AR・アーマーズ 2
一般的な男子高校生になる予定の僕、毎朝鏡を見てみるとそこにあるのは普通に普通の一般的という言葉が非常によく似合う男子高校生。
まだ高校に入る(予定)の身としてはこれから本格的な第二次成長期を迎えるわけだが、今現在の身長は175センチほど、今現在も成長中であるが僕の最終的な目標としては父親の190センチを超えることだ。
我が家は代々背が高いしきっと伸びると信じている。
体重も至って平均的で、別段暴飲暴食をするわけじゃなく、体はスポーツ選手ほどでは無いが適度に鍛えているから体脂肪率も低め、勉強で困ったことが無い程度には学習能力や学力は高いつもりだ。
実際高校受験も僕はまともにしたことが無いが、これは裏口入学をしたとかそういうわけでは無い。
もとよりキチンと日常生活を送り、やるべき事はキチンとこなし、課題なども全く遅れず提出して、勉強なども適度に熟すために真面目に苦労したことが無い。
家の都合もあり僕は金銭面でも苦労はしないので滅茶苦茶退屈なだけなのだが。
そんな僕が今日大っ嫌いなゲームを学校に通うためにしなければ成らないという苦行をしなければ成らない。
『嫌なら別の学校を選べば良いだろう? この街の学校に通うと決めた時点でお前は最終的には高校で必ずゲームをする嵌めになる。父親からも別の学校を薦められたし、五十年前なら少し難しいが、今は日本は環太平洋連合の参加国なのだからアメリカへの進学は別段難しくない所か、普通であろう? 何故しない…いや。言わなくて良い。その嫌そうな表情とお前達一族の性格を考えれば検討は付く。叶うと良いなそのこ…』
「言うな。AIには相手との間にある空気を読むという機能は無いのか?」
『読んだだろう? だから最後に誤魔化せるようにと少々間を開けたでは無いか。私ほどのAIに成れば空気を読むことぐらいは簡単だぞ。まあ一族代々『恋に対してのみ鈍感』でその上『好きな相手ほど態度が若干悪い』という恋をする上で非常な難点ばかりを持っているお前達の恋が成就しにくいという点を…』
「それ以上喋ったらゲーム機を壊す」
脅しにならない脅しを仕掛けて強制的に黙らせるが、ヴァイルは黙っただけで強制的にゲームを起動し始めた。
どうやら僕のインコムとゲーム機を無理矢理繋げたようで、僕は大きめの溜息を吐き出しながらゲーム機を左右から持つ。
「と言うかなんでこんな旧式タイプなんだ? 最新式にもっとスマート型があるだろう? 仮想ウィンドウ搭載型とか…」
『? 私に言われても困る? 中の機材や外装の素材は最新式を採用されているし、なんだかんだ言って頑丈には作られているようだぞ。まあ、もとより私が運用しやすい様にと改造を受けているからな』
「お前のスペックを再現するのに機体スペックを上げているだけじゃ無いのか?」
『まさか。私が運用しやすい様にと言っただろう? このARアーマーズというゲームはゲーム機の運用スペックもゲームをする上で重要項目だ』
「ゲーム機のスペックがゲーム本体のプレイに影響与えたら意味が…」
『何を言っている。何時の時代もオンラインゲームなどそんなモノだろう? オンライン。ゲームを通信で繋げている現代社会に対して、それを実行できる上でスペックは重要だろうに。古くさい言い方をすればファミコンとプレイステーションでは勝負にならないだろう?』
「その二つをまるで同時期に開発されたみたいに言うね。開発時代がまるで違うだろう?」
『たかが五十年内に起きた開発競争時代の産物、同じ感じだぞ』
「お前。当時のゲーマーを全て敵に回すのか? と言うか画像の処理数も表現能力も桁外れに違うだろうに…まだ家庭ゲームが開発されたばかりの時代に開発された物とある程度慣れたときに開発された物ではそれはスペックに差があるだろうに…」
『それぐらいスペックは重要だと言っている。そんな下らない事を言う暇があったら動かし方でも学んだらどうだ?』
「お前がツッコミ所の多い会話を止めてくれれば助かるだけなんだけど…」
なんで僕が悪いみたいな言い方をするのだろうか…こいつ。
