第20話 イベント開始前
それからイベントまでの期間は、ジャングルで黒帝ゴリラと戦いながら、ブラックレオパルドを探して回った。フォレストリザードと戦うよりも、黒帝ゴリラとブラックレオパルドの方が修行になる。パワー重視の黒帝ゴリラと速度重視のブラックレオパルドを相手にすれば、本当に良い修行になる。
でも、ブラックレオパルドとは、一回しか遭遇出来なかった。初回で出会えた時は、本当に運が良かったみたい。
ただ、黒帝ゴリラとの戦いで、良い修行は出来たと思う。パワー系への対処の仕方だけじゃなく、スキルレベル上げという意味合いでもだ。
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ハク:【剣Lv22】【短剣Lv18】【吸血Lv26】【HP強化Lv15】【物理攻撃強化Lv14】【速度強化Lv15】【脚力強化Lv24】【夜霧Lv4】【執行者Lv16】【言語学Lv3】
控え:なし
SP:21
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スキル構成に関しては、あれから全く変わらない。みず姉に、防御強化系のスキルを取った方が良いかもと言われたけど、今は、まだ取らないようにしている。回避主体のスタイルという事もあるけど、まだ自分がどんなスキルを取るか決めていないので、使いたい時にスキルポイントが足りなくなるのが嫌だからという理由だ。
それと、十分くらいだけ図書館にも脚を運んだ。二冊くらい読んだけど、正直あまり読む事が出来なかった。というのも、スキルがあれば何でも読めると思ったら、一部の文字しか読めなかった。
多分、みず姉も、全然読む事が出来なくて、諦めたんだと思う。確かに、これを読むには根性がいるし、本に書かれている事も、あまり重要そうな感じがしなかった。私が読んだのは、料理のレシピ本だったし。
でも、ちょっと気になるので、時間を見て、図書館には通ってみようとは思う。本当に何もないか気になるし。
そんなこんなで、イベント待ちの為に、ファーストタウンの広場にいた。アカリは参加しないと言っていたので、ここにはいない。
「アク姉はいないかな?」
イベント開始まで暇なので、知り合いと話して暇つぶしをしたいと思い、アク姉を探す。すると、すぐにアク姉を見つける事が出来た。アク姉は、赤い髪の女性と話していた。誰だか分からないので、取り敢えず話が終わるまで待っていようと思っていたら、アク姉の方から私を見つけて、駆け寄ってきた。
「ハクちゃ~ん!」
アク姉が私を抱きしめているところに、さっきまでアク姉と話していた赤い髪の女性が近づいてくる。
「何だ。こっちでも同じ名前なんだな。まぁ、それは私もアクアもか」
その女性の名前は、フレイとなっていた。その名前で、この会話から、私は相手が誰だか気付いた。
「かー姉?」
「馬鹿。人が多い時は、プレイヤーネームで呼べ」
「ごめん。フレ姉」
フレ姉のアバターは、赤い髪をポニーテールにした黄色い眼という外見をしている。服装は、赤を基調とした服で、どちらかというと男性が着そうな服を着ている。武器は、槍を使っているみたい。
「姉さん。ピリピリし過ぎ。ハクちゃんが怖がるでしょ」
「お前はのほほんとし過ぎなんだよ。全く。武器は、短剣か。ハクにしては、珍しいな。今回は、片手剣だと思ってたが」
「うん。【吸血】が使いやすいようにね」
「エグいスキルを手にしたな。初期か?」
「うん」
「そうか。まぁ、こいつの料理を食っていたら、耐えられるのも頷けるな」
フレ姉は、そう言いながら、アク姉の頭をボンボンと叩く。アク姉は不服そうな顔をしていた。
「てことは、あの掲示板もハクのことか。あまり目立つような事をするなよ。後で、始末しねぇとな」
「始末って?」
「お前の素性を探ろうとしている馬鹿がいたからな。PvPでボコって、舐めた真似をさせないようにする」
「えぇ~……」
フレ姉が、中々にエグい事を言った。PvPでボコるって、実際に出来そうだし。これも全部私の為に言ってくれている事だ。フレ姉は、私やアク姉がトラブルに巻き込まれる事を嫌う。長女だから、妹を守るのは当たり前と言ってくれるけど、そこそこ過激な事もするので、そこは心配になる。
「あまり恨みを買うような事はしちゃ駄目」
「まぁ、任せろ」
「う~ん、こういうときのフレ姉って、信用出来ないからなぁ」
「本当にね。姉さんは、加減を知った方が良いと思う」
「お前の料理もな」
「今、料理は関係ないでしょ!?」
アク姉がフレ姉に怒る。いつもこんな喧嘩ばかりしているけど、私とは全然喧嘩をしてくれないので、少し羨ましくもある。まぁ、喧嘩しない事に越した事はないけど。
「まぁ、そんな事は置いておくとして、久しぶりに、ハクとPvPが出来るんだ。遠慮せずに掛かって来い」
「フレ姉は、ゴリラより強そう」
「黒帝ゴリラの事を言ってくれているのは分かるが、褒め言葉に聞こえないぞ」
「ゴリラ姉さん……ぷっ……」
アク姉が呟いてから吹き出すと、フレ姉が笑顔のままアク姉の頭を叩いた。街の中は、ダメージを与えたりする事が出来ないので、安全ではあるのだけど、ノックバックなどはあるので、アク姉はヘドバンのように前のめりになった。
「姉さんは、すぐに手が出る!」
「お前は、すぐに口に出るけどな」
「むきー!!」
「自分の口からそう言う奴は、お前だけだろうな」
「姉さんのバーカ!」
「お前は、ガキか」
そんないつも通りの姉妹のやり取りをしていると、私達の目の前にウィンドウが現れた。
『イベントエリアに移動します。移動後、一分経過でバトルロイヤル開始となります。それまでは、その場から動けません』
ウィンドウには、そう書かれていた。フレ姉やアク姉と過ごしている内に、イベント開始の時間になったらしい。フレ姉とアク姉も喧嘩を止めて、ウィンドウをジッと見た。
「始まるな」
「最後にハクちゃんを抱きしめよ!」
「うぶっ!? フレ姉もアク姉も気を付けてね」
最後に、フレ姉とアク姉が、私の頭を撫でると、視界が白く塗りつぶされる。そして、戻って来た視界には、いつも来ていた東の森のような場所が映った。
「舞台は、森って事かな」
思わず一歩踏み出そうとすると、身体が動かない事に気が付いた。これが、さっきのウィンドウに書かれていた身動きが取れない状態というものだと思う。首だけは動かせるので、周囲を見回す。
やっぱり東の森っぽい場所だ。でも、イベントエリアと書かれていた事から、ここは東の森とは別の森のはず。まぁ、同じ森でも、土地勘がある訳でも無いので、一緒だと思うけど。
取り敢えず、周囲に人はいない。始まってすぐに、戦闘が始まるという事はなさそう。
そんな事を考えている内に、ウィンドウが出て来て、十からカウントが始まる。
「さてと、どういう風に動こうかな。まだ、スタイル的には、確立しているわけじゃないし、隠れながらいこっと」
イベントの動き方も決めたところで、ウィンドウにスタートの文字が現れた。同時に、身体が動くようになった。バトルロイヤルイベントが始まった。
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