9-1:面倒臭いのは嫌われますわよ。

「普段はこちらに来ているようですけど、なぜ今日は食堂に?」


 普段からカフェならば今日もカフェに来ていればあんな蝿…こむ…令嬢方に囲まれることもなかったのでは。分かってて行ったのならただの自業自得ではと思うのは致し方ない。世の中自衛してなんぼと私は思っている。


「あ…その、今日はマリアーネル様と一緒に食べたくて…」

「授業中に話しかけてきたのはそのため?」


 そう聞くと恥ずかしそうに小さく頷く。

 何この子。なんでこんなに一々萎縮するの。それが人を苛立たせるとは思わないのだろうか。そう考えていたところに漸く食事が届いた。

 プレートの上にオムライスとサラダ、そしてベーコンを焼いたものとコンソメスープ、紅茶がついていた。普通紅茶は食後か食前か聞くものでは?食事と出されたら食べてる間に冷めるじゃない。と内心で文句を言ってしまうが目の前にある食事に空腹感がより刺激され、そんなことよりは食事が先、とフォークを手にしてサラダを食べる。

 漸くとありつけた食事、というのは大袈裟だけれど、空腹が強すぎたために何を食べても美味しい気がした。

 スープを口にすれば程よい温かさで味は濃くなく飲みやすい。オムライスならばこの位が丁度、と思えた。オムライス自体は卵の味がしっかりとしているのにふんわりとしていて優しく感じた。とても、とまではいかないが美味しいと素直に思える。


「あなたも食べないとお昼休み終わりますわよ」

「あ!はい、いただきます」


 私が食べるのをじっと見ているだけだったリアラになんなのかと問いたくなる。うじうじタイプは正直苦手だ。でもきっと何か言いたいことがあるのかもしれない。そう思えるのはお腹が満たされ始めたからなのか。


「ご馳走様でした」


 手を合わせてそういうリアラを見て、なんだか懐かしいような、ついさっきまでその仕草をしていたなとぼんやりと思う。


「で?今日ご一緒したかった理由をお伺いしてもよろしいかしら」

「あ…、」


 まただ。すぐに言葉を引っ込める。折角美味しいご飯を食べたというのに。それに対して思わずため息が出る。するとリアラはびくりと身体を震わせた。まるで私がいじめているようだ。


「リアラ」


 するとそこに二人の男性が声を掛けてきた。


「ハイネ様、ユック様」


 二人を見るなり立ち上がり駆け寄っていく。

 ん?今ハイネって言った?ハイネ…どっかで聞いた名前ね。


「マリアーネル嬢、何故君がここに?」

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