そんな不満を僕は喉の奥にグッと飲み込んでから幾つか画面を進めていく、まずはフリーバトルなどでヴァイルに教えて貰いながら最低限の動かし方を学んでいく。
ゲームに搭載されているチュートリアルより分かりやすい教え方なので非常に助かる。
そして、いざ適当な誰かと勝負しようとオンライン対戦に切り替えてから特に設定を付け加えること無く進めていき、最後に『索敵開始』を始めるかどうかの場面でヴァイス話し掛けてきた。
『今何も設定を付け加えなかったが…まさかランクも『自由』に設定しているのか? 対戦ランクを弄らないととにかく近くに居るプレイヤーと繋がることになるぞ』
「?」
『要するにもし近くに高位ランカーが居たら問答無用で勝負をすることになるが?』
そういうことは早めに教えておいて欲しい。
俺はゲーム画面に映されている『ランク:設定なし』を見てこれ電源切ればなどと想像したが、『電源切ったらデメリットしかないぞ』と言われて貯めることにした。
後悔で一杯一杯になるが、もう今更なので俺は「負けたら負けで別に良いや」と割り切ることにした。
そもそも興味も無いし。
そんなこんなで俺のゲーム画面に映されている俺のロボットである『アーノルド』と名付けられている本社が明らかに僕用にと開発されている機体。
機体は全身黒で装飾されており、機体自体は平均的な二足歩行なのであるが、両腕を隠すほどに大きな肩アーマー、どうやら多数の武装が隠されているようで、背中には大きめのスラスターが付けられている。
先ほど軽く動かした感じでは重そうな見た目とは裏腹に動きは俊敏で動かしやすく感じた。
すると相手の機体も写され初める。
『典型的なランチャー型。要するに遠距離攻撃を得意とするタイプだが…腕前はそこまででは無いな。油断しなければ勝てる』
「何故そう思う」
『ランクがDだろう? ランクは基本最低がFから始まり最高位がAで終わり、そこから先は順位制だ。一気に順位制に上がる手段が無いわけじゃないが、基本は順当に上がる』
「だけど僕はFランクで相手はDだぞ? 普通に俺より経験数が…」
『いや。このランクはDまでは負けても上がる。その上プレイ年数がそこそこ高いのに未だにDだ。これは腕前がそこまで高くない証拠だな。それに武装こそ遠距離攻撃仕様だが、それ以外では正直急拵え出ある事は間違いが無い。装甲も中にあるフレームも全部簡単に買える物ばかりだ』
このARアーマーズは基本骨格である『フレーム』と外付けの『装甲』と武装である『ウェポン』の三つで構成されており、動きなどのステータスは全てその合計値で決る。
その中でもフレームから武器まで簡単にお店で買えるほどの難易度の低いものから、特殊な方法でしか手に入らない物まで様々だ。
僕の機体はフレームこそは一般的な『バランス型』を採用しているが、それ以外は全てオーダメイド品になっており、その分この機体は値段もそこそこする機体である。
それに対して向こうは全て市販で購入できるぐらい簡単な機体、実際何というかザ・量産機という感じの機体の見た目をしていた。
あまり強そうには見えなかったのだが、此所で油断したら負けるかも知れないと気持ちを引き締めて始った試合、僕は二分ほどで完封勝利を収める事が出来たのだが、なんか…身に覚えるのあるような試合運びだった。
そう感じたところで再びチャイムが鳴った。
『対戦相手が文句を言いに来たか?』
「対戦場は近くの公園だぜ? あれプレイヤー間にある丁度真ん中にある場所が選ばれるんだろう?」
『まあそうだな。このマンションお前以外住んでいない上、九割は会社所有だしな…見た感じ対戦相手の居場所は向こうのショッピングモールらへんだろうな』
そんな事をインコム越しに言われながらも僕は「はい? どなた?」と言いカメラ越しに相手と対面、すると「俺。俺俺」と聞き慣れた声が聞えてきた。
「玄関越しに来る俺俺詐欺は斬新だな」
「俺だって! 聡だよ!」
僕の親友のいけ好かないイケメン面を僕に見せつけてくれた。
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