第364話 悪魔の試練

 泉に引きずり込まれた先は、泉の中ではなかった。どこかの別空間。黒鬼と戦った場所に似た陰鬱とした場所だった。地面も黒いし、空は紫色だった。


「皆は……強制送還されたかな。この感じだと天聖竜みたいなのと戦う事に……」


 その瞬間、【万能探知】にモンスターが反応する。上空から降りてくるモンスターは、東洋竜のような身体の長い竜だった。木のように枝分かれした角と鬼のような鋭い角が二本ずつ生えている。名前は邪鬼竜。そして、目の前にウィンドウが出て来る。


『クエスト『悪魔の試練』を開始します』


 【大悪魔】を進化させるためのクエストが始まった。あの邪鬼竜をどうやって倒すかで進化出来る先が決まってくると思う。まぁ、私は一つの方法でしか倒せないと思っているから、やることは一つだ。

 竜狩刀を取り出し、血を吸収させる。そして、【熾天使翼】を広げて身体の周りに【天聖】で作った光の球を浮かせる。そして、【電光石火】と【跳躍】で一気に邪鬼竜の上まで跳んだ。

 邪鬼竜は私の動きに合わせたようにこっちを向いてくる。そして、口から黒紫色の光を放っていた。既に熱線の準備を始めているという事だ。もしもの時のために、こっちも【蒼天】と【天聖】の混合熱線をチャージする。

 邪鬼竜は、上を取った私に向かって、物凄い勢いで突っ込んできた。対して、私の方も【電光石火】で邪鬼竜に突っ込む。【慣性制御】で邪鬼竜の背中に乗った私は、竜狩刀を突き立てて、影と血で身体を固定する。【無限影】になった事で、さらに影の量を増やす事が出来たので、ガッチガッチに固める事が出来た。そのまま吸血を始めると、邪鬼竜が蜷局を巻き始める。西洋竜だった天聖竜と違って、身体が長い東洋竜であれば、上手くすれば私を攻撃出来る。

 ただ、私もその可能性には気付いていたので、どうやっても頭の死角になる位置に張り付いていた。なので、私に向かって熱線を放つ事は出来ない。それに気付いたのか、今度は私を闇で包み込もうとしてきた。それに対しては、【天聖】で相殺する。同時に、邪鬼竜の体内に竜狩刀を通して血を流し込み、さらにその血液に【神炎】を纏わせて内側から焼く。

 邪鬼竜は長い身体をくねらせて、何とか私を振りほどこうとしてくる。だから、その身体の全体に影を広げて一気に縛り上げる。密着して影を出し続けているので、邪鬼竜も振りほどく事が出来ずに、どんどんと身体の自由が奪われる。そこに血液による拘束も追加して、完全に縛り上げる。その拘束を解こうと悪戦苦闘している間に、どんどんと血を吸いながら、邪鬼竜の内側から攻撃していく。そうして十分もしないうちに、邪鬼竜が倒れた。


「ふぅ……天聖竜で倒し方を確立しておいて良かった」


 この邪鬼竜の吸血で手に入れたスキルは、【邪鬼】。そして、称号は【邪鬼を乗り越えし者】というものだった。


────────────────────


【邪鬼】:内なる闇を様々な攻撃に変化させられる。


【邪鬼を乗り越えし者】:【邪鬼】の効果範囲が広がる。


────────────────────


『クエスト『悪魔の試練』をクリアしました。報酬として、悪魔の権限を獲得』


 クエストもクリア出来たので、悪魔の権限を手に入れた。早速悪魔の権限を取り出すと、ランタンの中に入った黒い炎だった。でも、アイテムとして出て来た。


「まぁ、SPがないから進化はしないかな」


 そんな事を言った瞬間、ランタンが割れて悪魔の権限が私の胸に吸い込まれた。


『悪魔の権限を解放。SPを2000消費して【大悪魔】を【色欲悪魔】へ進化します。【色欲悪魔】に進化した事により【大悪魔翼】を【悪魔王翼】へ強制的に進化します。また【色欲の大罪】を強制的に収得。これにより、【色欲】【魅了の魔眼】【吸精の魔眼】【魂吸収】【生命吸収】の収得が不可能となります。【魂吸収】の進化元である【吸精】はLv50の状態で進化し統合されます』



