第388話 一周年アップデートとイベント

 翌日。ログインした瞬間に、お知らせが届いていた。件名を見てみると、アップデートとイベントのお知らせだ。


『二月六日土曜日より、一周年記念アップデートと一周年記念イベントを開催します。アプデ内容は、全体的なバランス調整、エンカウントボスの追加になります。イベントは、定番となったPvPイベント、モンスター殲滅戦、探索型イベントの三つを予定しております。イベントに関しましては二月から四月にかけて開催予定です』


 そろそろ一周年だから、そのお知らせだった。私が始めたのは三月だけど、あれは販売から一ヶ月経った後だから、二月が一周年となる。エンカウントボスの追加って事だけど、あれは出会える確率が低いのでそこまで嬉しくはない。イベントが三つもというのは、ある意味では嬉しいのかな。血瓶が手に入る可能性があるし。

 二月六日は、来週の土曜日なのでそれを楽しみにしつつ、今日も今日とで廃都市エリアの探索を続ける。今日の成果は何もなし。USBメモリもパソコンも見つからなかった。今日の探索でようやく半分くらい探索が出来た。その過程でソイルが見つけてくれた地下空間への入口らしい場所も発見している。ビルの一階から地下に降りるための階段を見つけたのだ。それも複数箇所ある。全体を調べたら、その内の一つから地下に降りる感じかな。ボスに挑むのは、その更に後だ。

 そして、アカリによる黄昏エリア対策用の装備が出来た。ゴーグル型の装備でレンズが黒く染まっている。一応着けても視界は確保出来るけど、かなり見えづらい。そこら辺は感覚でカバーできるけど、探索は難航しそうだ。取り敢えず、これで狂気への対策になるらしい。

 こっちの探索は、廃都市エリアを終えてからにしようかなと思っている。廃都市エリアの方が気になるし。

 そして、アップデートの日がやって来た。私は、アップデートとイベントの詳しい情報を調べるために早めにログインしていた。自分の部屋でベッドに寝っ転がって調べようとしていると、アカリもやって来た。


「あっ、やっぱり、ここにいた」

「アカリ? どうしたの?」

「ログインしたら、多少は調べるだろうから、ここにいるかなって」


 アカリはそう言いながら人の胸を枕にして、私が見ているウィンドウがあるであろう場所を見る。一緒に見たいって事だと思うので、アカリにも見えるように設定を変える。最近忙しくて疲れたためか、ちょっと甘えモードになっている。それは構わないのだけど、私のない胸を枕にするのはどうかと思う。するなら、アク姉や玉藻ちゃんくらいあった方が心地は良いと思う。首の角度が終わりそうになる時もあるけど。


「内容の大きな変更点はなしか。バランス調整って何をしたんだろう?」

「無難なところで言うと、モンスターの強さとかエリアの難易度調整とかかな。後は、スキルの効果ら辺も当てはまると思うよ」

「おっ! じゃあ、私のマイナスになったSPも戻ってるかな」


 何となく確認してみたけど、その部分は全く変わっていなかった。どうやら、私のSPのバランスは調整してくれなかったらしい。


「まぁ、そこを変えたら贔屓になっちゃうだろうから、仕方ないよ」

「だね。後は、イベントか」


 エンカウントボスについての具体的な情報が出るはずもないので、このままイベントの情報に移る。


「PvPイベントに、殲滅戦に、探索型……何も変わらずか」

「PvPはバトルロイヤル形式だから、本当にいつも通りだね。殲滅戦も、この前と同じ方式。テイムモンスターの制限もないから、皆大集合になりそう。探索型の方はいつも通りの制限があるけど、テイムモンスターの使用も有りになってるね」

「皆を喚び出せるなら、殲滅戦は余裕かな。探索型も喚び出せる事に変わりは無いから、問題は無いかな。玉藻ちゃん達がどうなるのかくらいが問題だけど……最悪来られなくてもどうにかなるだろうし良いかな」


 玉藻ちゃん達はパーティーのプレイヤー枠を使うけど、私とアカリがパーティーを組んだとしても余りが四人分あるので問題はない。一番の問題は、そもそもイベントに参加出来るのかどうかくらいだ。バトルロイヤルの方は確実に無理。パーティー戦じゃないし、テイムモンスターの召喚も無理だからね。

 最初のイベントはPvPイベントで、再来週の二月二十日に開催する。そして次のイベントの殲滅戦は三月十九日、最後の探索型イベントは四月九日に開催だ。全部土曜日に開催する。


「アカリも参加するでしょ?」

「そのつもりだけど……私じゃ戦力ならないし……」

「そんなの気にする人いないよ。そんな事言ったら、私なんて探索している時戦力になってないもん。基本的に皆が倒すから」

「ハクちゃんは一人でも強いでしょ?」

「もう……気にしないって言ってるじゃん」


 メニューを閉じて、アカリの上に移動する。分からせるなら上から言う方が良い。


「私もアク姉達もアカリがいて文句を言った事ある? アカリは、生産職として貢献してくれてる中でも、戦闘スキルを上げたりして頑張ってるでしょ? 皆、アカリと一緒にゲームが出来て嬉しいんだよ。だから、卑下しないの。分かった?」

「あ、うん」


 アカリは、少し顔を赤くして頷いた。押し倒されている状態だからかな。もしかしたら、忙しいだけじゃなくて面倒くさい客でもいたのかな。それでメンタル的に落ち込んでいる状態だったのかも。こういう時は、恋人としてケアしてあげないと。私が落ち込んでいたら、アカリがケアしてくれるからね。

 惜しむべきは、ここがゲームの中って事かな。キス以上の事が出来ないから。取り敢えず、アカリの頭を撫でてあげる。


「それじゃあ、私は廃都市の探索に戻るね。そうだ。来週の日曜日は空けておいてよ。ゲームじゃなくて現実の方ね」

「来週? あ、うん。分かった」


 私が言いたい事を察したアカリは笑顔で頷く。その後アカリにキスしてあげると、ちょっと気分が戻って来たみたいなので、最後にもう一回キスをしてあげる。キスをする事から、私がアカリを必要としている事と愛している事を実感出来ると思うので、多分大丈夫だと思う。

 正直、戦力の面でもアカリを頼りにする部分は多い。爆弾や薬など、アカリが用意してくれるから、そういった戦法が取りやすくなるから。私だとどうしても【蒼天】とかの力業主体となってしまうし。まぁ、それで大体が解決してしまうのがいけないのだと思うけど。

 また今度、アカリの気分転換に付き合おうと心に決め、廃都市エリアへと向かっていった。

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