第376話 風神雷神討伐

 【蒼天】【天聖】の混合熱線のチャージをし、白百合を血、影、炎で強化して、風神に突っ込む。白百合を上段から振り下ろす寸前に、血液量を増やして、片手剣にする。急にリーチが伸びた事で、風神の反応が一瞬遅れる。風神を袈裟斬りにする半ばで、暴風の弾を食らい吹っ飛ばされる。その途中でふと思い付き【慣性制御】で身体を止める。ノックバックの途中で慣性を消滅させる事で、ノックバック途中で身体を止める事が出来る。実は、これが【慣性制御】の主な使用方法なのかもしれない。私は【電光石火】の勢いを止める用に使っていたけど。

 身体を止めた直後に、【電光石火】を使い、風神に【疾風迅雷】で溜めた雷を纏った蹴りを見舞う。風神の風の壁が私の蹴りを止めるけど、そこに、【邪鬼】を使って闇を凝縮させる。風の壁は闇によって削り取られた。闇の特性を思い出して、軽く試してみようと思いやってみたけど、上手くいった。

 風の壁を突き抜けた蹴りが、風神の鳩尾に突き刺さる。そこに影を伸ばして、一気に縛り上げる。雁字搦めにした風神に白百合を突き立てようとしたけど、その前に、風神の身体から溢れ出した風によって影が断ち切られる。拘束を解いた風神が、私を風の球体で覆ってくる。このくらいなら、白百合でも斬り裂けると思ったのだけど、直後に更に外側で大きな竜巻が出来ていた。そして、これらの内側では風の刃が飛び交っていて、私を削り取ろうとしてくる。これらの防御方法に【邪鬼】を使う。私の身体を覆うようにして、闇を纏い放射状に放つ。

 風の刃と竜巻を打ち消したところに、十字の風の刃が飛んでくる。白百合に【暴風武装】で風を纏わせて、炎と影と闇を伴った風の刃を飛ばす。これで打ち消せるようなものではないけど、多少勢いを削り上昇気流によって上方に逸らす事が出来た。同時に、私は降下をしつつ、攻撃範囲から抜け出したところで、【電光石火】を使い再び風神に突っ込む。


「【追刃・二式】」


 ここで短剣の技を使う。【追刃・二式】は、【追刃】が進化した技で後を追ってくる青と緑の光の攻撃力が少し上昇し、私に対する当たり判定がなくなる。MPの消費が激しいし、他にパーティーメンバーがいると使いにくいというデメリットは残っているけど、現状は関係ない。MPならどっからでも回収出来るしね。

 【電光石火】を連続で使用しつつ、風神の周りを高速で飛び回る。そうして、光の檻を作りだしてから、風神に向かって攻撃をしていく。風による妨害を受けるけど、光を盾にすればある程度マシになる。少しずつ檻が小さくなっていき、風神にもダメージが通り始めた。

 そんな中で、風神の様子が変化する。風神の髪の毛が逆立ち始めた。怒髪天を衝くという言葉があるけど、その言葉をそのまま体現しているかのようだった。風神の周りに大型の台風並みの暴風が纏わり付く。こっちの攻撃が暴風によって逸らされる。でも、その度に暴風を斬り裂いているので、少しずつ暴風の防具を削いでいけている。

 ただ、ちょっと面倒くさくも感じたので、最大まで溜まった混合熱線を放つ。熱線に対しては暴風の防具も意味が無かったようで、風神のHPが消え去った。吸血は出来なかったけど、出来るような相手でもなかったので仕方ない。

 風神を倒した達成感など無視して、すぐに雷神の方に向かう。その間に、再び【蒼天】と【天聖】の混合熱線のチャージを始める。皆が上手く戦ってくれていたみたいで、HPはかなり減っている。

 【電光石火】で突っ込み、真上から蹴りを入れる。私に気付いて稲妻を放ってきたけど、それはライが逸らしてくれた。風神の援護がなければ、こっちの攻撃はちゃんと入る。【共鳴】で突き刺さっている黒百合を回収する。