 進化した。完全に予想外な状況に固まっていると、急に水の中に転移した。混乱したけど、ここがあの部屋にあった泉の中というのは分かった。泉のおかげで、頭が冷えたので、泉から上がって現状を確認する。

 すると、驚くべき表記を見た。


────────────────────


ハク:【武芸千般Lv100】【二刀の極みLv71】【武闘術Lv100】【始祖の吸血鬼Lv100】【大地武装Lv100】【暴風武装Lv100】【雷電武装Lv100】【光明武装Lv82】【暗黒武装Lv85】【加重闘法Lv85】【万能探知Lv32】【竜王息吹Lv100】【蒼天Lv92】【天聖Lv41】【鬼Lv78】


控え:【聖剣Lv1】【鋏Lv15】【三叉槍Lv25】【氷結爪Lv1】【竜爪Lv25】【岩竜爪Lv10】【剛爪Lv20】【棘拳Lv25】【武闘気Lv100】【爆熱闘気Lv50】【敏捷闘気Lv40】【銃Lv1】【散弾銃Lv3】

【魔導Lv12】【天候魔法才能Lv1】【大地魔法才能Lv3】【暴風魔法才能Lv1】【雷霆魔法才能Lv1】【闇魔法才能Lv1】【付加呪加才能Lv1】【状態異常才能Lv1】【死霊術Lv13】【死霊誘引Lv1】

【支配(火)Lv48】【無限火Lv54】【支配(水)Lv73】【無限水Lv86】【吸血鋭牙Lv46】【根源(血)】【完全支配(血)Lv100】【支配(影)Lv12】【無限影Lv18】【植物操作Lv1】【操縛糸Lv1】【重力操作Lv94】【眷属創造Lv83】

【HPMP超強化Lv100】【物理超強化Lv100】【魔法防御強化Lv100】【器用さ強化Lv100】【運強化Lv100】【神体能力強化Lv100】【五感超強化Lv18】【頑強顎門Lv88】【反発弾性強化Lv21】【骨格強化Lv60】【機動性強化Lv40】【神力(封)】

【毒耐性Lv100】【麻痺耐性Lv54】【呪い耐性Lv31】【沈黙耐性Lv66】【暗闇耐性Lv1】【怒り耐性Lv11】【眠り耐性Lv1】【混乱耐性Lv60】【魅了耐性Lv28】【出血耐性Lv1】【気絶耐性Lv11】

【夜霧の執行者Lv98】【堅牢堅固Lv88】【茨鎧Lv58】【腐食鎧Lv55】【隠蔽色Lv71】【雨隠れLv35】【明暗順応Lv100】【回転Lv100】【遠心力Lv83】【韋駄天走Lv40】【悪路走行Lv31】【跳躍Lv28】【飛翔Lv100】【慣性制御Lv51】【暴飲暴食Lv100】【悪食Lv100】【貯蔵Lv100】【心眼開放Lv100】【精神統一Lv1】【適応Lv100】

【神炎Lv62】【氷炎Lv16】【水氷息吹Lv11】【土水息吹Lv10】【氷雷息吹Lv68】【岩炎息吹Lv12】【岩風息吹Lv58】【蒼炎息吹Lv60】【炎牙Lv60】【噴火Lv8】【熱血Lv32】【氷牙Lv18】【水流レーザーLv21】【氷結破砕Lv20】【冷血Lv40】【蓄放電Lv13】【電光石火Lv100】【疾風迅雷Lv100】【雷脚Lv100】【猛毒牙Lv83】【猛毒鎧Lv50】【猛毒触手Lv21】【猛毒墨Lv20】【猛毒生成Lv71】【猛毒血Lv90】【麻痺毒牙Lv28】【麻痺血Lv65】【奪声牙Lv28】【呪毒牙Lv28】【奪明牙Lv28】【狂戦士化Lv1】【発狂Lv1】【猪突猛進Lv68】【繭Lv10】【強靭絹糸Lv61】【魔力糸Lv50】【ドラミングLv6】【超圧縮Lv100】【念力Lv31】【射出Lv100】【虫翅Lv2】【白翼Lv70】【鋼鉄翼Lv10】【魔力翼Lv36】【炎翼Lv16】【浮遊Lv98】【珊瑚砲Lv50】【黒腐侵蝕Lv1】【粘体Lv45】【断熱体Lv31】【模倣Lv20】【感染Lv25】【再生Lv31】【超反応Lv100】【解錠Lv34】【呪詛Lv1】【暗闇の魔眼Lv29】【混乱の魔眼Lv1】【呪いの魔眼Lv58】【宝石創造Lv28】【鉱石創造Lv28】【水晶創造Lv28】【竜紋Lv28】【邪鬼Lv1】

【鬼気Lv68】【黒鬼気Lv68】【竜王血Lv100】【竜王鎧Lv12】【炎竜鎧Lv1】【岩竜鎧Lv35】【竜翼Lv90】【精霊体Lv100】【魔王Lv100】【色欲悪魔Lv1】【色欲の大罪Lv1】【悪魔王翼Lv1】【聖王Lv100】【熾天使Lv50】【熾天使翼Lv65】【魔聖融合Lv100】【属性結合Lv81】

【機織りLv31】【糸紡ぎLv32】

【水中戦闘術Lv38】【掘削Lv18】【竜騎Lv68】【農家Lv100】【果樹Lv100】【稲作Lv100】【畑作Lv100】【花卉Lv100】【茸栽培Lv78】【畜産Lv100】【解体Lv63】【酪農Lv100】【羊飼いLv100】【養鶏Lv100】【養豚Lv100】【養蜂Lv35】【木こりLv58】【テイマーLv12】【精霊に愛されし者Lv18】【神獣使いLv26】【統帥Lv19】【言語学Lv100】【古代言語学Lv93】【現代言語学Lv100】【プリセット】

SP:-1275


────────────────────


【色欲悪魔(ランク外)】:悪魔の最上位に位置する階級。闇、暗黒、氷に属する力を極端に強化する。闇属性、暗黒属性、氷属性、魅了状態に対して完全な耐性を得る。全ステータスを非常に大きく上昇させる。控えでも効果を発揮する。(収得条件:【大悪魔】Lv100 クエスト『悪魔の試練』を特定方法でクリア SP2000消費 『【大悪魔】進化』)


【悪魔王翼(ランク外)】:魔力によって出来た悪魔王の羽を生やす事が出来る。羽の展開時のみMPを消費して飛ぶ事が出来る。控えでも効果を発揮する(収得条件:【色欲悪魔】所持 【大悪魔翼】所持 『【大悪魔】進化』)


【色欲の大罪(ランク外)】:視界に入れた対象のMPを常時吸収する。視界に入れた対象を魅了状態にする。魅了状態にする確率が大きく上昇する。触れた対象からHPとMPを吸収する事が出来る。触れている相手に対して、自分のHPとMPを与える事が出来る。モンスターのヘイトが集まりやすくなる。テイムしたモンスターの懐き度がテイム直後からMAXの状態になる。控えでも効果を発揮する。


────────────────────


 スキルも強いけれど、それよりもSPの部分がマイナス表記になっている。


「えぇ……残りSP無視での進化って事? これで、このマイナスが消えるまでは新しいスキルを取る事も出来ないって事じゃん……【神力】の封印を解くのは当分先って事だし……」


 【神力】はSP不足で収得出来なかったのに、【色欲悪魔】の方は強制的に収得させられた。【神力】よりもこっちの方が特別なスキルだからとかなのかな。ここら辺の考察は、闇霧の始祖に任せる事にする。


「てか、なんで色欲? 【暴飲暴食】も【悪食】もあるからなるとしても暴食だと思ってたのに。そうなるような心当たりは、ゲーム内にないしなぁ」


 ここも考えても答えは出ないので、レイン、エアリー、マシロを喚び出す。


『お姉さん! 大丈夫!?』

『ご無事なようで何よりです』

『びっくりしたわよ』

「うん。心配掛けてごめんね。取り敢えずは、大丈夫だよ」


 三人の頭を撫でて安心させる。取り敢えず、これで深海エリアに来た大きな目的は終わったかな。後は、全体を探索して他に何かないか確認するだけだ。

 一通り部屋等を調べた後、エアリーとマシロを帰して、レインと一緒に深海に戻ろうと階段を上がっていったら、筋骨隆々なお爺さんが立っていた。突然の事過ぎて、五秒くらい固まってしまう。深海エリアに来ているプレイヤーは、恐らく私くらいだと思っていたからだ。


