第375話 妖怪道中の風雷
妖怪道中エリアの探索を進めていると、エレクが急に止まり、エアリーとライが何かに反応した。
「どうしたの?」
『何か来ます』
『……』こくり
エアリーの声に緊張感が含まれている。どうやら、本当に危ないモンスターがいるみたい。
「逃げられる?」
『厳しいかと』
「なら、戦うしかないね。どこにいる感じ?」
『あちらです』
エアリーが指さす方向には、激しい雷鳴と暴風が吹き荒れるような音が聞こえていた。しかも、それが近づいてきている。
「モンスターが地上から来てるとかは分かる?」
『空を飛んできています』
「それじゃあ、エレク、二人を乗せて移動し続けて。私は空で戦うよ。そんなに危ない相手なら、拘束とかは考えないで良いから。とにかく倒す事に専念ね」
『はい』
『……』こくり
『ブルルッ』
【熾天使翼】を使い、エレクから飛び立つ。皆がこれまでになく警戒する相手という事で、私も警戒しないといけない相手と考えた。雷と風に関係するような妖怪と言われても、パッと思いつく妖怪はいない。
一分もしないうちに私達のところにも嵐がやってくる。激しい落雷と強い暴風が来るけど、エアリーとライが逸らしているので、比較的安全でいられる。そう思っていたら、【万能探知】に二体のモンスターが反応する。同じような形をしているけど、片方は背中に沢山の小さな太鼓を背負っていて、もう片方は袋のようなものを背負っている。そして、鬼のような見た目をしていて、雲の上に乗って移動してきている。
近づいてきた事で、名前も見えてきた。風神と雷神。その姿は、学校の授業で見た事のある姿にそっくりだった。緑の肌をしているのが風神。白い肌をしているのが雷神みたいだ。どうりで、エアリーとライが警戒するわけだった。
ただ神という事もあって、コミュニケーションが取れるかもと思ったのだけど、相手は問答無用で攻撃を繰り出していた。
雷神が太鼓を四連続で鳴らす。その直前に既に嫌な予感と第六感がセットで危険を知らせていた。【雷電武装】で雷を逸らそうとしたけど、こっちの制御を受け付けなかった。ギリギリでライが逸らしてくれたから、事なきを得たけど、私では相手の制御を上書きできないみたい。ライでも少し逸らすだけしか出来ないという事は、相手は【完全支配(雷)】を持っているという事になる。恐らく、風神の方は【完全支配(風)】を持っていると思う。精霊であるエアリーとライなら、多少の対抗は出来るけど、完全に上書きする事は出来ないみたい。
地上に落ちてくる雷の方は、エレクが察知して持ち前の速度で避けている。その間に、雷神から倒しに向かう。
【電光石火】で一気に背後に回り、取り出して白百合と黒百合で斬ろうとする。でも、その直前に、風神が袋から放った暴風によって吹き飛ばされる。そこに雷神が太鼓を叩いて雷を放ってくるので、白百合と黒百合で打ち払う。
雷神から倒そうと思っても、風神が隙間を埋め。恐らく逆も同じ事だ。だから、二体まとめて攻撃する。【蒼天】と【天聖】の混合熱線をチャージする。同時に、【鬼】を解放する。【色欲の大罪】と【嫉妬の大罪】は発動しているけど、二体は状態異常にならない。無効化されている感じかな。でも、MPは吸収しているし、私のステータスが上昇しているのが分かる。さすがに、向こうの方がスキルレベルの合計が上という事はないと思う。そもそもモンスターにスキルレベルの概念があるのかは疑問だし。実際、テイムモンスターには、レベル表記がないから。でも、私よりも強敵という判定にはなっているのだと思う。問題は、その強敵具合がどの程度なのかという事。
再び、【電光石火】で突っ込む。今度は、風神の方に向かってだ。背後に回り、白百合と黒百合を振おうとするけど、今度は雷に邪魔をされる。でも、その雷は、私から逸れていった。同時に、雷神を竜巻が覆う。内側で斬り刻まれる筈が、すぐに竜巻が消された。風神が竜巻を消したのだ。エアリーの攻撃でも、向こうからしたら消せるものみたいだ。
