第349話 火山エリアの探索
朱雀を見送った後、ニクスとフラムと一緒に火山エリアの探索に移る。マッピングをするために、蝙蝠を出してみたけど、即座に燃えて消えてしまった。熱に耐性を持っていないと、炎上ダメージを受けてしまうみたい。なので、火属性が付きそうな素材を探してみたけど、良さげな素材は見当たらなかった。
「素材のほとんどをギルドエリアに置いてるしなぁ。仕方ない。普通に探索するかな」
『何か来るぞ』
「へ?」
フラムが報告してくれた直後に、【索敵】にモンスターが反応した。モンスターの形的に蜥蜴みたいな感じだ。背中に小さな山みたいなのがあるから、ヒトコブラクダみたいな感じだ。
「私が吸血したいから、拘束をお願い」
『分かった』
『キュイ』
モンスターのいる方向に歩いていくと、背中に穴の空いた岩を背負った蜥蜴がいた。イラプションリザードという名前のモンスターは、私に気付くと背中の岩から溶岩を飛ばしてきた。その溶岩は空中で止まって、イラプションリザードに降り注ぎ、その足に纏わり付く。纏わり付いた溶岩は、冷えて固まりイラプションリザードが動けなくなった。どうやら、フラムが熱を吸収する事が出来るらしい。
そうして動けなくなったイラプションリザードに噛み付いて、血を吸う。イラプションリザードの血は、いつもの味だけど沸騰した水を飲むみたいに熱かった。雪武者や雪鬼とは正反対の血だ。イラプションリザードは、身体を捻って冷えた溶岩から足を引き抜こうとしている。でも、その前に血液を飲み干して倒した。
イラプションリザードからは、【噴火】のスキルを手に入れた。スキルを確認しようとしたら再びイラプションリザードが接近してきたので、今と同じ方法で倒し、【熱血】のスキルも手に入れた。
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【噴火】:身体から溶岩を噴き出す。
【熱血】:血液の温度を上げて、蒸発させる事が出来る。控えでも効果を発揮する。
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やっぱり【冷血】の反対のスキルを手に入れた。血液の強化が出来るのは嬉しい。その後、炎の羽を生やした蝙蝠とマグマで構成されたスライムと戦った。蝙蝠はファイアバット。スライムはラヴァスライムという名前だった。ファイアバットは、羽の炎をフラムが消して空を飛べなくさせたところを吸血し、ラヴァスライムは身体全体がマグマで出来ているので、直接動きを止められたので、そのまま飲み込んだ。ラヴァスライムは、本当に口の中が焼け付くかと思った。【熾天使】を持っていなかったら、大ダメージになっていたと思う。そう考えると【熾天使】様々だった。
手に入れたスキルは、【炎翼】だけで、他は既に持っているスキルか進化元のスキルだった。
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【炎翼】:自身が持つ翼系スキルに炎を纏わせる事が出来る。炎系スキルの威力を上昇させる。控えでも効果を発揮する。
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私の炎系スキルを強化出来るみたいだ。【神炎】の強化に繋がるから、結構な頻度で使いそうだ。因みに、ここまでの戦いでニクスは一度も戦闘をしていない。拘束には自信がないみたいだ。まぁ、【支配(火)】を持っているフラムが向いているというのが大きいかもしれない。私よりも炎を操るのが得意だし、その派生で熱すらも操れるみたいだし。
私が持っていないスキルがなくなったところからの戦闘では、かなり活躍した。【矮小化】を解いたニクスは、ファイアバットを噛んで倒したり、イラプションリザードが耐えられない温度の炎で倒したりと、結構強い。
フラムの方が精霊というだけあって、普通に強い。火山エリアという環境下では、フラムの強さがよく分かる。地面から溶岩を噴き出させていたし。
「フラムは、この下のマグマまで感知出来るの?」
『出来るが、中には何も無いぞ』
「まぁ、マグマの中だもんね。でも、マグマ溜まりに空洞とかはないの?」
『あるにはある。だが、そこまで安全に向かえる道はない。マグマの中を通る道だけだ。それに、マグマ溜まりの中には陸地は無さそうだ。行っても意味ないと思うぞ』
「まぁ、それなら確かにね。何かあったら言ってね」
『ああ』
モンスターを倒しながら、火山エリアを探索していく。火山エリアには、草すら生えておらず、完全に不毛の大地という感じだった。それと探索をしていて気付いたけど、火山は複数あるようで、煙を出している山がいくつもあった。
