第12話 私の防具
あれから、四日経った。この期間は、ずっとレベル上げに費やした。おかげで、少しだけど強くなれた気がする。
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ハク:【剣Lv15】【短剣Lv10】【吸血Lv24】【HP強化Lv6】【物理攻撃強化Lv5】【速度強化Lv6】【脚力強化Lv20】【夜霧Lv3】【執行者Lv10】
控え:なし
SP:14
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スキルレベルが10になってからというもの東の森のモンスターでは、スキルレベルが上がりにくくなっていた。これでも、フォレストリザードを何度か倒して、頑張って上げた方だ。
計六日間のプレイ時間としては、結構上がった方だと思う。強化系も現状必要に感じたものだけを取っている。防御面に関しては、まだどうするか考え中だ。夜霧の執行者と戦った感じでは、必要に思えるけど、フォレストリザードと戦っていると、特に必要には感じなかった。
それというのも、フォレストリザードの攻撃に反応して避ける事が出来ていたからだ。全くのノーダメージで常に倒せたわけじゃないけど、それでも三割削られただけだった。これも特に必要ないと判断した理由の一つだ。
そんな感じの日々を過ごしていた私は、アカリエに来ていた。お金も貯まったので、私の防具を買いに来たからだ。
「はい。三十万G」
三十万払っても、まだ二十万残っているので、懐は温かい。
「ちょうどだね。はい。これが、ハクちゃんの防具だよ」
受け取りメニューに、いくつかの防具が出て来る。
「『血姫の装具』?」
「うん。名前は統一してみた。言ってしまえば、『血姫シリーズ』かな。【吸血】を使うハクちゃんに合わせた名前だよ」
「へぇ~、ちょっと格好いいかも。これって、ここで着替えても大丈夫?」
「あ~……身体が光に包まれて、すぐに服が切り替わるけど、一瞬だけ下着姿になる感じなんだよね。あまり気にしない人なら、その場で着替えるけど、気になるなら、そっちに更衣室があるよ」
「なるほどね。アカリしかいないけど、お客さんが入って来たら、あれだし借りるね」
「どうぞ」
更衣室に入った私は、装備ウィンドウから血姫の装具を装備していく。装備する箇所は、インナー、上着、外套、腰、靴の五つだ。初期装備も同じ箇所だけなので、完全に入れ替える形だ。
新しい防具は、フリルがあしらわれた白いブラウスに、黒に赤い刺繍がされたベスト、黒一色の外套、太腿までの黒いショートパンツに黒のストッキング、茶色いレザーブーツだった。因みに、レザーブーツには、ヒールはないので歩きやすさ重視となっているのだと思う。
「何か、吸血鬼っぽい?」
私の見た目は、細部は異なるものの、ドラキュラの服装みたいだった。【吸血】を意識した見た目にしてくれたみたい。
更衣室から出て、アカリに自分の姿を見せに行く。
「どう?」
「うん! 似合ってるよ! やっぱり、私の腕に間違いは無かったね。本当は、スカートにしたかったんだけど、ハクちゃんは、絶対に大暴れするから、パンツが見えないようにショートパンツにしておいたんだ」
「ああ、なるほどね。ありがとう」
このゲームでは、普通にスカートからパンツが見えるみたい。そういうのを目当てにログインしてくる輩もいるのかな。
「追加効果の確認はした?」
「あっ、忘れてた」
アカリが作ったものだから、良いものなのは確実と思い込んで、名前以外確認してなかった。
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血姫の装具:吸血蝙蝠の牙と羽、密林カメレオンの皮、夜霧の鎧を織り込んだ防具。
インナー:【物理防御上昇+】【魔法防御上昇+】【吸血強化】
上着:【物理防御上昇+】【魔法防御上昇+】【吸血強化】
外套:【物理防御上昇+】【魔法防御上昇+】【認識阻害】
腰:【物理防御上昇+】【魔法防御上昇+】【速度上昇+】
靴:【物理防御上昇+】【魔法防御上昇+】【速度上昇+】
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追加効果は、装備全体じゃなくて、それぞれで付けられるみたい。
「この【吸血強化】って?」
「そのまま【吸血】を強化するって事だと思う。どんな強化なのかは、検証しないと分からないかな。因みに。【認識阻害】は、ハクちゃんの存在を認識しづらくするものだけど、そこまでの効果はないから過信しないでね。それと、腰装備のショートパンツは、ストッキングセットになったものだけど、装備画面の編集をすれば、ストッキングだけ脱ぐ事も出来るから。装備の本体はショートパンツだからね」
アカリは、私が訊きそうな事を先回りで教えてくれた。実際、【認識阻害】の方は気になっていたので、有り難い。ストッキングの方は、言われるまで、全く考えてなかった。そもそもストッキングを脱ぐ場面なんてあるのかすらも疑問だ。
「この追加効果って、こんなに付けられるものなの?」
「寧ろ、今は三つまでしか付けられないって感じかな。多分、もっと良いものを作れるようになったら、四つとかも出来ると思う。私のレベルが上がったら、そこら辺の改良もしてあげるね」
「ありがとう」
三つでも凄いと思っていたけど、実際はそこまででもないみたい。アカリとしては、もっと上を目指しているって感じかな。
「もしかして、武器の方も三つ付けられるのかな?」
「うん。そのはずだよ。多分、ラングさんは、購入者が追加しやすいようにしているんじゃないかな。さすがに、全部そうしている訳では無いと思うけど。私も、同じようにいくつかの防具は、追加効果を付けてないしね」
「ああ、なるほどね。三つ埋まってたら、替えづらいっていうのはあるもんね」
アカリの話から、ラングさんは、不特定多数に向けた装備として、血染めの短剣を作ったから、そういう配慮もしていたんだと思う。
私の装備は、私に必要になるであろう追加効果を、アカリが選んでくれたって感じだ。追加効果の種類を、まだ詳しく知らないので、こうしてアカリが付けてくれた事は、普通に有り難かったりする。
「そういえば、これのどこに夜霧の鎧を使ったの?」
血姫の装具には、金属部品が少ない。ベルトの金具などの最低限しか使われているようには見えなかった。
「繊維にして使っているからね。外套と上着、腰、靴に使ってるよ。多分、普通の布防具よりも防御力に優れているはず。ステータスが見られないから、どのくらいの違いがあるかは検証しないと分からないけどね」
アカリは、鎧を融かして、糸にして使っているみたい。インナーには使ってないから、身体に違和感はないけど、腕を回してみたりすると、ちょっとしたゴワゴワ感がある。
「まだ、素材は余っているから、改良とか直しの時に使わせて貰うね」
「うん。それじゃあ、装備も替えたし、フォレストリザードを倒しに行こうかな」
防具の効果を試すのに、フォレストリザードは、現状で一番の相手だ。
「うん。まだ夜だし、試すにはうってつけだね。何か要望があったら言ってね。裾直しと丈の調整とかなら、すぐに出来るから」
「了解」
「あっ、それと、ハクちゃんは、赤と黒だったら、どっちが好き?」
「赤と黒? 黒かな?」
「オッケー」
「これ何の質問?」
「まぁまぁ。お楽しみって事で」
アカリがこう言うって事は、自分から明かすまで、絶対に喋らないって事だ。これで、私に不利益があるかと言うと、いつもそうではないので、特に気にしない事にする。
「それじゃあ、いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
アカリに手を振って、私は東の森へと向かった。
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