「【疾風乱月】」


 双剣による計五十連撃。雷神から溢れ出す雷をライが最大限抑え込み、私への被弾は少なくて済んでいる。【疾風乱月】が終わり、技後硬直が訪れる。でも、ここの状態でも出来る事はある。だって、技後硬直は身体を動かす事が出来ないだけだから。

 口を開き混合熱線を放つ。至近距離での熱線に地面が捲れ上がっていく。この衝撃波を、エアリーが真空を作り出して皆を守っている。私も熱だけは皆のところにいかないように操作しながら、熱線を発し続ける。雷神が発してくる稲妻はライが逸らし続けてくれる。

 熱線を吐き終えたところで、雷神のHPが消え、雷神も倒す事が出来た。


「ふぅ……皆、大丈夫!?」

『はい。多少負傷しましたが、問題はないかと』

『…………』こくり


 よく見ると、皆小さいながらダメージエフェクトが散っている。ダメージを受けたのは本当の事みたいだ。


「取り敢えず、無事で良かった……って、皆、身体が光ってるけど、これは大丈夫?」

『本当ですね……何だか身体の内側から力が溢れ出す感覚がします』

「もしかして、進化?」


 光に包まれた三人は、少しずつ身体が成長していった。エレクは角も生えてきて、ユニコーンのようになっていく。エアリーとライは、レイン達と同じく少しずつ身体が成長している。エアリーの方が、背が高くなっているかな。ライは全体的に控えめだった。

 エアリーは風の神霊シルフに、ライは雷の神霊トニトルに、エレクは雷霆馬に進化した。


────────────────────


エアリー:【魔導王】【暴風魔法才能】【根源(風)】【完全支配(風)】【風神霊】【神霊体】【神力】【神風】【絶対真空】【圧力操作】


ライ:【魔導王】【雷霆魔法才能】【根源(雷)】【完全支配(雷)】【雷神霊】【神霊体】【神力】【神雷】【電磁気】【極雷】


エレク:【雷電武装】【蒼雷】【紅雷】【雷電走】【疾風迅雷】【電光石火】【韋駄天走】


────────────────────


 まさか、皆が進化するとは思わず驚いた。直後に目の前にウィンドウが出て来る。


『風神雷神を討伐したため、所有するテイムモンスターの一部が特別な経験値を獲得しました。該当テイムモンスターが進化しました』


 どうやらテイムモンスターの進化を誘発するようなモンスターだったらしい。他の皆が進化したようなお知らせはないから、多分、この三人だけだと思う。そこから連想するに、風神雷神と同じ属性である事が条件の一つになっていると思われる。

 他に手に入れたものと言えば、雷神の太鼓と風神の風袋という素材だけだった。これらは、アカリにあげる事にする。私が持っていても宝の持ち腐れだし。

 普通のプレイヤーも同じような恩恵になるのかな。テイムモンスターに対するものだけだったら、一部のプレイヤーにしか恩恵がなくなるし、風神雷神は避けられる対象になりそう。


『まさか、このような方法でも進化するとは思いませんでした』

「ね。私も驚いたよ。ライも大きくなって良かったね」

『……』こくり


 進化しても、ライは相変わらず無口なようだ。そんなところも可愛いけどね。ライの頭を撫でていると、エレクも顔を寄せてきた。前よりも遙かに大きくなったので、人が三人くらい乗っても、全く問題無さそうだった。そして、立派な角まで生えて、ちょっと格好よくなっている。


「エレクも大きくなれて良かったね。もしかして、もっと速く走れたりする?」

『ヒヒ~ン』


 エレクは大きく嘶いた。せっかくなので、進化したエレクの速さも体感する事にする。エアリー、ライと一緒にエレクに乗り、妖怪道中エリアを自由に走り回って貰った。すると、さっきまでよりも倍以上も速く走っていた。ただ、アカリが作ってくれた馬具は体格が変わった事によって壊れてしまったので、新しく作って貰わないといけない。

 何はともあれ、風神、雷神を倒し、思ってもみなかった報酬を得る事が出来た。最初に妖怪道中エリアに来て良かったかな。

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