複数の火山を探索するのが、このエリアの醍醐味みたいだ。一発でフラムとニクスがいる火山を当てたのは運が良かったみたい。
そして、複数ある火山の一つの麓で、街を見つける事が出来た。街の中にニクスがいたら、絶対に大騒ぎになるので、一旦ニクスとフラムをギルドエリアに帰した。外でなら、まだ目撃者の数も抑えられるので、あまり気にしないけど。フラムの方は、普通の人には見えないから良いとも思うけど、念のために帰ってもらった。
街の名前は、ヴォルケイノタウンというらしい。それに、家は全部石で出来ているみたい。そもそもエリア内に木材がないのと木材で作ったら燃えるかもしれないからとかかな。
住人達は、ずんぐりむっくりな身体をしている。それに、男性の多くは長い髭を生やしていた。ファンタジー作品によく出て来るドワーフの姿そのものだった。つまり鍛冶師の聖地みたいな場所って事だ。
「私には、あまり関係ない場所かな。アカリに教えてあげよう」
アカリは【鍛冶】系統のスキルを持っているので、もしかしたら、ここで特別なクエストとかを受けられるかもしれない。まぁ、アカリがここまで来るのには、時間が掛かるかもしれないけど。
一通り街の中を探索してみたけど、【心眼開放】でも見つけられるものはなかった。そこそこ良い時間になっていたので、アカリが修復してくれている機械人形の様子を見にギルドエリアに戻る。
ギルドエリアに転移してきたら、すぐにニクスが肩に留まった。
「私の肩が気に入ったの?」
『キュイ』
返事をしてくれたので、本当に肩が気に入ったらしい。だけど、すぐに飛び立っていった。気に入ったけど常駐する程ではないらしい。飛んでいった方向が世界樹の方向だから、世界樹が一番って感じかな。私には挨拶をしにきただけみたい。
ニクスを見送ってフラムを探しながらアカリの作業部屋に移動する。
「アカリ……って、フラム。ここにいたの?」
アカリの作業部屋に入ったら、アカリの他にフラムの姿があった。フラムは、アカリの炉に火を供給している。
『火の気配を感じたからな』
「それでアカリを手伝ってくれたんだ。ありがとう」
フラムの頭を撫でてあげると、皆みたいに喜びはしなかったけど、普通に受け入れてくれた。
「フラムちゃんは、どういうところに住みたいの?」
アカリが住みたい場所を訊く。住居の用意も私達がやらないといけない事だから。ニクスの場合は、勝手に世界樹に居付いたみたいだけど。
『ん? 私はどこでも良いぞ』
「火の中の方が落ち着くとかはないの?」
『どちらかといえば落ち着くな』
「じゃあ、火がある場所を作ろう。アカリ、何かある?」
「う~ん……キャンプファイヤーくらい」
「そんなものがあるんだ……じゃあ、それで。畑から離れた場所にお願いね」
『私なら火の粉が飛ぶ方向を選べるが、遠い方が安全だろうな』
「オッケー。じゃあ、ちょっと離れた場所に作るね」
「お願い。人形の方は?」
フラムの居場所も決まったところで、本題に入る。
「うん。見た目だけは整ってきたよ」
アカリが指を指した方向には、機械人形が立っていた。立っている理由は、機械人形専用のスタンドを作って支えているからだ。その機械人形は、内部機関が露出している箇所がなくなり、綺麗な裸の機械人形になっていた。女性型なのでささやかながら胸も膨らんでいる。
「やっぱり、見た目はリアルな肌だけど、感触は硬いね」
「うん。質感をリアルな肌に寄せるのは、ちょっと厳しいかも。あれからも色々と考えてみたけど、強度的な問題でね」
「そっか。まぁ、それは仕方ないか。後は何が必要なの?」
「内部機関の修復。特に擬似心臓が重要かな。それでね。ハクちゃんの血を分けてもらいたいんだけど、大丈夫かな?」
「ん? 全然良いけど」
私は瓶の中に血を出していく。無限にあるし、大量に出しても何も問題は無い。
「これってアイテム化するの?」
「多分、この瓶の蓋を閉めたら……ほら! 何か名前が変だけど」
アカリがそう言うので、自分でも確かめてみたら、始祖の混合血液となっていた。色々な血が混合しているからかな。始祖だけの血液だったら、始祖の血液になっていたのかもしれないけど。
「でも、これを何に使うの?」
「機械人形のガソリンみたいな感じかな。ハクちゃんの血が一番パワフルだと思うから」
「まぁ、確かに」
機械人形の修復は着々と進んでいる。それに、ニクスとフラムの居住場所も決まった。後は、来週のイベントに備えて、師匠とセラフさんのところで稽古を受けつつレベル上げをする感じかな。
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