第378話 妖都
翌日。本格的な妖都探索を始める。神桜都市に似たような感じがする和風建築が多い。妖怪の種類は軽く調べたけど、それでも知らない妖怪も多い。というか、かなりデフォルメされていたり、制作者側の解釈で姿が変わるだろうから、予想くらいしか出来ないけど。
それと一つ気付いた事もあった。それは、私の額から角が生えているという事だ。【鬼】が自動的に発動している。昨日は、風神雷神戦から常に発動していたから、この異変に気付かなかった。
鬼も妖怪の一種という風に考えれば、妖都にいる間は自分自身の妖怪としての姿を隠せないみたいな感じかな。羽が生えていないことから、悪魔はこの限りじゃないと分かる。まぁ、これのおかげで溶け込めているからあまり気にしないで良いかな。
妖都は、神桜都市ほど気さくな住人ってわけじゃないみたい。同じ住人に声を掛けたりはしているけど、私が声を掛けられるという事はなかった。妖都エリアの規模は、普通のフィールドと同じなので、本当に広大だ。それに廃城下町エリアと違って、建物が壊れている訳でも無いから、裏路地とかがすんなりと見えたりはしない。広く見渡す事が出来る訳もないので、全ての道を通って調べないといけない。
「街判定だからか、マッピング自体は全部出来てる。これなら迷う事はないだろうけど、全部調べるのは時間が掛かりそう。なんで、こんな迷路みたいな作りなんだろう?」
マップは、妖都を簡略化して上から見たようになっている。細かい道も描かれているけど、それらが迷路のように入り組んでいる。まるで、洞窟のダンジョンにいるかのような感じだ。
妖怪の街という事もあって、迷い込むという状況を作りたかったとかなのかな。おかげで、大分面倒くさいけど。
大通りから逸れて、細い道を進んでいく。小さな家が連なって道を作っている。何度か行き止まりを見ていくと、その内の一つでようやく青い靄を見つけた。靄を固めると、青い炎になって、どこかに飛んでいった。私は、それをぽかんとしながら見送ってしまう。
「…………えっ?」
てっきり何かの資料かアイテムになると思っていたので、どこかに飛んで行かれるのは予想外だった。
「鬼火みたいなものなのかな? 無理矢理考察するとしたら、あの靄は拡散した鬼火で、私が固めないと、あのままになっているとかなのかな。それなら、どんどん固めてあげた方が良いよね」
鬼火のあの状態が本来の姿ではないというのは、ちゃんとした鬼火になったところから分かりきっていることなので、見つけ次第固めてあげる事にした。そうして、鬼火を元の姿に戻してあげながら探索していると、唐突に謎の透明な壁にぶつかった。
「んぐっ……何これ? マップでは道が続いてるのに……ん?」
バグかと考えていたら、前にウィンドウが出て来た。
『この先十八歳未満のプレイヤーは入る事が出来ません』
十八歳未満禁止エリアだった。そこから考えるに、遊郭的な場所なのかな。ゲーム自体は十八歳未満禁止とかではないので、そういう表現が含まれているという訳では無く、遊郭という場所ってだけで、禁止エリアになったのだと思う。
「う~ん……アク姉が行ったら訊いてみよっと」
入る事が出来ないのなら、それは仕方ない。妖都の一部に入る事は諦めて、自分が探索出来る場所を調べて行く。さすがに、年齢制限のある場所に重要なクエストフラグを置く程意地悪な運営じゃないだろうしね。多分……そのはず。私は運営を信じる。SPをマイナスにされたけど。
そんな調子で調べられる範囲で探索をしながら、鬼火を元に戻していく。武器屋なども覗いてみたけど、今の武器や防具の方が良いものだった。一つ特徴的なものがあって、その武具全てに呪いみたいなものが付いていた。装備したら外せないみたいな呪いから、HPが徐々に減っていくみたいな呪いまで幅は広い。その分のメリットはあるみたいだけど、好き好んで呪われたいとは思わないかな。
それと、薬屋も面白かった。飲んだら状態異常になるような薬が沢山並んでいた。妖怪には、そっちの方が薬になるのかもしれない。
そんなところも見ていると、目の前の道の真ん中に、狐が並んでいた。
「あっ、可愛い」
普通に見ると、ただただ可愛い光景なのだけど、ここは妖都。妖怪が住む都という事もあって、あの狐も普通の狐じゃないと見るべきだ。実際、普通の動物とか一度も見ていないし。
狐達は、私の周りに来ると、くるくると回ってから、左右に一列になって歩き始めた。それは、狐達で作られた道のようにも見える。つまりは、私達に付いてこいという事かな。
何かしらのイベントだと思うので、大人しく狐達の間に入って誘導されていく。そうして連れて行かれた先には大きな屋敷があった。屋敷と言っても、ギルドエリアにある私達の屋敷のような西洋風ではなく、しっかりと和風な屋敷だった。所々に中華っぽいものも混ざっている気がするけど、そこら辺は詳しくないので、よく分からない。
「ここはサクヤさんのところみたいに、お城じゃないんだ」
妖都というくらいだから、そういうものが建っていてもいい気がしていたけど、思えば妖都に来てから、そこまで高い建物を見ていなかった。サクヤさんや闇霧の始祖のお城みたいなものがあれば、すぐに見えるはずなので、それは間違いないと思う。
ただ屋敷のあるこの敷地は、かなり広い。この屋敷の敷地だけでファーストタウンの半分くらいはあると思われる。改めてマップを確認してみると、本当に大きな区画という事が分かる。私が調べていた場所は、まだ妖都の序盤だったので気付かなかった。
本来であればモンスター達のいるフィールドになるはずの広さを街そのものにしているので、こんな広大な土地の家があってもあまり不思議とは思わなかった。
狐達は、そのまま敷地内に入っていくので、その後に続いて私も敷地内に入っていく。そのまま建物の中に入るのだと思ったけど、建物を迂回していきながら奥の方に移動していく。すると、鳥居みたいなものが入口にある建物が見えてきた。何となくあそこが目的地かなと思っていると、狐達がその入口の前で並ぶ。相変わらず、通路のように左右均等に並んでいた。完全に強制連行だったのだけど、この光景を見ると可愛いという感想しか出てこない。
狐、妖怪、神社。これらの要素から思い付くのは、一人のみ。それは、妖怪について調べたら、鬼などに続いて出て来るくらいには、有名な妖怪だ。それが分かったからといって、安心出来る要素は一切ない。このゲーム内で、どういう扱いになっているのかは、全く分からないのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます