10-2:お守りなんてお断りです。

 少しの間先生はリアラに魔法の基礎と使い方、力の伝え方を説明していた。


「やってみろ」

「はい」


 リアラは頷くと教壇に背を向け両の手を組み詠唱をする。しかし何も起こらなかった。そして泣きそうな顔で先生に向き直る。


「あー…そうだな、ルカ・マリアーネル、この子に魔法を教えてやってくれないか」

「嫌です」


 即座に却下をする。絶対に嫌。


「そう言うな。この子も頑張ってるんだ。これだとまた試験に落ちる」

「先生、私先生が教えてくれれば大丈夫です!」

「リアラさんもそう仰ってますわよ」

「しかし俺が教えられることは教えたしな…」

「先生、お願い!見放されたら私、私…!」


 何?この茶番劇。先生も困ったように頭撫でてるけど、あほなの?帰っていい?


「それでは私にはもう用がないようなので帰らせていただきますね」


 教室を出ようとしたところで先生に腕をつかまれる。どうやってそこからここまで来たのよ。瞬間移動でもしたの?それを教えてあげたらいいんじゃないの?


「頼む、このままだと単位をやれず進級が出来ないんだ」

「無理です」

「どうしてだ。君ほど魔法が使えるなら教えられるだろう」

「はぁ…。光属性なのに態と水魔法の詠唱ばかりするお馬鹿な子に何を教えられるって言うんです?」

「光?」

「ええ、リアラさんは光属性です。水魔法は使えるわけがないわ」


 彼女が光属性というのはあのカフェの店員が話していたから間違いない。カフェを出る時厨房の人がリアラのことを話していたのが聞こえていた。

 リアラは驚きと同時に唇をきつく引き結びこちらを睨んでいる。

 何?私何か悪いこと言った?ひょっとしてこの子も魔法が使えないふりして先生に媚を売ってたのかしら。それは邪魔して悪かったわね。


「それでは先生、ごきげんよう」


 くだらない。こんな茶番劇になど付き合う暇があるなら私はカーリカとお茶が飲みたい。彼女は見ているだけで癒される。苛立つ原因から目を背けるように私は教室を後にした。

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