「ふむ……【神力】は封印されているのか。それにしても、異質な存在だな。【熾天使】でありながら、大罪持ちとは。加えて、始祖と竜、精霊……鬼でもあるのか。そして、神霊を従えている。あやつの動きを止めたのは、その神霊だな」

「えっと……そうですね。私は、ハクと言います。失礼ですが、あなたは?」


 私の内情を知っているというところから、ある程度予想はつくけど、一応自己紹介してから訊いておく。


「むっ……これは失礼した。名乗ってはいなかったな。儂は海神ポセイドン。この海を支配している神だ」


 やっぱり神様だった。こういう存在は大体神か吸血鬼とかの異質な存在だと思っていたから、そこまでの驚きはない。


「海の土地神って事ですか?」

「いや、土地神とは違うな。支配しているが、ここに住んではおらん。今日は、謎の気配を感じ取ったから参っただけだ」

「ああ、なるほど」


 謎の気配は私の事だ。闇霧の始祖も気持ち悪いって言っていたくらいだから、こういうのを感じ取れる側からすると、確認しておかないといけないくらいヤバいのあと思う。私自身キメラ化が進んでいるなと思うし。


「主は土地神に知り合いがいるのか?」


 そうじゃないと土地神という言葉出てこないって感じなのかな。


「神桜都市にいるサクヤさんとは友人です」

「サクヤ……ああ、あの者か。なるほど。主が【神力】を持っている理由が分かった。だが、封印されているというのはどういうことだ?」

「あ、経験が足りないみたいです」

「そういう事か。それは、儂でもどうしようもないな。して、貴様は、悪に堕ちる気か?」


 ポセイドンさんから強い圧が放たれる。気圧されそうになるけど、ここは真っ正面から受け止める。こっちにその気はないのだから。


「いえ、成り行きで天使と悪魔の両方を得ていますが、悪に堕ちるつもりはありません。仮に、邪神となる事になっても、それは変わりません」

「ふむ」


 ポセイドンさんからジッと見られる。値踏みされている感じだと思うから、このままポセイドンさんが口を開くまで待つ。今話した事は、事実だから、後ろめたいことはないし。血を吸う事が悪行になるかもしれないけど、これに関しては悪とは思っていないから、ノーカンで良いはず。

 そんな事を想っていると、ようやくポセイドンさんが口を開いた。


「信じよう。貴様の心に嘘偽りはない。それに、貴様が善人ということは、その神霊が傍にいるという点からも窺える。加えて言えば、神の友人がいるという点でも同じ事が言えるだろう。故に、貴様を信用する。これをやろう」


 そう言って、ポセイドンさんは青く光る球を私に向かって飛ばしてきた。その青い球は私の胸の中に吸い込まれていく。ここ最近、胸にどんどんと変なものが入っている気がするけど、気にしないでおこう。


「これは……?」

「海神のお守りとでも思ってくれれば良い。これで、イモータルメガロドンは貴様を襲わん。加えて、貴様は海での呼吸が可能となる」


 そう言われた直後に、【海神のお守り】というスキルを手に入れたというウィンドウが出て来た。


────────────────────


【海神のお守り】:水中での呼吸が可能となり、一部モンスターから敵対認識されなくなる。敵対認識の効果は、パーティー内で共有となる。控えでも効果を発揮する。


────────────────────


 パーティーを組んでいれば、水中呼吸は共有されないけど、イモータルメガロドンから狙われないのは共有できるらしい。深海エリアをパーティーで攻略するのなら、有用なスキルだ。まぁ、私はソロなのだけど。


「ありがとうございます」

「うむ。ではな」


 そう言って、ポセイドンさんは消えていった。何だか、一気に色々な事が起こったけど、基本的に私に得がある事だったので良しとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る