第13話
「あ~もう!」
真琴が口を尖らせて怒っていると、和弥がミカンを剥きながらため息交じりに答えた。
「いつもの事だろ、俺はもうあきらめた」
真琴も対面で、コタツに手をつっこみながらほっぺたを膨らませる。
先日、山に行って山菜を張り切ってとって来たまでは良かったがいつも通り近所のジジババに食べられゲッソリとした声の真琴。
にしても…、そのミカン何処のよ?
「真琴ちの母ちゃんからもらったものだが?」
一瞬ジト目になって、軽く息を吐きだす。
「それ頂戴」そう、短く言ってひょいと和弥の手にあった剥いたミカンを取って口に放り込む。
「自分で剥けよ」と言いながら、真琴の前に剥いたミカンを置くと自分は新しいミカンをまた剥き始める。
「よく、そんなスジまで綺麗に剥けるわよね」
「真琴は、雑過ぎなんだよ。真ん中に親指突っ込んで潰れてんじゃん」
そう言いながらも、「これも御相伴の皆さま同様諦めた方が良さそうだな」なんて言いながら自分の分を剥き終えて食べ始めた。
「そういえば、もうすぐ母さんの誕生日かぁ」
「感謝を伝える為におめでとうと言いたいけど、母親に年取っておめでとうはなぁ…」
「和弥はなんかあげるの?」
「うちはいつもと同じものあげるつもりだけど?」
「私はどうしようかなぁ…」頬杖をつきながら真琴がうんうん唸る。
「まだ、時間はあるんだし。真琴んとこは、何あげても喜ぶと思うけどな」
「そういえば、このミカンの皮だけネットに沢山溜めてるみたいだけど」
「あぁ、風呂に入れるんだよ。なかなかどうして悪く無いんだぜ?」
「こういう風に昔は遊んだわね」
そんな事を言いながら、両目に眼鏡みたいにした真琴。
「こんな風とかな~」
和弥も両肩に当てて、肩パットの真似事みたいにしてみる。
「今時やらないわよ~」
皮をコタツの上に戻して、二人で若干照れ臭く後悔する。
「はぁ~、にしてもこれをお風呂にねぇ…」
そうやって、皮の端をつまんで持ち上げながら考え込む。
「真琴んとこはやらないのかよ」
「うちはコンポートとか味噌にしちゃって残らないのよ」
「まぁ売ってる奴はダメなんだけどな、ワックスやら農薬やらでさ」
「しっかり洗えば落ちるけど、面倒よねぇ…」
「皮用の巾着作るのが面倒なんだよなぁ…」
二人の声が重なってお互い顔を見合わせ、変顔になって止まる。
「「そりゃ、捨てたくもなるか(わよね)」」
「美味しいから結局作るのよね」
「血行促進と美容効果があるんだよなぁ」
瞬間に体をのりだして両手でがっちり真琴が和弥の顔を掴む。
「なんでしょう?急に」
「美容効果ってマジなの?」
「肌すべすべで湯冷めしにくく美白効果もありますがそれがどうか…」
言いかけた、瞬間真琴が立ち上がる。
「母さんに、皮を残すよう言ってくるわ!」
「あっ…ハイ」
ダッシュで消えてく、真琴の背中を目線だけで追いながら和弥が呟く。
「この、残してったミカンどうすんだよ…」
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