でも、ここでようやく二体に隙が生まれた。ノックバックが鬱陶しいので、風神の方を先に倒す事にする。雷神の方を向いていた風神を背後から斬る。血と影で強化した白百合と黒百合を交互に振り、連続で攻撃していこうとしたけど、二連撃のところで風神の身体から溢れ出した風に吹き飛ばされる。
「袋じゃなくても風は出せるのか……」
袋だけを警戒していればいい訳ではない事が分かった。
今度は、飽和攻撃で攻める。【天聖】【邪鬼】で光と闇の短剣を作り、二体に向かって放つ。続いて、水、影、血でも短剣を作りだして放つ。三百六十度全ての方向から飛んでくる短剣は、風神が生み出した風の壁によって阻まれる。二体を覆うような球体の壁の一部に急に穴が空いた。エアリーが道を開いてくれたのだ。
その手助けを無駄にする訳にはいかないので、空いた穴に向かって短剣を殺到させる。ダメージを稼げるかと思ったけど、その穴から雷が溢れ出したのを見たのと、操作している感覚がなくなった事から打ち消されたのだと分かる。
私の攻撃が消えた事で、風の壁が消える。そこに混合熱線を放った。二体とも巻き込まれて、HPが大きく削れる。そんな熱線の中から稲妻が放たれて、身体が貫かれる。私には【蓄放電】のスキルがあるので、雷を吸収出来るのだけど、吸収の限界を迎えて【夜霧の執行者】が発動する。
「有効だけど、ダメージを受けながら攻撃してくるのか」
風神と雷神が追撃をしてこようとするけど、そこに、エアリーとライの攻撃が来て、二体が攻撃を逸らす。下からの攻撃を鬱陶しいと思ったのか、エアリー達に攻撃をする。エレクが上手く避けているので、皆にダメージはない。
【色欲の大罪】で、ヘイトが集まりやすくなっているはずなのだけど、お構いなしといった感じだ。皆を狙われるのは、望むところではないので、【電光石火】で不意打ちではなく直接攻撃する。勢いを殺さずに風神に蹴りを入れる。これを風神は風の壁で防いできた。
相手が風を使うという事もあって、使用を控えていたけど、ここで【神炎】を使う。一気に【神炎】を放ち、風神を覆う。風神は、その【神炎】を風で吹き飛ばす。
その間に白百合で弓を形成し、黒百合を矢とする。その黒百合に【炎翼】を併用した【神炎】を極大まで纏わせて、雷神の方に放つ。放たれた黒百合は、真っ直ぐ雷神に向かっていく。雷神は、極大の稲妻を放って、黒百合を迎撃しようとしたけど、完全に打ち消す事は出来ず、太鼓の一部が削れた。それを見て怒り狂った雷神が、残っている太鼓を滅多打ちにして、私に大量の稲妻を放ってくる。
【共鳴】で黒百合を戻して稲妻の一部を打ち消していく。でも、全てを打ち消す事は出来ずに、何度か被弾して【夜霧の執行者】を全て消費してしまう。
でも、避けている最中で再び【電光石火】を使い、雷神に黒百合を突き刺す。怒り狂っていた雷神は、反応に遅れて黒百合による刺突を受ける。周囲に落雷が降り注いでいたからか、風神の援護も出来なかったみたいだ。
至近距離まで接近出来たので、突き刺した黒百合から手を放し、その顔面に拳をめり込ませる。思いっきりぶん殴った瞬間に、影を雷神に纏わり付かせて、吹っ飛んだところでこちら側に引き戻して、今度は蹴りを入れる。この蹴りで雷神は隕石のように地面へと落ちていった。このまま雷神に追撃を掛けようとしたけど、背後から風神の暴風の槍が飛んで来たので、【重力操作】で上に重力を作りつつ思いっきり羽ばたいて避ける。
雷神の様子を軽く見てみると、下でエアリー達と戦っていた。完全に不利なはずだけど、上手く戦いながら少しずつダメージを稼いでいる。雲の上に乗らないと空は飛べないみたいなので、あのまま地上戦に持っていけそうだ。
二体を分断できたので、連携による妨害はなくなる。エアリー達には申し訳ないけど、私は、このまま風神を倒す事にする。
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