10-1:お守りなんてお断りです。
放課後になり居残りの私はただ席に座っていた。もちろんリアラとは離れた席に。他にも3人程女子生徒が残っていた。今更に気付いたのだけれどこのクラスは女子生徒しかいないのね。なんで男子と分けるのか謎…って思ったけど、この世界の年頃が色恋沙汰云々なんて政治の材料みたいになってるのだから当たり前なのかもしれない。万が一があっては面倒なのだろう。とはいえ、そんなの関係なく知り合う機会があればどうとでもなるようだけれど。
大人しくじっとしていると他にも残っていた3人はひそひそと何かを話していた。またリアラの悪口か、それとも案外私なのか。こちらをちらちらと見ているのが分かる。…小蝿ってなんでこんなにぶんぶんぶんぶん五月蝿いのかしらね。殺虫剤ってないの?ノートで叩き落としてあげましょうか。
「待たせてすまない。再試験のために一度補講をさせてもらう」
…嘘でしょ。再試験を今やるんじゃなくて補講を今やるの?それは先に言って欲しい。言われても居残りの事実は変わらないけど。心の持ちようが違う。意気込んでた私が馬鹿みたいだ。
「まずはアネット・アドラー」
アネットと呼ばれた紫のストレート髪の女子生徒は颯爽と教壇の前へと行くと何故か教師の前で照れたような表情をし話を聞いていた。そして一通り聞いたあとこちらを向いて詠唱と共に掌の上で小さな風の渦を作る。
「よし、完璧だな。やればできるじゃないか」
「先生の教えがいいからです。ありがとうございます」
しなを作りながら照れた素振りで教師に礼をしているのを見て私は吐き気を感じてしまう。今時でもあんなあからさまに媚を売る女はいない。むしろ女性の方がずっと強かだとさえ思うぐらいだ。
そうして次、と残りの二人の生徒も呼ばれては同じく照れながらも魔法を使いクリアしていく。まるで先生に褒められたいが為に居残りをしたような態度にしか見えなかった。
「ルカ・マリアーネル」
呼ばれて無言で前へと出る。先程の茶番を見ていたら一刻も早く帰りた過ぎて私は先生から何かを言われる前に教室内を見渡すように向き直ると掌をすっと上に流す様に動かす。そして心の中で虹を描くと教室内にはキラキラと虹がかかった。やっぱり。魔法は想像力次第で意外になんとかなるようね。氷ができたということは水なのではと思いやってみたけど、まあまあの出来じゃない?
内心でガッツポーズをしてると先生もリアラもとても驚いたようにその虹を見ていた。
「…すごいな。まだ基礎しか教えてないのに」
「もう帰ってよろしいですか?」
「ん?ああ、待て。リアラ・カースン、前へ」
「え、あ、は、はい!」
慌てて立ち上がり小走りに前へと出てくるリアラを見て私はカバンを手に取ると教室を出ようとした。
「どこに行く」
「私はもう終えましたので」
「もう少しだけ待っててくれ」
「なんでしょう」
「いいから」
何も良くない。私は早く帰りたい。魔法のことも調べたいし自分のことも調べたい。なので早く帰りたい。仕方ないと教室の入り口の前の席へと腰を下ろす。
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