33-1:人のプライバシーは守りましょう。
彼女、というべきか、彼というべきか。ポケットに仕舞い込んだグレニールの作ったイヤリングを指先で触る。
何故グレニールは女性の姿で接触するのか。たんに接触する性別を考慮しているだけ?
でも、女性の姿を見てアドルネアも彼、と判断していた。ということは普段からもあれなわけで。
考えても仕方ない。とりあえず今は授業に集中しなくては。なんて、思ってたのに…。
なんでそんなじろじろ見て来んのよこの女は…。口が悪い?知らないわよ。
授業中にも関わらずじろじろと見てくる生徒、リアラは前を一切向かずに無遠慮にコチラを見ていた。
教師がそれに気付いたようで目が合うが首を傾げられるだけで授業に戻られた。
どういうこと。教師ならよそ見するなって注意ぐらいするものでしょ。まさか私に託したとか?え、許さないけど。
ここで振り向いたら負け。
絶対何か問い詰めてくる。朝の続きだなんて冗談じゃない。何故リアンのことを知ってるのか気になるけど身内を売るような真似、私はする気はない。
そもそも人が大勢いる場で聞いてくるリアラの常識のなさには頭を抱えたくなる。
どうやって育ったらこんななるのか。身分とか絶対関係ない。
あー頭痛い…。このまま早退したいくらいだわ。
授業が終わりざわめき立つ教室内で私よりもリアラが先に立った。
しまった。出遅れた…。
「マリアーネル様、私聞きたいことがあるんです!」
「悪いけどこの後予定があるの。またにしてください」
私は取りつく島もなくピシャリと言ってのけると席を立ちリアラを遠ざけるような方向から教室の出口を目指したが、まあ…追いつかれますよね。
「人が話があると言ってるんだから少しくらいは待つとかしませんか?」
「しませんけど?」
自己都合が過ぎる。ため息を堪えて背を向けるとちょうど振り返った先にアドルネアがいた。
「アドルネア様!」
途端に声音を変えたリアラに眉間の皺が寄ってしまったのは仕方ないだろう。
しかしアドルネアは見向きもせず、ユックを呼んだ。そして何かを耳打ちするなり私に手を差し出す。
「ルカ、行こう」
その手を取り教室を出た途端にユックがドアを即座に閉めた。
危な……。それ下手したら私挟まるから。あと皆も帰るし私達だけじゃないからそこ使うの。
ほんの一瞬の足止めなのだろうけどやり方が汚い。というか、ユックって彼女の妄信的信者なのかと思ってたけど、違うのね。
そんな意味合いを込めてアドルネアに視線をやれば
「彼は彼女のことが好きだからこそ私には近付かせたくないだけだろう」
だとか。それはそれでどうなの。
取り敢えず稼がれた時間で早足気味に門へと向かう。
恐らく迎えは来ていない。アドルネア家に行くことはきっと伝えられているだろうから。
となればアドルネア家の馬車に乗るわけで。二人で乗り込むところなんてあまり見られたくないがいた仕方ない。
門のところまで来ると案の定アドルネア家の馬車が待ち構えていたのだが、何故かそこにリアンの姿があった。
まずい。下手したらリアラが追いかけてきてる。このままでは彼が見つかるかもしれない。
「え、わ、ちょっと、お嬢様…!?」
「いいから早く乗って」
「なんで俺が先…って、あ!」
リアンが何か言っていたが関係なく一度ドアを閉める。誰かが走ってくる足音がしたからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます