第385話 胡蝶さんの戦い方

 廃都市エリアの探索を初めて分かった事がある。モンスターが機械という事もそうだけど、道が舗装されていたり、廃車が落ちていたりと割と文明レベルは高い。何か隠された場所があってもおかしくないかもしれない。

 そして、戦闘アンドロイドを何体か吸血で倒したけど、新しいスキルは手に入らなかった。なので、見掛け次第倒す事にする。


『ふむ。倒して良いのでありんすか?』

「はい。戦闘アンドロイドは倒しちゃって大丈夫です」

『わかりんした』


 胡蝶さんの能力は、基本的に蜘蛛や糸を操る感じだと思うけど、蜘蛛で機械を倒せたりするのかな。ちょっと気になる。なので、直接訊いてみる事にした。


「玉藻ちゃんは相手を変身させたりして倒してましたけど、胡蝶さんは、どうやって戦うんですか?」

『わっちでありんすか? 基本的には蜘蛛達に戦ってもらいんすが、糸で切り裂いたりもしんす』

「糸で……ですか?」

『そうでありんす』


 糸を使った攻撃とは憧れを持つけど、私が出せる糸では恐らく無理だ。そこら辺は、レベルを上げていけば手に入ったりするかな。


『こんな感じでありんすね』


 そう言って胡蝶さんが手を振ると、廃車が細切れになっていた。蜘蛛が単体で出来る芸当ではないと思うので、本当に糸でどうにかしているのだと思う。それにしても凄い攻撃力だ。ただの糸とは思えない。特別製である事は間違いない。


『それにしても、建物も頑丈でありんすね。こんな状態でも崩れる心配はなさそうでありんす。全部調べるんでありんすか?』

「はい。かなり時間は掛かりそうですけど」


 廃都市エリアは、廃城下町よりも広く、建物自体も崩れる事なく残っている。そして、何よりも高層ビルが連なっている点から、一つの建物を調べるのにも時間は掛かる。なので、廃都市エリアの探索には時間が掛かると予想出来る。実際に自分の目で見ないと青い靄を見つける事は出来ないので、探知系のスキルやエアリー達に調べてもらうという事は出来ない。根気のいる作業になるけど、ゲームの楽しいところでもあるので、問題はない。

 まずは、エリア全体を調べようと思っていたら、空から散発的に炎の気配を感じた。ニクスの合図だ。このテンポは、空に敵有りだ。


「空を飛ぶ機械……ドローン?」


 空を見上げてみると、ニクスがモンスターを追い立てていた。そこにいたのは、四つのプロペラを持つドローンだった。下部には銃口みたいなものが見えるから、戦闘用のドローンって感じだ。名前は火力ドローンというらしい。

 火力ドローンは、ニクスから逃げながら私達に向かって発砲してきた。これに関しては、エアリーが当たる前に空気の壁で止めた。同時に、胡蝶さんが糸でぐるぐる巻きにして、火力ドローンを行動不能にしていた。

 空を飛ぶことも出来なくなった火力ドローンが降ってくるので、それをキャッチして、吸血する。火力ドローンを全て吸収しても得られたのは、既に持っているスキルだった。


「う~ん……ここでは新しいスキルは、あまり手に入らなさそうかな」


 そんな事を呟いていると、ニクスが肩に留まった。顔を振ってから、私の方を見てきた。ちゃんと仕事をしたという主張かな。実際、ちゃんとやってくれたので、頭を撫でてあげる。


「ありがとう、ニクス。この調子で、空の敵を集めてきてくれる?」

『キュイ!』


 元気に返事をしたニクスは、再び飛び立った。それを見送っていると、胡蝶さんが並んだ。


『厄介でありんすね。そこら辺に巣でも張りんしょうか』

「張れるんですか?」

『わっちではなく、蜘蛛達でありんすがね。わっちも出来なくはないでありんすが、少々大規模なものになりんすね』

「そうなんですね。でも、ニクスがいるので」

『そうでありんすね。追い立てる方が早いでありんしょう。でありんすが、必要になったら言っておくんなし。全てを絡め取りんす』

「はい。その時はお願いします」


 その後、ニクスに頑張ってもらって、火力ドローンを吸血していたけど、全部持っているスキルだけだった。なので、ニクスには火力ドローンを倒して回ってもらう事にした。加えて、応援としてエレクに来てもらった。

 胡蝶さんを後ろに、エアリーを前に乗せて走ってもらう。新しい馬具のおかげで、安定して乗る事が出来るようになっていた。アカリの仕事は早くて助かる。

 途中で遭遇する戦闘アンドロイドは、エアリーと胡蝶さんが斬り刻んでいた。そうして進んでいると、一際大きなモンスターを感知した。私達よりも二、三倍はあるかな。これまでの戦闘アンドロイドと火力ドローンは、全く形が違う。四つ脚で頭がなく、身体の天辺に砲台が乗っている。まるで、足の生えた戦車だ。名前は四脚戦車。見た目そのままの名前だ。


「エレク!」


 戦車が砲弾を撃ち出す。エレクは、それを難なく避ける。その直後に、胡蝶さんが足と砲台を落とした。その上に飛び乗って一気に吸血した。そうして手に入れたスキルは、【大砲】だった。


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【大砲】:大砲の扱いに補正が入る。


────────────────────


 あの天辺にある砲台を扱うためのスキルかな。これも【銃】と同じようなスキルだろうから、まだ利用出来る範囲は狭そうかな。

 そんな事を思っていたら、【万能探知】に別の四脚戦車が複数引っ掛かる。それらは、壁などに張り付いて、こっちに向かってきていた。そして、地面の方からは戦闘アンドロイドが走ってきている。


『歯応えがあると良いのでありんすが』


 割と面倒くさい状況のはずなのだけど、胡蝶さんは、楽しそうに笑っていた。火力ドローンがいないのは、ニクスが頑張ってくれている証拠だ。だから、地上は私達が頑張らないと。

 そう思っていると、エアリーと胡蝶さんが全てを斬り刻んだ。私の出る幕は一切なかった。


「……」

『何をしているんでありんすか。早く吸血しなんし』

「あ、はい!」


 よく見てみたら、四脚戦車だけ脚と砲台を捥がれているだけで、まだ生き残っていた。私が、まだ全部スキルを獲得出来ていない可能性を考慮してくれたみたい。急いで、四脚戦車を吸血していくけど、私が持っているスキルばかりで、新しいスキルは手に入らなかった。取り敢えず、これまで出会ったモンスターからは、全てのスキルを手に入れられたと考えて良さそうかな。


「もう大丈夫そうです。ただ、次はちょっと試したい事があるので、一体くらい残してもらっても大丈夫ですか?」

『分かりんした』

『分かりました』


 そうして、再びエレクに乗って走っていくと、戦闘アンドロイドが出て来る。その戦闘アンドロイドに向かって、【神炎】を飛ばす。炎に包まれた戦闘アンドロイドは、段々と融けていき倒れた。【神炎】の火力なら、相手の装甲諸共破壊する事が出来ると分かった。火が弱点みたい。これなら、ニクスも余裕で戦えると思う。

 後は、エレクに走り回ってもらって、マップを埋めつつ、外に青い靄がないか確認するだけだ。その間、胡蝶さんとエアリーが次々にモンスターを倒してくれるので、探索に集中できて良かった。

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