第4話 ガタイのいい男達

俺は着替え終わったので更衣室を出てどこか腰を下ろせる場所は無いかと探す。

あった。木の影で日光がいい感じに遮られてなんだか涼しそうな場所だ。

ふぅ...。

一息つく。 今日は海でどんな事をするのかなと、考えている内に声を掛けられた。


「ごめん、ベンチに座ってる兄ちゃん、今暇?」

「ちょっとだけでいいからさ、5分あれば何とかなるからお願い~」


ガタイのいいお兄さん2人組に話しかけられる。

1人は肌が日焼けているのか黒くて汗が滴り筋肉が輝いて見える。

もう1人は対象的に肌は白く、目を細めた時に何やら背筋が凍る。


「すいません、どの用なご要件で...?」

「あぁ、あっちに木やら岩が沢山ある所あるの見える?」

「はい、見えます。 それがどうかしましたか?」

「そこに車の鍵落としちゃってさ~ 今からスマホが欲しいってのにそのスマホが車の中に置いてきちまった。 だから一緒に探してくれないか?」


肌が焼けている方の男はやっちまったって今にも笑い飛ばしそうな顔で、もう1人の方はなぜかニヤニヤしている。

鍵を落としたならどっちか一人焦ってもいい筈だろう。

だがなんだろうこの違和感。

ちょっと腑に落ちないが...。


俺がどっか行ったって知った時に阿瀬が探し回るのは想像がつく、この人達には申し訳ないが断ろう。


「すいません、僕今ちょっととある人を待ってるんですよね。僕が急に居なくなったらきっとその人が困ってしまいます。 なのでお二方には申し訳ないですけど断らせてもらいます。」


ニヤニヤしていた男がガシッと強く俺の腕を掴む。


「俺たちも車の鍵無くて困っちゃうなぁ~困ってる2人よりその待ち人優先するんだ?」


そう言いながらお前来いよという圧を掛けられる。


脳内で警報が鳴る。こいつらは危ないと。

どうしようと頭を悩ませていると、


「おら早くしろ!」


連れの白い男が俺の腕を引っ張り強制的に立たされる。

俺は白い男の顔を見ていると、そいつの顔がニヤッと少し歪んだ。


「まぁまぁ心配すんなって、あれば終わるからさ、付き合ってくれ。」


5分...?車の鍵を5分で見つけられる...?

それっておかしくね?

まぁでもこれ以上話しても埒が明かない為付き合う事にしよう。


「分かりました。鍵を探せばいいんですね。5分で見つかるとは思いませんが。」


「兄ちゃんが物分りの良い人で助かるよ~ んじゃ行こっか、まずはあそこのデカい岩陰に鍵が落ちてないか探そうか。」


そう言いガタイのいい男2人組は俺を強い力で誘導する。


「そんなに強く引っ張らないでも行きますから...! 腕を離して下さい!」

「あぁ、すまん。こう見えて実は焦っててさ...「先輩!そいつらホモです!!!今すぐ離れて下さい!」」

「はぁ!?」


阿瀬は大声出しながらこちらに向かってくる。

俺の驚きの声がデカかったのか、ガタイのいい男達が一瞬怯んだ。

その内に拘束から逃れる。

逃げられたガタイのいい男達は舌打ちをした。


「もう少しでヤれたって言うのに何邪魔してくれてんの君?」


あからさまに不機嫌っといった感じで2人は阿瀬を見る。

だが阿瀬は、


「先輩大丈夫ですか!? まだ何もされてませんよね? あっ、腕痛みますか?」


2人組がどうでもいいのか、諸紅郎の心配をしていた。


「いや、なんでだよ!?」

「いや、なんでだよ!?って何ですか!」

「心配してくれるのは嬉しいよ!? でも一番やばいの腕だろ!? 忘れてた! みたいな感じで取ってつけてんだよ!」

「先輩が犯されてないかどうか心配で...!!!」


何言ってんだこいつと白い目を向ける。

先輩ぃ!!!と言いながら胸を全力で叩いてくる。


「いてぇよ! さっきの男2人組に思いっきり掴まれた時より痛いんだが!?加減は考えろ!? あっ...。」


阿瀬との会話夢中になりすぎていたが、2人組というワードでトラブルが起きた最中だった事を思い出した。

この後どうすんだろ...って思いながら2人組の方を見ると姿が無い。

その代わりに騒ぎを聞きつけたギャラリーが沢山居る。

阿瀬が来てから騒がしくなって目立ち始めたから、これ以上目立つ前に逃げを選んだんだろうか...?

まさか阿瀬はそれを狙って...!

阿瀬の顔を見る。


どうしました先輩?と言った感じにキョトンとしていた。

流石にそれは無かったか...。

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