな問題はなかったけど、改めて黄昏エリアの探索は苦労しそうだと分かった。
廃都市エリアに入った私は、すぐにエアリーとソイルを喚ぶ。その中で、廃都市エリアから、何か変な感じがする事に気が付いた。
「何だろう?」
『奥の方に大きなモンスターがいます。形的には、ドラゴンでしょうか? 少々様相が違うようですが』
「機械のドラゴン?」
『その可能性は高いと思います。攻撃しますか?』
「う~ん……動いてる?」
『はい。正確には飛び回っているかと』
これまで存在しなかったという事は、十中八九エンカウントボスだ。機械のドラゴンという事は、廃都市エリア限定のエンカウントボスかな。まさかとは思うけど、今回のアップデートで追加されたとかはないよね。タイミングがタイミングで、ちょっと疑ってしまう。
「戦おうか。相性的にソイルは交代ね」
『うん……』
取り敢えず、探索の邪魔ではあるので倒す事に決める。一旦ソイルをギルドエリアに帰す。空を飛んでいるであろうドラゴンとは相性が悪いからだ。
「【召喚・スノウ】【召喚・ニクス】」
それであれば、竜相手には竜という事で、スノウとニクスを喚ぶ。相手が空を飛ぶのなら、こっちも空を飛んだ方が有利だからね。それに相手は炎に弱い。私程の火力じゃないにせよ、ニクスの炎は通用するはず。
「それじゃあ、攻撃して良いよ。スノウ、ニクス、気を付けてね」
『ガァ!』
『キュイ!』
二人が【矮小化】を解いて、空を羽ばたく。
「エアリー良いよ」
『はい』
エアリーが、ビルが建ち並ぶ方向に手を伸ばす。私の目では、そこに何がいるのか分からない。【万能探知】の範囲外だから、そういう意味でもモンスターの姿は全く見えない。それでも進化したエアリーの風なら見つけられる。その位置に対して、エアリーが正確に攻撃を加えた……のかな。私からでは把握出来ない。でも、遠くから咆哮が聞こえてくる。ちゃんと攻撃は当たったらしい。
取り敢えず、私達は待ちに徹して、エアリーにどんどんと攻撃してもらう。その間に、【蒼天】と【天聖】の混合熱線のチャージを始めておく。いつでも放てるようにしておいた方が安心だからね。
ビル群の中から激しい音が聞こえてくる。思っていたよりも派手に攻撃しているみたいだ。
「エアリー、大丈夫?」
『問題ありません。羽を捥いだので、地面から来ます』
「えっ!?」
驚いたのと同時に【万能探知】にモンスターの姿が映る。本当に片翼を失ったドラゴンが走ってきていた。そして、すぐに私達の視界でも捉えられるようになる。かなりの巨体で氷炎竜王になったスノウと同じかそれより大きい。見た目はドラゴンっぽいけど、身体のあちこちに銃が取り付けられている。羽の間にある背中には大砲が付いていた。
名前は、ヘビーアームドドラゴン。重装備のドラゴンって感じかな。そんなヘビーアームドドラゴンは、エアリーが捥いだ羽の付け根から火花が散っている。
ヘビーアームドドラゴンは、私達を視界に収めると、口を大きく開いた。口の中にも大砲みたいなのが付いていた。そこにエネルギーが集まっているのが分かる。そして、そのエネルギーの色が反転していた。
「反転物質!? モンスターが使ったら駄目でしょ!?」
皆の前に出て、最大まで溜まった混合熱線を放つ。向こうのチャージは間に合わなかったようで、私の熱線を受けた。でも、熱線に飲まれる事はなく、何かで防がれているのを感じる。いや、こっちの熱線を吸収しているという方が正しいかもしれない。二割程削れていたHPが回復していくけど、少しすると、爆発音が聞こえた。直後にヘビーアームドドラゴンは熱線に飲まれる。どうやら吸収しきれなかったみたい。HPが三割程削れたけど、熱線が止むのと同時にヘビーアームドドラゴンが突っ込んできた。口の中から煙が出ているところから考えるに、反転物質を放射するような攻撃は出来なくなったみたい。さっきの爆発音の正体はあれかな。
突っ込んでくるヘビーアームドドラゴンに、スノウとニクスが飛んでいき、氷炎や煌炎で攻撃している。でも、ヘビーアームドドラゴンは止まらない。身体を凍結させられても、それを砕いて走ってくる。パーツが融けているが、それも気にしていない。向こうも身体に付いている機銃でスノウ達を攻撃しているけど、全てが当たる前に弾かれている。エアリーが二人を守ってくれているみたいだ。
見た感じ沢山の銃が付いていたから吸血は無理かなって思ったけど、この状態なら出来そうだ。そう思って前に出ようとしたら、私よりも先に前に出て行った人がいた。紅葉柄の和服を着たその人は、裾がはだけて脚が見える程の全力疾走をしていた。片手に身長と同じくらいの大鉈を持って。
「も、紅葉さん!?」
一気にヘビーアームドドラゴンに向かっていった紅葉さんは、大鉈を下から振り上げて、ヘビーアームドドラゴンの頭をかち上げた。頭を仰け反らせているヘビーアームドドラゴンの真下に移動した紅葉さんは、その身体に向かって大鉈を思いっきり振い、ヘビーアームドドラゴンを浮き上がらせる。
そんな光景だけでも開いた口が塞がらないのに、紅葉さんの攻撃は終わらない。その場で回転したと思えば、遠心力を味方に付けて大鉈をぶん投げた。物凄い勢いで飛んでいった大鉈がヘビーアームドドラゴンに命中する。
大鉈の大きさはせいぜい紅葉さん程。対して、ヘビーアームドドラゴンは何倍もある。紅葉さんの膂力がなければ、大鉈が当たったところでと思っていたら、大鉈が命中したヘビーアームドドラゴンが大鉈ごと吹っ飛んでいき、近くのビルに突っ込んだ。そこにニクスが炎を掛けて、ビルと接合するように融かしていく。さらに、その上からスノウが氷炎を掛ける事で氷でも拘束する。その際、炎と氷の温度差で装甲に罅が入っていた。
拘束したという事は、完全に私待ちだ。エアリーの腰に手を回して、影などを使いしっかりと固定してから、【電光石火】で紅葉さんの横に移動する。
「紅葉さん、エアリーを頼みます」
『はい。お任せ下さい』
柔和に微笑む紅葉さんにエアリーを頼んで、【熾天使翼】で空を飛び、ヘビーアームドドラゴンに取り付いて吸血する。ヘビーアームドドラゴンは、身体を小さく震わせるけど、身体を動かす力もなくなってしまったようで、そのまま吸血により倒す事が出来た。手に入れたスキルは、【機関銃】というスキルだった。
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【機関銃】:機関銃の扱いに補正が入る。
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いつも通りの銃のスキルだ。特に重要なものでもないので、軽く見てから紅葉さんの元に降りる。
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