第12話


「そんなこんなで、前回取って来た山菜がこちらです」


笑顔で両手を広げた真琴に対して、和弥がやっぱり何か言いたそうな顔でこっちを見続けていた。



「何よ…」と口を尖らせた真琴に、和弥は「いつも通りしんどかっただけだよ」と苦笑した。



真琴は両手を腰に当てて、運動不足よと笑った。



「にしても、やっぱ裏山はよく取れるなぁ。一人で行くのは怖すぎるけど、なにあの罠の数」



特に多いのは、ノビルや銀杏だが和弥の大好物のヤマグリなんかも台の上には並べられていた。



「んで、既に洗ったり下ごしらえの終わったこれで何を作る気なんだ?」



「ここに用意した瓶に入れる分が、ゴマ油と味噌の漬けで。今から作るのは銀杏と砂肝とノビルの塩炒りよ。少しアレンジで酒のアルコールを飛ばして加えるけど」



「つまみじゃねぇかよ!」


「ねぇ、和弥…」



「何だよ…」


ちょいちょいと、後ろを指さす真琴振りかえって焦りだす和弥。



「もう、御相伴にあずかる気満々のおじさんやおばさんたちあんなにいるのに私達二人で食べる分残ると思う?」



「はぁ、田舎のおばちゃんのネットワークは光回線より速いか…」



そんな事を言いながら、苦笑いして材料をかっさらって準備する和弥。



「お前と違って、外では作れねぇから大人しく真琴んちの台所借りて。何か、こしらえて来るわ」


「里芋の餡かけや、スモーク生ハムとか食べたいな~」


と両手を合わせてお願いのポーズをする真琴、無言ではいはいと言いながら台所に消えて行く。



「いっつも、あー言いながらちゃんとしたものを出してくれるのよね」



和弥がつくるものは基本丁寧、真琴の作るものは基本アバウト。


「唯一の不満は、私達が山菜取りに行って。二人でご飯作る時には何故か、もうご近所が皿と箸もってスタンバイしてる事なのよね…」



(絶対、原因うちの母さんだろうけど)



そう思いながら、慣れた手つきで庭先に置いてあるドラム缶に薪を突っ込む。


パチパチと薪が音を立てながら、炎に沈んで。



焼き物や揚げ物何かの火力が必要なものは、やはり薪の方が有利。


煮物何かの火加減が必要なものは、台所の方が有利。



ドラム缶の炎を見つめながら、かき揚げ用の油がたっぷり入った中華鍋をのせた。


ドラム缶ではあるが、中華鍋がすっぽり収まる様に改造され。下に開いた大き目の穴から炎が上がる。


横から薪を突っ込み、真琴は炎を見つめた。


「空気読みなさいよ、まったくもぅ」



少し頬を膨らませながらも、手際よく調理をこなしていく。


「まいっか、私達の分は和弥がなんとかするでしょ」

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