17:調子が狂う(Riara side)
「ねぇ、聞いてますの?ここは貴女のいる場所ではなくてよ?」
「そうよ。なぜあなたのような平民がこのクラスにいますの?目障りで仕方ありませんわ」
「誰にでも色目を使うのははしたないことです。そんなこともわからないほど常識がないなら山から降りない方がいいんじゃなくて?お猿さん」
「わ、私は、別に…」
ちらりと少し離れた後ろの席を見れば何食わぬ顔でただ前を見つめて座っている彼女、ルカ・マリアーネル。
何故彼女はあそこに座っているのか。本来であればこの暴言の数々を吐く彼女たちを従えているのは彼女のはずなのに。従えるどころかまるで嫌ってるかのように距離を置いている。
どうして。
それにこの間も私が話しかけても不思議そうな顔はしていたけど普通に一緒にクラスまで来てくれた。おまけにカフェにも。それに庇ってもくれた。何かがおかしい。どうしてこうなってるの?
涼しい顔して座っているとても綺麗な顔をした彼女、ルカ・マリアーネルは魔女の名に相応しいほどの悪女のはず。それなのに出会ってから全くと言っていいほど何もされない。むしろ興味なんてこれっぽっちもないとばかりに距離がある。
彼女は私が聖女だと知ってから嫌がらせの数々を繰り返して、しまいには一緒に住むはずの邸宅にも来るなと言い放つ始末。力を合わすなんてできるわけもない私達は結果的に魔物の襲撃で危機に陥る。なのに、彼女はそれでも手を取る気はなくて、そんな彼女に見切りをつけた王は彼女を敵国への捕虜として渡すことを許してしまう…はずなのに。
まだ私が聖女だって知らない?そんなわけない。彼女はこの間私が光魔法の使い手だと知っていた。この世界で光が使えるのは聖女だけと言われている。魔女が生まれる家系である彼女が知らないはずがない。
ひょっとして、彼女も転生者?嘘でしょ?だとしたら彼女はこのゲームも知っていて破滅回避のために動いてるってこと?待って待って!!だとしたら私推しと結婚出来なくない!?冗談でしょ???!
「何か用かしら。そんなに見つめて」
…!
「あ…いえ、その、」
なんで我関せずなの!?助けるなら助ける!虐めるなら虐めるってしてよ!モブポジに立たれたら私が動きづらいじゃん!
「そう。なら早く前を向いてはいかが?」
そう言われて気付く。いつの間にか授業が始まっていたらしい。横でギャンギャンしていた彼女たちは居なくなっていた。五月蝿いのがいなくなって良かったけど、この女は授業が始まろうとも我関せずでいたわけ?はあ?気付いてて助けないのも同類だってこと知ってる!?加勢しなきゃいいわけじゃないんだからね!!?
ほんと、頭くる。顔がいいだけじゃない、成績だっていい。なのに全ての属性魔法が使える。私ほど強くはないけど聖女しか使えないと言われてる光魔法だって実は使えちゃうチートな女。婚約者だってこの世界で一番のイケメンとさえ言われてるあのハイネ・アドルネアだし。この女といいハイネ様といい本当に15なの?!って聞きたくなるくらい大人びていて、それに比べると周りのキーキーうるさいのが小学生に見えてくる。どうしたら中3程度でここまで大人になれるわけ。
早めに攻略対象に会いたいからって卒業を待たなかったのは早まったかもしれない。
この世界では10歳になれば6年制の学校に通うことが出来る。もちろん特別な理由がなければお金がないと通えもしないお金持ち学校だ。もちろん飛び級だって出来る。
このゲーム『光玉の眠り姫』ではハイネ様もルカも今年卒業が決まっていた。でも、その話はまだ聞かない。
1年だけでも一緒に過ごしたくて無理矢理聖女の力を覚醒させて入学したのに、これじゃ私は攻略対象と接触ができない。何故ならこの女に虐められてないから。虐められないと助けになんて来てくれない。
どうしよう。自分から見つけて声をかけるしかないけれど…それだと好感度が上がるのかもわからない。
本当になんでこんなイレギュラー起こすの??!やめてよ…!先が思いやられる。うまくやれるのかな、私…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます