第363話 レインの進化と謎の建物
レインに引っ張って貰いながら進んでいくと、不意にレインが止まった。【万能探知】に反応がないからイモータルメガロドンではないはず。どうしたのという意味を込めて、レインの手を指で叩く。
『お姉さん。何か力みたいなのを感じるの。何かな?』
どうやら、ソイルやラウネが感じたものと同じようなものを感じ取ったらしい。つまり、レインの進化フラグだ。どうやって力を吸収する事を伝えるか悩んだけど、ここではジェスチャーで伝えるしかない。力の伝え方が分からないから、取り敢えず、丸いものを手で作って、レインの胸に持っていく。
『?』
レインは分からないみたいで首を傾げていた。さすがに、ジェスチャーが適当過ぎたかも。なので、今度は周囲の水を【無限水】を使って水を吸収する。
『水を取るの?』
これには首を振る。
『あっ、力を吸い取れって事?』
ようやく伝わったので、頷いて答える。
『それじゃあ、向こうに行くね』
レインと一緒にレインが力を感じる場所に移動する。
『ここら辺かな。やってみるね』
指でオッケーサインを出すと、レインが目を閉じてジッとする。レインが力を吸収している間は、私が周囲を警戒する。ここにイモータルメガロドンが来たら厄介だし。
周囲を警戒しながらレインを見守っていると、少しずつレインが成長していった。これまで茶色だった髪の毛も青色に染まっていく。人からウンディーネになったレインは、人としての見た目を残していた。それがなくなり、完全なウンディーネになったという感じなのかな。
レインは、水の精霊ウンディーネから水の神霊ウンディーネに進化した。
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レイン:【魔道王】【天候魔法才能】【根源(水)】【完全支配(水)】【水神霊】【神霊体】【神力】【神水】【液体超圧縮】【絶対零度】
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成長したレインは、ソイルやラウネよりも胸が大きい。個体差かな。
『大きくなった!』
嬉しそうにしているレインを撫でてあげると、レインの方から抱きついてくる。なので、こっちからも抱きしめつつ頭を撫でてあげた。その時、【万能探知】にモンスターが反応する。まっすぐこっちに来ているのが分かった。この感じだと私達が狙われているのだと思う。
『大丈夫』
レインはそう言って、イモータルメガロドンのいる方向に手を向ける。そして、近づいてきたイモータルメガロドンが凍結した。その間に、レインが私を引っ張る。さっきまでとは桁違いの速度でイモータルメガロドンから離れていく。
『凍結は出来るけど、相手のダメージにはなってないみたい。氷が溶けたら、動き出すよ』
攻撃は通じるけど、ダメージにはならないから意味がないみたい。でも、状態異常系統ならある程度通じる感じかな。問題は、深海エリアだから状態異常にするための魔法や薬が使えないので、普通のプレイヤー達には同様の対処は出来ないだろうというところかな。
イモータルメガロドンから大分離れたところで、レインは興奮していた。
『凄いよ! この海の全体が見えるみたい! どこに何があるのかも分かっちゃうの!』
水の中という事もあって、レインは全能感を抱いているみたい。実際、水の中なら無敵だと思うけど。
『あっちに何かあるよ!』
水を使った地形把握でレインが何かを見つけたらしい。レインに引っ張っていって貰うと、そこには大きな建物みたいなものがあった。沈んだというよりもそこに建てられたような感じがする。建物の近くまで来る。建物は神殿のような造りで、中には空気がある。
「ふぅ……」
二つ目のタンクも終わる頃だったので、タイミング的には良かった。残り三時間分残っているけど、まだ三分の一もマッピングが出来ていないので、全体の探索を済ませるなら、もう少しタンクが欲しいかもしれない。
「レイン、進化おめでとう。可愛くなったね」
『うん!』
声も出せるようになったので、レインを褒めてあげるとレインは喜んで飛びついてくるので受け止めてあげる。進化出来たのが、本当に嬉しいみたい。
「それにしても、この建物は何なんだろう?」
『分かんない。でも、下の方に水があるよ』
「水で満ちてるって事?」
『ううん。ちょっとだけあるだけ』
「それなら大丈夫かな。【召喚・エアリー】【召喚・マシロ】」
空気のある場所の探索ならエアリーは必須だし、暗いのも変わらないのでマシロで灯りを確保してもらう。
『大分下の方に続いていますね』
『光源はいくつか作っておくわね……って、レインが大きくなってる!?』
「レインもソイル達と同じように進化したんだ」
『なるほど。ここは水に満ちていますしね』
「そういう事。それじゃあ、下に降りていこうか」
皆を連れて、神殿の中央にある階段から降りていく。深海という深い場所の更に深いところへと続く階段。もしかしたら、この先が【大悪魔】を進化させるための試練があるかもしれない。
マシロが出してくれる灯りのおかげで、周囲が見やすくなっている。階段の奥には通路があり、先の方に続いている。
『分かれ道はなく、このまま真っ直ぐ進んだ場所に、少し小さな部屋がありますね』
『そこに泉っぽい場所があるよ。中心くらいかな』
『何にも分からないわ』
「まぁ、マシロは感知に長けているわけじゃないから仕方ないんじゃない? マシロは灯りを作ってくれてるし、全然気にする必要はないと思うよ」
『姉様大好き』
浮いていたマシロが後ろから抱きついてくる。それを見たレインが無言で私の腕を取ってくる。エアリーはニコニコとしているので、そっちに手を差し出すと少し驚いてから私の手を取った。マシロをおんぶして、レインと腕を組み、エアリーと手を繋ぐという謎の状態になりつつも先に進んでいくと、中央に泉がある中くらいの部屋に出た。本当に泉以外何もない場所だった。
「エアリー」
『どこかに通じている穴はありません』
『泉の中も、どこにも通じてないよ』
レインにも訊こうと思っていたら、ちゃんと教えてくれた。一応、ソイルも喚んだ方が良いのかもしれないけど、多分大丈夫なはず。
「この泉は何なんだろう?」
『何か変な感じもするけど、大丈夫かな?』
「変な感じ?」
『もやもやしてるような……ただの泉じゃないって感じ』
「ふ~ん……なるほどねぇ」
そう言いながら、泉を覗いてみると、水面に自分が映った。ただの泉って感じがするけど、レイン曰く変な感じがするらしい。
「う~ん……私にはよく分からないなぁ」
そのまま泉を覗いていると、泉の水面が揺らぐ。レインが遊び始めたかと思ったけど、レインは私の隣にいる。エアリーはふわふわ浮いているし、マシロも私の傍にいる。つまり、誰も触っていないのに揺らいでいるのだ。
「どこからから水滴が……っ!?」
水滴が垂れているからかと思って、上を見上げようとしたら、泉から手が出て来て首を掴まれた。
『お姉さん!』
『お姉様!』
『姉様!』
三人が私を呼ぶ声がしたのと、私が泉に引きずり込まれるのは同時だった。
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