第355話 火山エリアのボス

 火山エリアのボスエリアは、かなり広い場所だった。閉鎖された場所じゃなくて、周囲に溶岩が溢れているような場所だ。その場所の中心に、赤い竜が寝ている。四つ脚に大きな羽を持ったスノウのような竜だ。名前は、火山の火炎竜。

 火炎竜は、私達に気付いて身体を起こした。そして、咆哮する前に即座に青い炎を吐き出してきた。フラムが炎を割って直撃を避けた。


「二人は拘束をお願い」

『ああ』

『キュイ』


 【矮小化】を解いたニクスが、火炎竜に向かって飛んでいく。それに対抗するように火炎竜も飛ぼうとしたけど、下から噴き出した溶岩が、火炎竜を拘束していく。ニクスは金色の炎を放って、火炎竜に攻撃する。これは、ダメージ目的ではなく、火炎竜に対する目眩ましだ。

 その間に、【電光石火】で背後に回り、固まった溶岩が無い箇所に張り付いて吸血する。火炎竜は、全身から炎を噴き出させて、私を攻撃するけど、私がいる部分だけ炎が出てこない。その事に気付いた火炎竜は、驚愕しているようだった。私は何もしていないので、フラムがやってくれた事だ。

 冷えた溶岩を壊そうと躍起になっている火炎竜だったけど、次々に追加されていき、どんどんと固められていった。この拘束がいつ解けても良いようにニクスは待機している。けど、結局拘束を解くことは叶わず、そのまま血を飲み干した。手に入れたスキルは、【炎竜鎧】というスキルで、称号は【火山の火炎】というのもだった。


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【炎竜鎧】:熱によるダメージを大きく減少させる。控えでも効果を発揮する。


【火山の火炎】:火山エリア内のみ、熱によるダメージを大きく軽減する。


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 どっちも要らないものだった。【熾天使】のおかげで、熱関係のスキルは軒並み死にスキルとなっている。それでも経験値自体は溜まるから、その先のスキルとか統合とかに大きな影響を及ぼさないのは有り難いけど。

 当然ながら、ここが南の最前線なので次のエリアに行こうとしても『アップデートをお待ちください』と表示されてしまう。でも、一応、アップデートしたら転移出来るようには出来た。

 火山エリアの探索も終えたので、フラム達を帰してから、私もギルドエリアへと帰る。


『姉々!!』

「わっ!? メア?」


 転移直後にメアが飛びついてきたので、慌てて受け止める。メアは急に飛びついてくる事が多いので慣れてはいる。

 メアは、そのまま私の身体をよじ登って肩に乗ってきた。肩に乗りたいのなら、飛べば良いのに態々私の身体をよじ登った意味はあったのだろうか。


『レッツゴー!』

「乗りたかっただけね」


 メアを肩車しながら歩いていると、集会場の方からマシロが走ってきて、ジッと見上げてきた。さすがに二人を肩に乗せられる程のマッチョじゃないので、マシロは抱っこしてあげる。


「二人してどうしたの?」

『姉々を見つけたから』

『メアが、姉様に乗ってたから』

「特に意味はないって事ね。それじゃあ、二人を楽しませようか!」

『わぁ~♪』

『あははは♪』


 二人を乗せて走り回っていたら、隣にエレクが並走し始めた。エレクが目線だけで、『乗れ』と言ってくるので、メアを肩から下ろして、二人を両手で支えながらエレクに飛び乗ってギルドエリアを走り回っていった。それを羨ましく思ったのか、メアやマシロだけじゃなくて、他の精霊達も順番に乗せて走り回る事になった。エレクもいっぱい走られたからか楽しそうだった。

 皆が満足したようなので、私はアカリの作業部屋に顔を出した。


「アカリいる?」

「いるよ。何か楽しそうな声が聞こえてたけど、何してたの?」

「皆でエレクに乗って遊んでた。アカリも乗る?」

「う~ん……今日はいいや。色々と作業が残ってるから」

「じゃあ、また今度ね。それじゃあ、これ」


 アカリに火山エリアで手に入れたマグマと溶岩鉱石を渡す。


「ありがとう。こっちは見た事のない鉱石だね……って、熱っ!?」


 溶岩鉱石を出して手に持ったアカリが、溶岩鉱石を放り投げた。


「よっと。大丈夫?」

「うん。ちょっとダメージを受けちゃったけど。これには、耐熱手袋が必要だね」


 アカリは、分厚い手袋を着けて私から溶岩鉱石を受け取る。


「温度が下がる気配がない。一定の温度を保つ鉱石って事かな」

「使える?」

「色々と調べないと分からないかな。でも、機械人形には使えなさそう」

「そうなんだ。でも、マグマの方は使うんだよね?」

「うん。ちょっとした実験でね。上手くいけば、機械人形の動力を改良出来るかもしれないんだ」

「改良するとどうなるの?」

「出力が上がると思う。その結果、どうなるかはよく分からないけどね。通常の動力も試した事ないから」


 出力が上がると聞いて、真っ先に思い付くのは力が上がるとかだ。戦闘とかで使えるようになるのかな。


「この子はお手伝い型みたいだから、戦闘能力とかにはならないみたいなんだけどね」

「あ、そうなの?」


 こっちの思考を読んだかのようにアカリがそう言った。まぁ、アカリなら読んでいてもおかしくは無いと思うけど。それくらい付き合いが長いし。


「うん。この子のコアは、戦闘用に作られてないみたい。軽く分解してみたら、判明したんだ。出来るのは、生産の手伝いと農業とかの手伝いをしてくれるみたいだよ」

「へぇ~……じゃあ、ギルドエリアとかでの活動が主になるんだ。まぁ、そっちの方が有り難いかもね。私達の負担も減るだろうし。まぁ、レイン達が手伝ってくれているから、そこまで困っていないけどね」

「もしかしたら、もっと有り難いかもしれないよ。取り敢えず、来週には完成すると思う」

「そうなの? じゃあ、楽しみにしてる」


 ギルドエリアの住人が増えるみたいだ。色々な事を手伝ってくれるみたいだから、私もだけど、アカリも助かりそうだ。


「そういえば、さっき戦闘用に作られてないって言ってたけど、戦闘用に作られた機械人形もいるの?」

「一応、本には書いてあるよ。一応、この子で素体の構造とかも把握出来たから、作れなくはないよ。時間は掛かるけどね」

「そうなんだ。さすが、アカリだね」


 生産の自由度もかなり上がっているみたいなので、構造を見て覚えただけでも、アカリなら作れるという事だと思う。戦闘用のコアの作り方をどうやって知ったのかは分からないけど。


「まぁ、皆の協力があってこそなんだけどね」

「皆って、フラムとか?」

「うん。精霊の皆やヒョウカちゃんとかだね。本当に助かってるよ」

「皆、協力的だからね


 皆がアカリの作業を手伝ってくれるから、アカリの生産の幅が広がったって感じなのかな。私がテイムした子達だけど、アカリにも積極的に手助けをしてくれるので、本当に助かっている。おかげで、私にも防具とかの恩恵が返ってくるわけだしね。

 何はともあれ、機械人形が完成するのは楽しみだ。

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