21-1:何を言われてるのかさっぱりです。

 クラスへと戻ったところで後ろから声をかけられた。


「ルカ・マリアーネル。少し良いか」


 嫌です。って言っていいなら言いますけど。


「嫌です」

「では教員室に…ん?」


 ん?ではない。嫌です。嫌なものは、嫌。私は無視してクラス内へと入ると適当に窓際の後ろの方の席へと向かった。本当は廊下側の後ろの席の方か教壇の正面の方が目立ちにくいのだが、今し方ラドルに話しかけられたばかりだ。廊下側には座りたくない…のだが。


「ラドル先生は次はこのクラスではなかったと思いますけど。なぜいらっしゃるのかお伺いした方がよろしいですか?」

「ぜひ聞いてほしいな」

「では、丁重にお断りいたしますわね」


 明らかに厄介ごとそうなのに誰が好き好んで良いですよなんて言うのか。冗談じゃない。今から魔力の根源の授業だというのに聞き逃すのはとても惜しい。なぜか。それは書庫でも分からなかったからだ。私がなぜ、こんなにも容易く魔力を操作できるのか。なぜ、こんなにも魔力量があるのか。全の力とはなんなのか。たんに全属性だと言うならわかる。しかし私は光は使えないはずなのだ。それはあの子だけなはずだから。あまり認めたくはないけれど。


「次の講義なら今度個別で教えてやる。だから今は来い」


 これが日本ならば今頃腕なりなんなり掴まれて立たされている気がするが、…いや、ないか。微妙ね。まあ、どっちでも良いけど。この世界では無闇に触れるのは御法度だ。そのため言葉でなんとかついてくるように説得するしかない。…仕方ない。気にはなっていたがラドルが教えてくれるというし、行ってやろうじゃない。でもつまらない要件なら遠慮なく帰るわよ。

 そう意気込みながら立ち上がりラドルを見ればほっとしたような顔でクラスを出ていった。私はそれに続く。


 階段を二階分ほど上がり渡り廊下を渡った先に教員室がある。しかしラドルはそこを通り過ぎた。教員室までって言わなかった?思わず足が止まる。どこに連れて行く気なのか。


「大丈夫だ、そこの休憩室を借りたから、そこで話したい」


 なるほど。それはらば問題はない。確かにこの先には6人程度で使える休憩室がある。なぜ知ってるのか。それは恐らくルカが一度でも足を運んでいるから。なんでかは知らない…覚えていない。

 ラドルがドアを開けるなり電気をつけた。そこまで元から暗くはない室内ではあったが、より明るくなる。壁際に沿うように置かれたソファと、向かいのテーブル。それを挟んでまたソファとなっており、ラドルは手前のソファを示した。え、私がそっち側なの?違くない?でも私の方が身分が高かった。なるほど。納得しながら腰を落ち着ける。


「マリアーネル、一つ聞きたい」

「なんでしょう」

 いつものフルネーム呼びは消えたのね。あれはあれで失礼だから構わないけど。


「お前は全属性を扱えるのか」

「何を言ってるのかわかりませんが」

「この間お前は試験の日に氷を使った」

「使いました」

「その前は火だった。そしてその前は風。課外授業では地の魔法を使い貢献していた」


 嘘でしょ。バカなの。何を目立ってるの私!ばか!でも全属性ではない。闇も光もまだ使ってはいないはず。そうなればまだ私は一般人と変わらない。


「お前の属性は闇と聞く。それなのに他が使えるのはどういうことだ」


 あちゃー………しっかり闇魔法使いだと知られてたわけね。はいはい。なるほど。

 というか、全部が使えると何になるの。モルモット?それとも軍事兵器?


「魔女、なのか」

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