第348話 火山エリアでの予想外の出会い

 次の土曜日。平日の間は、バイトと軽くレベル上げをしたくらい。後は、アカリが修理している機械人形の様子を見たりしたくらいだ。その平日の間に、第七回イベントのお知らせが届いていた。来週の日曜日にソロのバトルロイヤルをするらしい。テイムモンスターの召喚も禁止だから、正真正銘ソロで挑む事になる。私は出る予定だけど、アカリは、機械人形の修理をしたいから出ないみたい。アク姉やフレ姉達は出るつもりらしいから、激しい戦いになりそうだ。今度は反転物質を出さないようにしないと。

 イベントという目標が出来たので、スキルのレベル上げを頑張らないといけない。ただ一週間も時間があるので、今日は南の火山エリアに行ってみる事にした。何故火山エリアかと言うと、私が唯一仲間にしていない火精霊を仲間に出来る可能性があるからだ。どこかに祈りの霊像があれば良いのだけど。

 鉱山エリアから火山エリアに転移すると、急に熱気が身体を包んだ。


「あっつぅ……砂漠とは違う感じかも」


 砂漠は太陽光による暑さだったけど、ここは近くに熱源がある事による暑さに感じた。

 正面には煙を出している火山がある。あの火山の近くに行ったら熱によるダメージになりそう。まぁ、私は【熾天使】の効果でダメージにならないけど。防具の方も【竜の護り】があるから、こういう環境には強い。


「さてと、一番怪しいのは火山の中かな。皆には過酷な環境だろうし、一人で探索しなきゃ」


 全体的な探索は、また今度に回して祈りの霊像を探す事にする。無いなら無いで、火山エリアの探索にはなるから、私に損はない。【熾天使翼】を広げて、空を飛び、火山まで移動する。火山に近づくにつれて暑さが熱さがに変わっていく。火口付近まで来ると、身体の表面が炙られているかのような感覚だ。でも、ダメージはないので、そのまま火口の中に入っていく。火口の奥にマグマが見えてくる。


「さすがに、ここは普通のプレイヤーも来られないだろうなぁ。ん?」


 内側の壁を見て、祈りの霊像がないか探していると、少し出っ張った部分に霊像が立っているのを発見した。


「おっ、幸先が……」


 幸先が良いと言おうとした瞬間、マグマの方に目が行き、そこにあった鳥の頭と完全に眼が合った。それと同時に、私の血液の中から一冊の本が飛びだしてきた。海洋エリアで見つけた宝箱から得た本だ。スキル本になっていたけど、何のスキルか分からず、スキルを得る事も出来なかった。それが突然飛び出してきたので、慌てて掴み取る。


「何が……【神獣使い】?」


 唐突にスキルの書に名前が付いた。


『条件を満たしました。【???】の書を【神獣使い】の書に書き換えます。【神獣使い】の書により【神獣使い】を強制的に収得します』


 スキル本が変わったと思ったら、強制的に収得させられた。ランク4のスキルだったので、普通に収得出来たから、そこは良かった。


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【神獣使い】:神獣に属するモンスターをテイムする事が出来るようになる。控えでも効果を発揮する。


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 【神獣使い】を手に入れた瞬間に、マグマの中から大きな鳥が出て来た。私の身長よりも遙かに大きい。一瞬、この前会った玄武の仲間である朱雀かと思ったけど、名前はフェニックスだった。

 フェニックスは、私と目線を合わせると、ジッと見てくる。攻撃の意思はなさそうだ。まるで、ヒョウカの時と同じだ。違うのは、私の本が飛び出して、スキルを収得させられた事くらいかな。


『フェニックスがテイム可能です。テイムしますか? YES/NO』


 これは当然YES。名前を付ける段階になったところで、少し考える。


「う~ん……ニクスで」


 ニクスと名付けたフェニックスのスキルは、こんな感じだった。


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ニクス:【矮小化】【魔導】【溶岩魔法才能】【神炎息吹】【火炎武装】【火炎翼】【飛翔】【超速再生】【不死鳥】


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 スノウと同じく【矮小化】を持っている。小さくなったニクスは、現実のオウムくらいの大きさになった。さすがに小さくなりすぎなのではと思ったけど、ニクスは問題ないようで肩に留まる。


「何か……私って特殊なテイムしかしてなくない……? 普通にテイムが出来ていないのは運が良いのか悪いのか……まぁ、条件の一つに数えられる餌付けをしてないってのもありそうだけど……」


 私の予想では、ニクスをテイム出来た理由は、【熾天使】もしくは【神炎】が関わっていると思う。

 それは置いておいて、本来の目的であった祈りの霊像の元に向かう。ニクスは、ずっと私の肩に乗ったままだった。


「さてと……どうしようかな」


 この熱さだと、レインの水でも蒸発してしまう。でも、聖なる力でどうにかするしかない。


「【神炎】でどうにかなるかな」


 祈りの霊像を【神炎】で包む。これを受けても祈りの霊像は壊れなかった。そして、祈りの霊像に罅が入り、中から赤い髪と赤い目をした少女が出て来る。ちょっとだけ目付きが悪いのでフレ姉みたいだ。


『私を喚んだのは、あんたか。名前をくれ』

「そうだなぁ……じゃあ……」


 一瞬頭の中にフレイって名前が出て来たけど、それはフレ姉と同じ名前なので無しだ。フレ姉も自分の名前にある火のフレイムから取ったって言っていたから、同じ名前が出て来ても仕方ない。

 だから、そこから派生した名前を思い付いた。


「フラムでどう?」

『フラムか。良い名前だな。よろしくな、姉御』

「うん。よろしくね」


 フラムのスキルも確認しておく。


────────────────────


フラム:【魔導】【溶岩魔法才能】【支配(火)】【無限火】【火精霊】【精霊体】【業火】


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 やっぱりフラムも【神炎】までは持っていない。でも、私よりも炎の扱いは上手なはずなので、戦力には違いない。


『それで、ここからはどうするんだ? 姉御が何をしていたのか分からないから教えてくれ』

「一番の目的は、フラムだったから、後は火山エリアの探索かな。そうだ。フラムは、このマグマの中は分かる?」

『分かるが……マグマの中だから何もないぞ?』

「……それもそっか。じゃあ、外に出て探索しよう」

『ああ』

『キュイ』


 ニクスの鳴き声が思ったよりも可愛かった。【熾天使翼】で飛んでいくと、フラムも一緒に飛んで来た。ニクスも飛べるはずだけど、私の肩に留まったままだ。楽がしたいとかなのかな。

 皆で火口から外に出ると、その遙か上空を赤い鳥が空を飛んでいた。ニクスに似ているけど、赤みはあっちの方が強いし、ニクスが飛ぶときは羽に炎を纏っていた。でも、あの大きな赤い鳥は、普通の羽のままで飛んでいる。


「朱雀……」


 青龍、玄武と同じ仲間である朱雀は南を守護する存在だったはず。だから、ここを飛んでいてもおかしくはない。朱雀は、私を見た後に、玄武と同じく首を横に振って、そのまま南へと飛んでいった。やっぱり東方の守護者である私は、他の方角の守護者にはなれないみたいだ。

 これは予想だけど、『東方の守護者』のクエストが本格的に始まるのは、それぞれの守護者が決まってからなのだと思う。私自身が青龍に認められた理由が分からないので、他の四神に認められる理由は分からない。

 クエストが始まるのは、まだまだ先になりそうだ。

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