第14話 初めてのパーティー
アカリと一緒に歩いていると、さっきよりもモンスターが襲い掛かってきていた。そのほとんどをアカリが、即座に倒していた。
「【認識阻害】の効果は、一人限定って事?」
「防具に付いているものだしね。私が、ハクちゃんの外套の中に入ったら、効果が出るかもしれないよ」
「ちょっとやってみる?」
「良いかも」
という事で、私の外套の中にアカリが入って歩く事になった。アカリが抱きつく形なので、ものすごく歩きにくい。でも、モンスターが襲ってくる事は、格段に減った。
「防具を着ている人に効果が発揮するんじゃなくて、防具の内側に効果が発揮されるって事かな?」
「だね。追加効果の適用範囲か……もう少し広い範囲で調べてみた方が良さそう」
「何か手伝える事があったら、言ってよ? 協力出来る事だったら、いつでも協力するから」
「うん。その時が来たら、お願いするね」
そう言って、アカリが離れる。【認識阻害】の確認も出来たからだ。そして、フォレストリザードのところに来ると、アカリが空中をタップする。アカリの目の前に出たボスエリア移動のウィンドウを操作したのだと思う。あのウィンドウは、自分にしか見えないみたい。
視界が光に包まれて、ボスエリアに転移した。いつもと違うのは、横にアカリがいる事だ。
「アカリは、普段どんな戦い方をしてるの?」
「横から攻撃する事がほとんどかな。正面は噛み付き、背後は尻尾の攻撃があるからね」
「目は潰さなかったの?」
「片目は潰すかな。そうなると、楽だから」
「やっぱり、定石?」
「β時代からね」
私もやっていた戦法は、やっぱり定石だった。まぁ、慣れたプレイヤーなら、目潰しは結構試すだろうから、当たり前かな。
「不意打ちは、ハクちゃんの方が成功しやすいだろうから、ハクちゃんが一撃入れた後に、私も突っ込むね」
「オッケー。じゃあ、あいつの左目を潰すから」
「了解」
私が先に突っ込む。それに気付いたフォレストリザードが、起き上がろうとするけど、既に私の攻撃範囲だ。フォレストリザードの左目を斬り裂く。それを確認する前に、フォレストリザードの左側に回り込んできたアカリが、脇腹に片手剣を深々と刺す。
「【ラウンドスラッシュ】」
アカリは、その場で回転して、円状に周囲を斬る。フォレストリザードにも深々とした傷が半円状に付いている。そのアカリの腰を抱えて、後ろに退く。さっきまで私達がいた場所に、フォレストリザードの尻尾が通過する。
尻尾に私達を殴った感触がなかっため、フォレストリザードが、私達の方を向こうとする。でも、私達は既に左側に回り込んでいるので、フォレストリザードの視界には映らない。
ここからは、私が倒した時と同じように左側から攻撃をし続けて倒した。私が技を使った時には、アカリが掴んで後ろに退かせてくれるので、安全マージンが大きく取れた。
ただ、そうして得られたドロップアイテムは、一人で倒した時よりも減っていた。
「素材集めなら、ソロが得か……」
「安全とか楽とかの面を考えるとパーティーを組んだ方が良いけどね。今回はいないからあれだけど、タンクとかいたら、フォレストリザードくらいの攻撃は防げるからね」
「リスクのあるソロか報酬が減るパーティーかで迷う人がいそう」
「ハクちゃんは、いつもソロだよね」
「まぁ、基本的にはね。ソロの方が自由に動けるし」
私がソロで行動する理由は、誰かに合わせるのが面倒くさいのと、余計なトラブルが嫌だからだ。だから、パーティーを組むとしても、知り合いとじゃないと組まない。
「ねぇ、フォレストリザードの血がドロップしてない?」
「あるけど」
「フォレストリザードの舌とかと交換して」
「ああ、【吸血】?」
「そう。回復出来るし、もしかしたら、これだけでスキルが手に入るかもしれないから」
「そこら辺の検証はされてなかったかな。あっ、【吸血強化】が、スキル獲得率に影響しているかもだから、そこら辺が分かったら教えてくれる?」
「うん」
【吸血強化】が、スキル獲得に影響するとしたら、かなり有り難い。【夜霧】以来、一度も【吸血】によるスキル獲得は出来ていない。最初の【脚力強化】と【夜霧】は、本当に運が良かっただけだったのだと分かる。
「それじゃあ、鱗と交換して」
「オッケー」
鱗四十枚と血二個を交換した。
「四十枚だと、私の方が貰いすぎなんだけど……」
「じゃあ、いつものお礼も含めてって事で」
「ハクちゃんが良いなら、私も良いけど」
「良いの。私にとっての血は、結構重要なんだから。それより、ここからどうする? しばらくフォレストリザードとは戦えないけど」
ボスとの再戦は、二時間のインターバルがあるので、残り出来る事と言えば、森でコボルト達を狩るくらいだ。でも、アカリは別の提案をした。
「それじゃあ、街の案内をしてあげる。色々と知らないところが多いだろうから」
「確かに……もうすぐ一週間経つけど、街の事は、全然知らないや」
「それじゃあ、決定ね。久しぶりのハクちゃんとのデートだ」
「この前のカフェは?」
「この前のは、お茶会だもん」
「デートだから、色々と買い物もね。お金あるでしょ?」
「言っても二十万くらいだよ?」
「二十万もあれば、十分。実用品じゃない服は安いから」
防具として使える服は、強固に作るから、その分高くなるけど、見た目重視の服は、現実みたいな値段らしい。某量販店くらいの値段がいいな。
「ハクちゃんに似合う服を選んであげるね」
「まぁ、アカリの見立てなら信頼出来るけど、あまり派手なのはやめてよ?」
「ゴスロリ!!」
「それは派手だと思う……」
「ハクちゃんのゴスロリ似合うのになぁ。現実でも似合ってたし」
「普段着として、着る機会なんてないけどね」
「じゃあ、今度遊びに行く時に着てきて」
「絶対に嫌だ」
アカリとか姉に見せる分には、全然気にならないけど、不特定多数の人達に見られるのは、絶対に嫌だ。
「え~、じゃあ、うちで着替えて貰うのは?」
「それならいいけど」
「やった! 白ちゃん用の可愛い服を作ったから、着て欲しかったんだ」
「また? 何着作ってるの? 私専用の洋服屋が開けるね」
「それ良いかも!」
「利益にならないからやめな」
普段は、私の行動に呆れたりするアカリだけど、こういうところに関しては、私の方が呆れてしまう。服作りが好きなアカリは、私の服を大量に作っている。本当に、これまで何十着も作っているので、そこから生産職への興味が出ているのかもしれない。
私達は、ファーストタウンで、色々な服屋と飲食店を回ってデートした。おかげで、十万分の服を購入する事になってしまったけど、アカリが楽しそうだったから、良かった。
アカリエの他の防具屋にも初めて入ったけど、本当に見た目重視のもの防具だけを売っている店が結構あった。
普段の生活では着ないような服を着られるという点で、一定以上の需要があるのだと思う。アカリも触発されたのか、デートが終わってすぐにアカリエに戻っていった。いつの日か、一人でファッションショーをする事になるのだと思う。
その時は、ちゃんと受け入れて、沢山の服を着よう。アカリも喜ぶし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます