29:思い通りにいかないのは誰のせい(Riara side)

 なんで…!?

 なんでこんなに思い通りにいかないの…!?

 そもそもどうして私に見向きさえしないのよ!

 おかしい…!おかしいおかしいおかしい!!

 本来なら今頃先生に特別授業を受けられるはずだったのに…!なのにルカ・マリアーネルがあの時私の属性を先生に伝えるから!

 本命と近付くには先生の特別授業は必須なのに全然発生する気配がない…。

 好き好んで馬鹿なふりする生徒がいるわけないんだから察するぐらいしてよ!

 お昼を邪魔しても何も言わないし怒りもしない。

 マキアム様と二人にしようとしたのになんでか距離置いて歩いてるし。

 てかそれよりマキアム様私のことバカって言ったんだけど!ひど過ぎない?バカって何。庇ってなんて誰も言ってないのに勝手に庇ってきた方だってバカでしょ?

 なのに私だけバカみたいにいうとか。余計ことしてほしくなかっただけなのに!

 あーーーもーーーーイライラする!!

 はー…。

 それにしても随分と達観してるのよね…。達観というより、何も興味なさそうっていうのが正しいかも。


「リアラさん、聞いてますか?」


 うるさいな!今考え事してるんだから話しかけないでよ!!


「リアラさん!」

「あ…お義母様…」


 しまった…。今は義母から作法を習ってるんだった…。

 我が家は家庭教師をつけるなんてことが出来るほど裕福なわけではない。でも義母がよく作法の家庭教師をしていたこともあってそんなのを雇う必要はなく、私は義母に作法を押し付けられ…じゃない、教えてもらっている。

 正直面倒だしやりたくない。

 こんなのなんの役に立つわけ?別に手で食べなければなんでも良いじゃん。

 そもそも相手もいないのにどうやってダンスなんて踊るの。

 一人ジェスチャーゲームみたいで気持ち悪いし覚えられるわけない。

 とはいえそう言ったら義父が出てきて気持ち悪かった。

 上手なのかもしれないけど好みでも無いおじさんと密着なんて最悪以外の何ものでもない。

 ルカ・マリアーネルはいいよね。

 ザ!お嬢様!て感じだし。家庭教師だって何十人もいるんでしょ。

 ダンスを教えてくれる人だってこんなぼっちでやらなくても男性の講師に教えてもらってたりするんだろうし。


 あーあ、いいな。

 せめてあんなお金持ちの家に養子として迎えられたかった。

 貧乏、まではいかないし、それなりに貴族らしさもある家だけど、…はっきり言って人を養ってる場合?って感じ。

 本当はお金あるけど節約してるんですってわけでもなさそうなのに。

 まあ…それなりに優しいんだけど。


「どうやら今日は身が入らないようですね。ここまでにしましょう」

「え!いいんですか!?」

「聞く気がない方に教えても無駄ですから」


 は?ムカつく。何その言い方!!嫌味ったらし過ぎじゃん。

 前言撤回。

 ちっとも優しくない!

 聖女とかよりルカ・マリアーネルのが良かったかも。

 国を滅ぼすほどの魔女とか最高じゃない?

 でも誰からも嫌われて恐れられる立場は嫌だな。


「早くお部屋に戻って復習なさい。このままでは次の招待には連れていけませんよ」


 それは困る!!!


「今すぐに戻ります。本日はありがとうございます、お義母様」


 そう言ってそそくさと部屋に戻った。


 次のパーティーに参加出来ないのはとても困る。

 何故ならそこに本命が参加するからだ。

 特別授業がないならこちらから接触しに行くしかない。

 そのために意味不明な社交ダンスなんてものを習ってるんだから、ここで置いてかれるわけにはいかない。

 絶対距離詰めてやるんだから。

 そうすれば流石のルカ・マリアーネルだって私のこと少しくらい意識するでしょ。

 少しは嫌な思いすればいいのよ。


 復習なんて面倒だしやりたくないけど、参加するために少しでも賢くならなくちゃ。

 そう思いながら私は今日の復習を黙々と部屋でこなしてから眠りにつく支度をした。

 意外にも広さのある部屋は少し寂しさを感じさせるけど、それでも狭くてうるさいのよりはずっとまし。

 今の方が、あの頃よりずっとずっといい。

 この世界で私は誰よりも愛される。

 そう、決まっているキャラなんだから。

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