第356話 機械人形完成
次の土曜日。今日は、ちょっと楽しみな事がある。それは、機械人形の完成だ。昨日学校で光からその話を聞いていた。なので、ちょっと早めログインしていた。
牧場の方でお世話を終わらせてから、アカリの作業部屋に行くと、既にアカリもログインしていて、作業をしているところだった。
機械人形の方を見てみると、既にほとんどのパーツが繋がっていて、胸の部分が開いている。心臓に近い場所なので、そこに動力が入るって事だと思う。
その機械人形の隣には、トルソーに飾られた服があった。今後の作業を考えているのか、メイド服だけどスカートが膨れて無くて、ストレートなタイプになっていた。
「あっ、ハクちゃん。丁度良かった。もう完成するよ」
「そうなんだ。タイミングぴったりで良かった。動力を入れて完成?」
「うん」
そう言うアカリの手には、真っ赤なハート型の何かが握られていた。
「それが動力?」
「うん。ハクちゃんの血が自動で生成されるんだ」
「ふ~ん、人の心臓とは違う感じなんだ」
「さすがに、骨格に生成する機能は付けられないからね。強度的な問題で」
「まぁ、骨格はしっかりとさせておきたいしね。てか、私の血が自動生成されるってどういう事?」
「ハクちゃんから貰ったアイテムボックスを改良しようと思って色々と合成したら、自動血液生成コアっていうのが出来て、それにちょっと改良したハクちゃんの血を覚え込ませたの」
「へぇ~」
私があげたのは、最初のイベントで手に入れた一日に一回素材が手に入るアイテムボックスだ。だけど、手に入るのはレア度の低い素材ばかりだし、私は素材をそこまで使わないので、アカリにあげていたのだ。アカリは、それを改良しようとしていたら、そんなコアが出来たみたい。それを活かして動力にした感じかな。
どうやったら、そんな変なものが出来上がるのか気になるけど、今は機械人形の方を優先する。
アカリが機械人形に近づいていって、動力の接続を始める。その中で改めて機械人形の事を見る。
「そういえば、結局この顔って誰を参考にしたの?」
「誰も参考にしてないよ。プリセットがあったから、ちょっと整えてみただけ。美人メイドさんって感じでしょ?」
「まぁ、そうだね。万人受けって感じ」
「うん。それを目指したよ。これなら、ハクちゃんも納得でしょ?」
「だね」
これがアカリの好みとかだったら、ちょっと思うところがあったけど、そうではないので一安心だ。
「よし! これでオッケー! ハクちゃん、こっちに来て」
「ん? うん」
アカリに呼ばれたので、アカリの隣に移動する。
「この動力に触れて」
「こんな感じ?」
アカリに言われたように手で触れると、何か力が抜けるような感じがした。
「これでマスター登録はオッケー。今度はサブマスター登録で私を登録してっと」
「これで何が変わるの?」
「基本的にハクちゃんの指示が絶対で、ハクちゃんがいない時は私の指示に従うって感じ。ハクちゃんよりも私の方がここにいるからね。それと、登録したプレイヤーのスキルで出来る事が変わってくるみたいだね。私とハクちゃんを登録したから、一通りの生産と動物のお世話をしてくれるようになるよ」
「なるほどね。そういうシステムかぁ」
「因みに、サブマスターは、もう一人登録出来るよ」
「もう一人かぁ……なら、トモエさんかな。【料理】があるし。というか、残ってるスキルって、そのくらいでしょ?」
「確かにね。じゃあ、トモエさんに連絡してサブマスター登録してもらおうか」
「だね」
私とアカリが持っているスキルの他に生産とかに関係しそうなスキルは、【料理】だけなので、それを持っているトモエさんが一番適している。メイティさんの【演奏】でも良かったけど、こっちは趣味という方に傾いているので、作って貰うという方向で考えれば、【料理】一択だった。
メッセージでトモエさんを呼び出すと、すぐに屋敷に来てくれた。
「こちらが機械人形ですか。お話には聞いていましたが、意外とリアルな感じなのですね」
「はい。ここの動力に触れてください」
アカリに促されて、トモエさんが動力に触れる。これで登録は完了だ。
「私が登録しても良かったのですか? アクアの方が良かったのでは?」
「アク姉は、生産系のスキルを持っていないですから。私達以外に生産系のスキルを持っている人が欲しかったので」
「なるほど。では、アクアは適さないですね。私は、特に指示を出すつもりはありませんので、指示出しは、お二人に任せますね」
「はい。態々来てもらってありがとうございました」
「いえ、お役に立てて幸いです。では、失礼します」
トモエさんは、私達の頭を撫でると作業部屋を出て行った。マスター登録とサブマスター登録を終えたので、胸部パーツを取り付けて、アカリが服を着させる。そのくらいなら手伝えるので、私も手伝った。そうして完全なメイドさんが出来上がった。
「名前はどうする?」
「え? あ~……どうしようかな」
さすがに機械人形と呼ぶ訳にもいかないので、ちゃんと名前は必要になる。さすがに、そこまでは考えていなかったので、ちょっと悩む事になる。これまでの皆は、モンスターとしての名前とかもあったので、色々と考えやすかったのだけど、機械人形という事もあってパッと思い浮かんでこなかった。
「う~ん……メアリーとか?」
「メアリーね」
「え、良いの? パッと思いついた名前だけど」
「良いと思うよ。合っていると思うし」
機械人形の名前はメイドのメアリーとなった。名前の設定も終わらせたところで、アカリが下がってくる。同時に、メアリーの目が光った。人の目と同じように瞳があるし、瞬きもしている。
『お初にお目に掛かります。ハクお嬢様。アカリお嬢様』
メアリーは、綺麗にお辞儀をしながら挨拶をした。
『ご命令を』
メアリーは、跪いて命令を待っていた。そこまで敬われてもちょっと居心地が悪く感じてしまう。ただ、相手からしたら、絶対服従の主人という感じなので仕方ないのかな。
「えっと……基本は、牧場とかを手伝って欲しいかな。後は、アカリの作業の手伝いをお願い。時間が空いたら、料理をするって感じで。適度に休憩は挟んでね」
『かしこまりました』
「一応、確認するけど、私達と同じスキルが使えるんだよね?」
『はい。最大限お手伝いさせていただきます』
「ありがとう」
私がお礼を言うと、メアリーが微笑んだ。そういう部分もちゃんと表現出来るらしい。結構高機能なのかもしれない。
『では、早速お手伝いさせていただきます。牧場での仕事はなさそうですので、アカリお嬢様の作業をお手伝いさせていただきたいのですが、何からしていけばよろしいでしょうか?』
「あっ、じゃあ、インゴットを作って貰おうかな。そっち用の服も用意しておいたんだ」
『かしこまりました』
メイド服で鍛冶もするのかと思ったら、ちゃんと別の服を用意していたらしい。さすがは、アカリだね。
メアリーも完成して、ギルドエリアもまた発展しそうな気がする。ちょっと楽しみだ。
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