9-2:面倒臭いのは嫌われますわよ。

「何故とは?ここの生徒ですもの。どこに居たってよろしいのでは?」


 ハイネと呼ばれた男は眉を顰める。ああ、思い出した。朝カーリカが婚約者がいると言っていた。それが恐らくこの男子生徒なのだろう。

 髪色は鮮やかなほどの紺色。光が当たると青にも見える色で目を惹かれる。瞳の色は少しグレーがかった黒で、見つめていたらそのまま取り込まれそうな気がした。そして何より顔が整いすぎている。私はイケメンという類が苦手だが、ここまで整っていると最早彫刻にしか思えず苦手も何もないなと思えた。そういえば先生も彫刻並みだった。そう考えてる間にユックと呼ばれた男子生徒が前に出る。こちらも整ってはいるがハイネと呼ばれた男子生徒ほどではなかった。でもイケメンに変わりはない。…え?この世界イケメンしかいないの?怖いんだけど…。


「貴女がこのようなところに来るわけがない。普段からリアラのことを馬鹿にしているというのに」

「このようなところ、とは?その発言こそリアラさんやここにいる皆さん、従業員の方を馬鹿にしているのではなくて?」

「な…私は違う!そういうことを言ってるのではない」

「そういうことでしょう」

「貴様…」

「ユック、やめろ」

「しかしハイネ様…っ!」

「口で勝てる相手ではない」


 どういうこと?普段の私は口が達者ってことなの?


「ところでリアラさん、私とお昼をご一緒したいとのことでしたけど、この方達と会わせたかったのかしら」

「え、ちが、あの、私は…」

「そうやってリアラをいじめるのは良い加減にしたらどうなんだ?」

「とんでもない言い掛かりね」

「何故ハイネ様がこんな女と婚約など…」

「…めんどくさ」

「何!?」

「あら、何か聞こえまして?もうご用はないようなので失礼いたしますわ」


 にこりと微笑みカフェを後にした。

 ほんっっっっっとめんどくさ。なにあれ。リアラはつまり私にいじめられてるとあの二人に思わせたくて私をあの場に呼んだの?食堂に誘ったのもその為?はあ?あっっほくさ!そんな暇これっぽっちもあるわけないじゃない!クラスメイトの名前すら覚えてないってのに。

 はあ…無駄な時間を過ごしたわ。それに何あのハイネって人。リアラが好きなら好きって言って二人でくっ付いたら良いのよ。私はあんたになんて興味ないどころか名前も顔も今日知ったっての!あーーーイライラする。

 あのおどおどした雰囲気も態とってことなのかしら。だとしたら大層な演技派女優ね。その態度は周りを苛つかせていじめたいと思わせるには十分だもの。ああめんどくさい!こっちがいじめられてる気分だわ。

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