パート2 罪人少女に耳かき


「ふぅ。ん、んんーっ」


「うーん。あなたに耳かきしてたら、なんだか私までお耳がムズムズしてきた」


「え、なに? 今度はあなたが私に耳かきしてくれるの?」


「えぇーいいのーっ? それじゃあ……お言葉に甘えよっかなぁ」


「はい、耳かき。じゃあお膝、失礼するね」


 膝枕に頭をのせる


「ん、おぉ。これが膝枕かぁ。なんか不思議な感覚。柔らかいような、しっかりしてるような」


「でも悪くないね。好きになる人がいるのもわかるかも」


「え? うん、初めてだよ。今まで誰にもしてもらったことないんだー」


「お父さんとかお母さん? ううん、してくれなかった」


「仲良くなかったんだ、私の家族」


「あぁもういいからいいからっ! ほら早くかきかきしてー。こっちは準備万端だからっ」


「よしっ。さぁ来い」


 耳かきをいれる


「うっ、うひゃあ。入ってきたぁ! くっ、くすぐったい」


「うぅぅっ。人に耳の中をいじられるの、変な感じ」


「ね、ねぇ。私のお耳、汚くない? いやほら、いっぱい耳垢たまってたりしたら、恥ずかしいし……」


「そ、そう? きれい? よかったー。あ、でもあんましきれいだと、あなたとしては耳かきのしがいがないのかな」


「うーん。悩ましいところだね」


 耳かきを奥に入れる


「んっ、んん! そっ、そこ敏感!」


「あっ、ああっ! だ、だめだってぇ!」


 耳かきを止める


「うぅっ、いじわる……」


「ん、そっちは終わり? わかった。じゃあ反対向くね」


「よいしょっと。おぉ、あなたのお腹が目の前に。なんか大迫力」


「じゃ、じゃあ。お願い。どうぞ」


 耳かきをいれる


「んうぅ。こっちはなんだか違う感覚。やっぱ左右で感じ方変わるんだね」


 耳の中を掻いていく


「……ねぇ、あなたはさ、怖くないの?」


「なにがって、私と一緒にいることだよ。さっきも言った通り、私は人殺し。決して許されないことをした、罪深い人間」


「そんな私と、同じ部屋にいて、しかも膝枕に耳かきまでしちゃっってさ。普通なら、こんなこと誰もやりたがらない」


「ねぇ。どうしてこんなによくしてくれるの?」


「楽しい……? 私と一緒にいて? ……うそだよ。私なんかといたって全然楽しくないよ。どうせ新しくできた施設の制度に従って、いやいややってるんでしょ?」


「ちがうの……? ほんとに、私と一緒で、楽しいの……?」


「……そっか。……そうなんだ。え、えへへ。な、なんか嬉しいなぁ。そんなこといってくれる人、生まれて初めて……」


「う、うん。ありがとう。ありがとうね」


「な、なんだか感激してきちゃった。膝枕で、耳かきされながらこんな気持ちになるなんて、ありえないな……。へんなシチュエーションだね。まったく……」


 耳かきを引き抜く


「あ、終わったの。うん、ありがと」


 膝枕から身体を起こす


「んーっ、すっきり! おかげでお耳のムズムズがなくなったよー。いやー悪いねーこんなことしてもらっちゃって」


「お礼のつもりで? ふーん。あなた、なかなか義理堅いんだね」


「それにぃ……」


 顔を耳元に寄せる


「とっても……やさしい」


 そのとき、チャイムが鳴りひびく


「おっと、どうやら交流の時間は終わりみたいだね。あなたも自分の部屋に戻らないと」


「うん、じゃあね! また今度、一緒に遊ぼうね!」


 扉が開き、また閉まる 

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