第381話 まさかの展開
『ふむ! いっぱい話せたのう! 久しぶりに楽しかったのじゃ!』
玉藻ちゃんが満足したみたい。他の三人も同じように満足げだった。これが女子会というものなのかな。フレ姉とかアク姉達とかとよくやっている事だけど、全く知らなかった人とやるのは新鮮で楽しかった。
『良いのう。良いのう。ハクは面白いのう! おっと! そうじゃ! 忘れとった!!』
そう言うと、玉藻ちゃんが急に立ち上がった。同時に、尻尾で私を抱え起こした。いきなり持ち上げられたので、慌てて足を地面に着かせる。
『ハクを呼んだのは、ハクに興味があったからというのもあるが、一番は礼がしたかったのじゃ!』
「お礼ですか? 一体何の?」
お礼と言われても身に覚えはないので、一体何の事なのかが分からなかった。
『鬼火じゃよ。拡散した鬼火を元に戻してくれたじゃろう? 最近、ああいった自身を見失う鬼火が増えておってのう。妾達も見つけ次第元に戻しておるのじゃが、ハクがやってくれたおかげで、自我が強くなった鬼火が増えておるのよ。鬼火自身から報告を受けた故に、どういう人物なのか知りたくなってハクを呼びだしたのじゃ。礼はついでじゃな』
【心眼開放】で片っ端から鬼火を固めていたのが理由で玉藻ちゃんの目に留まったみたい。何か意味があるのかと思っていたけど、玉藻ちゃんとの繋がりを構築するためのフラグだったらしい。
『本当に助かったのじゃ。うむ。決めたのじゃ! 妾は、ハクについて行くのじゃ!』
「えっ!? でも、この街の管理とかは!?」
『ずっと一緒にいるわけではないからのう。定期的に戻ってくれば良い。ハクは、自身の世界を持っておらぬのか?』
「え? ギルドエリアって意味なら持ってますけど……」
『では、そことここを繋げれば良いな!』
『では、わっちもお供しなんす。花街の監視は、部下達に任せておけば安心でありんすので』
『じゃあ、私も一緒に行きます。定期的に帰ってこられるのなら、店の管理も出来ますし』
『お邪魔でなければ、私もご一緒させてください。教師業も後任が育っていますので、問題ありません。それに、薬店の方も管理だけで営業自体は、それぞれの店長にお任せしていますのでご安心ください』
「えっ!? えっ!? えええええええええっ!?」
玉藻ちゃんだけでなく、胡蝶さん、清ちゃん、紅葉さんまでも一緒に来ると言い始めた。これには、さすがに動揺せざるを得ない。直後に、ウィンドウが現れる。
『一定以上の好感度を獲得したため、九尾狐『玉藻前』絡新婦『胡蝶』白蛇姫『清姫』鬼女『紅葉』をテイムしました。特殊なモンスターのため、通常のテイムモンスターとは異なる挙動となります』
いつもの確認方式ではなく、既にテイムした判定になっていた。しかも、何故か恋愛ゲームのような感じにもなっていた。ちょっと気になるのは、異なる挙動というものだけど、妖都とギルドエリアを行き来するからとかなのかな。
『よし! 早速空間を繋ぐのじゃ!』
「えっ? どうやってですか?」
『其方の世界に、この狐を祀った神社を建てるのじゃ。それで、ここと繋がる事になるはずじゃ。本当は神社でなくとも良いのじゃが、そっちの方が、雰囲気があるじゃろう!』
「なるほど? 取り敢えず、作ってきちゃいますね」
『うむ!』
玉藻ちゃんの屋敷を出て、妖都からギルドエリアに転移する。
「う~ん……せっかくだから、ラウネが作ってくれてる桜並木のところに建てようかな」
一応、ギルドエリアのメニューに神社っぽいものはある。ちょっと小さいけど、末社って言うらしい。桜並木の入口に末社を建てて、玉藻ちゃんから貰った狐を祀る。すると、唐突に玉藻ちゃんが出て来た。
『うむ。しっかりと出来たようじゃな。よくやったのじゃ』
玉藻ちゃんが尻尾で撫でてくる。これまで何度も頭を撫でられているけど、尻尾で撫でられるのは、新鮮だった。
末社から胡蝶さん達も出て来た。興味深げに周囲を見回している。
『中々に良いところでありんすね』
『空気も澄んでいて、神聖さが強い場所です。アンブロシアに世界樹があるからですね』
