第20話

「何?美容とか健康に興味あんの?」


「美容に興味ない子のが希少でしょう?」



両手で和弥の顔を挟んだまま、詰め寄る真琴。



「俺は、お前と違って無限の体力があるわけじゃないから健康には気を使ってるってだけだよ。ゲームとかも指や反応速度なんて勝敗に直結する事もあるからさ。後、視力が落ちない様にとかな。後、顔近いって」



そういって、そっと真琴の手を外す。



和弥が何処か疲れた様に、真琴が元気よく。

二人のどうでもいい時間が、ゆっくり流れていく。



「その両手で顔掴む奴、昔からずっと俺にやるよな」



「何よ、子供っぽいとかいう気?」



「いうまでもないだろ?」



そういうと、のりだした体を元の席に戻す。


「和弥は、気を使い過ぎなのよ」

「真琴は、もうちょっと遠慮を覚えような」


<二人で、ゆったりとした時間を過ごす。ずっと、それでいいと思ってた>



見慣れた世界に、見慣れた二人。


慣れ過ぎたなれ合いに、お互い肩を竦める。



「次は、何処へ行く?」


「ミュージカルのチケットがあります、うちの母さんが用意してくれました」


そういって、机の上にS席のチケットを二枚置く。


「相変わらず、和弥のお母さん太っ腹ねぇ」

「違う意味に聞こえるから、母さんにお礼言う時は太いとか言うなよ」


「了解、私も言われたら嫌だから気をつけます」

「真琴は、言われないだろ……」


自分の母親が、自分のお腹をつまんで体重計にのっている様子を思い浮かべて。和弥が苦笑し、眼の前の真琴と頭の中で比べながら言った。



「和弥の母さんが選んだのなら、きっとノーマルな奴よね」


「俺が選ぶと、蜻蛉の泥沼とかイロモノになるだろうし。真琴がって言うと子供に交じってヒーローショーとかだからな」


「いいじゃない、別に」

「お父さんとお母さんじゃないのに、あの場にいる辛さよ」

「子供が居たら、堂々といけますか?」

「自分が、デカい子供だろ真琴は」


「私達がこのまま夫婦になった場合、デカい子供と小さい子供の面倒を和弥が見る感じですかね?」


「そうなりますな、今より苦労倍増でそうなるかもな。楽しそうだけど」


そういって、二人でふざけ合う。



「うちで、姑の問題は…。孫の取り合いだけになりそうです」


「あぁ、うちのおせっかいとそっちの心配性でえらい事になりそう」


「私んちの、父さんがロクでもない事教えて。和弥のとこのお父さんが和弥とセットで溜息つきながら座ってるとこまで想像が容易なんですけど」


「「今から考える事じゃないか」」


そういって、二人でまた笑った。


頬杖をついて、笑う真琴に。

ただ、座って笑う和弥。


「ロクでもない事って?」「キュウリは水筒の変わりになるとか言ってさ、なるけど塩が欲しくなったりするのよねあれ」


「真琴んちのキュウリだったら、美味しいしそのままで良いと思うけど?」

「うちの父親だったら、余計に変な菓子とか玩具買ってきそう」


「あ~、私にもくれたもんね。手でこうつまむとカエルが跳んでくような玩具」


頬杖をついていないほうの手で、つまむようなしぐさをした。


「もうちょっとこう、なんかあるだろうよ」

「私は結構楽しかったけど?」


「喜ばれるとつまらんとか親父がいって、うちの母親にビンタもらってた」

「何よそれ」


そうして、何でもない時間が過ぎていく。

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