第13話 防具の効果
フォレストリザードのボスエリアに転移した私は、その場で止まる。フォレストリザードは、森が開けている場所から出て来ないので、転移直後の場所で止まっていれば、安全は確保出来る。
「移動速度が、結構上がってた。【速度上昇+】の効果は、結構分かりやすいかも。【認識阻害】も分かりやすかったかな。モンスターへの不意打ちが成功しやすくなったし。後は、【吸血強化】か……こっちは、平原に戻ったら確認しようかな。フォレストリザードで、確認出来たら御の字って考えておこう」
準備運動代わりに、その場でジャンプする。この時に、少し高くジャンプ出来る気がするけど、これは【脚力強化】の効果なので、装備は関係ない。
「よし! 防具の性能を十分に試したいけど、壊したくないから、故意にダメージを受ける事はしないでおこう。これの確認は、ダメージを受けた時にしようっと」
私は、フォレストリザードがいる場所に向かって駆ける。フォレストリザードは、いつも寝た姿勢でいる。いつもは、私が近づいたら、すぐに気が付くけど、今日はいつもよりも気付くまでに時間があった。これも【認識阻害】の効果だと思う。モンスター相手には、結構使える追加効果みたいだ。
フォレストリザードの近くで上に跳び、フォレストリザードの目を斬る。何度か戦って気が付いたけど、モンスターの状態異常には、失明というものもあるみたい。私自身、まだ目を怪我してないから、プレイヤーにも実装されているかは分からない。暗闇とほぼ同じ効果を持つので、相手から私の姿が隠れる。今は、片方の目だけを失ったので、片側の視界が潰れた事になる。
そのまま、横をすり抜けていく過程で、何度も短剣を振う。
「【トリプルピアース】」
三連続の高速の突きが、フォレストリザードの脇腹に深々と刺さる。これは【短剣】スキルが10レベルで覚えた技だ。通常の突きよりも、遙かに速く三回攻撃出来るのは良いんだけど、硬直時間が一秒あるので、下手に使うと隙になる。技の多くは、発動後に硬直時間があるので、多用するのは危ないと言われている。実際、私もそう思う。
フォレストリザードの反撃が来る前に、一旦離れる。私が離れた直後に、私がいた場所にフォレストリザードの尻尾が振られる。本来なら、硬直時間中に横にタックルなどをしてくるけど、視界を失った後だと、フォレストリザードは尻尾による広範囲攻撃に頼る傾向がある。
でも、真横にいる分、尻尾を振うまでに時間が掛かる。それは、硬直時間から脱するのに十分な時間だ。これで、フォレストリザードのHPは四割削れた。
ここからは、技は使わずに胴体の周りを動き回りながら、攻撃を続ける。もう片方の目を潰す事も選択肢にあるけど、それをすると、ぐるぐると永遠に尻尾を振り続けるので、片方の視界を残しておいた方が、行動が読みやすい。
フォレストリザードの攻撃を避けながら、少しずつ削っていって倒した。
「うん。良い感じ。動く速さが上がったから、攻撃も避けやすい。後は、【吸血】の確認をしに行こっと」
平原に移動した私は、早速ホワイトラビットに【吸血】を使う。すると、いつもよりも多い量が口の中に入ってくる。
「うぷっ……!?」
いつもの量と考えていた私は、思わず吐き出しそうになった。ギリギリで耐えて、飲み込んでいく。すると、ホワイトラビットのHPがみるみる減っていった。前までの倍の速度だ。
「これは……有り難い反面苦しいなぁ……」
一気に血が入って来て、血の味と匂いが一気に広がるので、苦しさが倍になるけど、その分HPを削る速度が上がる。私の忍耐力が試される。
「まぁ、これくらいなら、来ると分かれば耐えられるかな。スライムを吸う速度も上がるから、食べるのが捗るなぁ」
「うわっ……本当に食べてる……」
「!?」
突然背後から声を掛けられて、肩を跳ねさせた。後ろを振り返ると、いつもとは違い、スカートでは無くズボンを穿いたアカリがいた。
「びっくりした……アカリか……何してるの? 散歩?」
「モンスターがいる場所で、散歩なんてしないよ。ここも夜霧の執行者が現れるから、本当に安全なわけじゃないし」
「あっ、そうなんだ」
「ここら辺に、ハクちゃんがいるかなって。本当に、スライムを吸ってるんだね」
アカリは、私がスライムを吸血しているのを見て、少しだけ唖然としていた。
「食べてみる? 味の無いわらび餅って感じ」
私に渡されて、アカリがスライムを持つ。
「……ダメージ受けるんだけど」
「吸えば……って、【吸血】ないのか」
「ダメージを血で補給するから、無限に出来るわけね。ハクちゃんって本当に破天荒だよね」
「えぇ~、絶対に、私以外にもやった事ある人いるよ。それより、早く食べた方が良いんじゃない?」
「ああ、そうだった。いただきます」
アカリがスライムを食べる。ぷるんと弾んで、スライムの一部が削れた。
「確かに、味の無いわらび餅だ。ゼリーっぽくもあるけど」
「そのまま全部吸えば、核が残るよ」
「そうやって核を集めていったのか。確かに、ダメージを【吸血】で治せるから、効率が良いかもね」
アカリはそう言ってから、スライムを全部食べきった。
「嫌だったら、私が食べてあげたのに。アカリって、行儀良いよね」
「スライム食べに行儀も何もないと思うけど。それで、防具はどう?」
アカリが私を探していた理由は、防具の調子を訊きたかったからみたい。
「ダメージ関連は、分からな……いや、確実に減ってるや」
普段、スライムを平然と飲み過ぎて忘れてしまっていたけど、この行為はダメージを受けるので、ここで見てみれば良かった。実際、スライムの継続ダメージを受ける量が減っていた。
「スライムのダメージって、どれ?」
「……知らないや。消化だし、魔法かな?」
「まぁ、効果が発揮しているって事だけ分かれば良いか。それと【吸血強化】だけど、吸血量が倍ぐらいに増えたよ」
「それって、大丈夫?」
アカリは、本当に心配そうな表情で訊いてきた。吸血する時の苦しみを聞いているから、追加効果を外すか迷っているのだと思う。
「うん。大丈夫。このくらいなら、耐えられるし、効率も良いから」
「それじゃあ、残しておくね。良い素材が手には入ったら、【吸血強化+】に出来るかもしれないけど……」
「……お願いします」
「オッケー。防具の調子も良いみたいだし、このままフォレストリザードを倒しに向かう?」
「あっ、でも、私、もう倒したばかりなんだけど」
「一つ抜け道があるんだ。まぁ、一人だけ得するんだけどね」
「もしかして、ソロで討伐した後、まだ討伐していない人とパーティー組んだら、行けるとか?」
「正解!」
アカリはそう言って、私の頭を撫でてくる。完全におちょくってきているので、アカリの頬を摘まんで反撃しておいた。
「それで、パーティーって、どうやって組むの?」
「フレンド欄から、パーティー申請で出来るよ。右上ら辺」
「えっと……あっ、本当だ。これで、アカリに申請して……」
「来た来た。承認っと」
「おっ、パーティー結成っと。初めてのパーティー戦だ」
ずっと一人で戦ってきたので、ちょっとだけ楽しみかもしれない。自分の戦い方も出来てきたので、パーティーでの戦いで、どこまで通用するのか知るのに良い機会かもしれない。
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