5-1:私、試験を受けます。

 無事教室についた私とリアラは席にと思ったがここでもまた私は立ち止まる。席がわからない。


「マリアーネル様?」

「なんでもないわ」


 不思議そうに私を見た後でリアラは手を離すと一番奥の席に座り私を隣へと呼ぶ。

 その瞬間クラス中がざわめきに満ち、リアラを睨む者、蔑む者とでヒソヒソと悪口を言っていた。呆れた。あんた達一体何歳なのよ。15にもなって面と向かって文句も言えないなんて随分じゃない?


「お隣、いいかしら?」


 敢えて私からリアラに問えばリアラは不思議そうな顔をしてからすぐに花が咲いたように笑い、どうぞ、と勧めてくれた。どうやら自由席のようだ。


 さっきの笑顔はとても可愛らしかったけど、この子なんなのだろう。私に対しての態度といい、なんか…変なのよね。私に良くしているようでそうじゃない。まるで何かの盾にされてるような感じがする。ひょっとしてこの蛾のような人達から身を守るために利用してる?別にいいけど。


「静粛に。皆席についてるな」


 ざわざわとしていた室内が一斉に静まり返る。

 厳格な声質からして少し年配なのかと思えば案外そうでもなく、30歳ぐらいだろうか、その位のまるで彫刻並みに整った顔立ちの男性が教壇に立っていた。

 30位と思うけど…この世界の年齢は見た目は当てにならないのよね。私といいカーリカといい。


「今日は昨日の続きではなく、試験を行う。昨日の教えの復習でもあるが出来なければ再試験だ」


 ふーん。試験ねえ。懐かしい響き…って、えええええ!嘘でしょ!?なに試験って!いきなりハードル高すぎない!?どんな試験をするのかも知らないけど!終わった。ごめんなさいルカ。あなたの試験の結果はきっとどん底よ…。元より成績がいいのかなんて知らないけど。

 恐らく出来ないと私は完全に諦めモードになる。昨日まではちゃんと聞いてたのだろうけど学校に着いてからもやはり全然分からなかった。そんな状態で試験なんて出来るわけがない。いっそ仮病でも使おうか。


「では呼んだら一人ずつ前に出て来るように。まずはー…」


 一人目が呼ばれ不安そうな面持ちで一人の女子生徒が教壇の前に立つ。

 そして皆の方を向くと両の手のひらを差し出して何かを唱え始めた。

 まさか魔法?この世界には魔法があるの?

 驚きながらも興味津々とばかりに見ているとその女子生徒の周りが淡く光ると共に手のひらの上に小さな炎が灯った。

 すごいすごいすごーい!思わず脳内で盛大に拍手をしてしまう。魔法があるなんてなにこの世界。すごすぎじゃない!?

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