『こちらの世界も居心地が良いので、入り浸ってしまうかもしれませんね』
取り敢えず、四人にギルドエリア内を案内する。そのついでに、皆にも紹介しておく。一応神霊と精霊も玉藻ちゃん達に見えているみたいなので、テイムしたというのは本当の事みたい。
その中でアク姉にも遭遇した。
「あっ! アク姉!」
手を振って呼び掛けると、アク姉がこっちを振り向いてギョッとしていた。まぁ、美人を四人も引き連れていたら、驚かれもするか。
「ハクちゃん? その人達は?」
「妖都でお友達になった。玉藻ちゃん、胡蝶さん、清ちゃん、紅葉さんだよ。こっちは、私の二人目の姉のアク姉」
「アクアです。妹がお世話になっています」
余所行きモードのアク姉が挨拶をした。普段あんな感じだけど、一度猫を被れば、こんな風にもなる。若干違和感があるけど。
『うむ。玉藻前じゃ。玉藻ちゃんと呼ぶが良いぞ』
『胡蝶と申しんす。どうかよろしゅうお願いしなんす』
『清姫です。清ちゃんと呼んでください』
『紅葉と申します。よろしくお願い致します』
皆が挨拶をした後、玉藻ちゃんがアク姉の胸をジッと見ていた。
『ふむ……確かに、これがあるなら、妾のものに興味を示さなくても不思議はないのう……』
「別に普段から揉んでるわけじゃないですからね?」
「ちょっとハクちゃん良い?」
「うん」
「この人達は、プレイヤーじゃないの?」
「うん。さすがに、プレイヤーを入れるんだったら、アク姉とアカリに確認するよ。一応テイムモンスターの括りらしいけど、特殊な人みたいだよ」
「そうなんだ。それなら良いんだ。私は、もう行かないといけないから」
「うん。またね」
アク姉は最後に私をぎゅっと抱きしめてから、ギルドエリアを出て行った。メイティさん達との約束があるみたい。
アク姉と別れたところで、実験室からアカリが出て来た。身体を伸ばしているところから考えるに長時間実験していたみたい。
「アカリ」
「ハクちゃ……ん……?」
アク姉と同じ反応だけど、若干声が冷えていた気がする。これは、何かを勘違いされていると思った私は、すぐにアカリの傍に移動して、腰に手を回した。
「このアカリが私の恋人です。可愛いでしょう? アカリ、こちらは玉藻ちゃん、胡蝶さん、清ちゃん、紅葉さん。妖都でお友達になった人達。レイン達と似たようなものかな」
「え? あっ! そういう事なんだ」
「そうそう。こんな大胆に浮気とかしないから」
浮気を疑われたとは思わないけど、一応弁明しておく。これじゃあ、アカリの方が【嫉妬の大罪】に相応しい気もしてくる。
『ふむふむ。初々しく可愛らしい子じゃのう。ハクが夢中になるのも納得じゃ。じゃが、妾も可愛いがのう! 妾は、玉藻前じゃ。玉藻ちゃんと呼ぶが良い!』
『胡蝶でありんす。よろしゅう』
『清姫です。清ちゃんと呼んでください』
『紅葉です。よろしくお願い致します』
「あっ、アカリです。よろしくお願いします」
アカリとの顔合わせも出来た。誤解もなくなったところで、玉藻ちゃん達の案内を続けていった。
『うむ! 大体分かったのじゃ。郷に入っては郷に従えと言うからのう。なるべく迷惑を掛けないように気を付けるのじゃ』
「あまり心配はしてませんが、よろしくお願いします」
『うむ! では、今日のところは、これでお暇するとするかのう。向こうで準備もせんといかんからのう』
「じゃあ、今日はありがとうございました。これからよろしくお願いします」
『うむ! よろしく頼むのじゃ』
『よろしゅう頼みなんす』
『よろしくお願いします』
『よろしくお願い致します』
玉藻ちゃん達を末社に見送って、身体を伸ばす。
「う~ん……中々に濃厚な一日だったなぁ。まぁ、半分くらい女子会だったけど」
もうすぐ夕食なので、ログアウトする。明日は祝日なので、今日の夜中に妖都を半分以上調べて、明日には調べ切れるように頑張らないと。
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