第10話
「はぁ…、にしても自分の事ながらバリエーションの無さは泣けてくるわね」
そういって、思わず鏡の自分に向かって苦笑した。
見慣れた自分の部屋で、一人で頭を抱えた。
「料理の勉強でもしようかな」
そんな言葉が自分の口からでて、慌てて自分の口を押えた。
「にしても、寒くなって来たわ」
和弥の部屋は、暖房が効きまくっているからかもしれない。休日に、予定が空いてればしょっちゅう彼の部屋にいっているから余計に自分の部屋に帰ってきた時に寒さを感じるのかも。
(和弥がいるから、温かいのかな)
「まぁ、私達の関係は変わっても大して世界は変わらない」
(その方が、私には心地よくて)
「そうだ、次に出かけるなら手芸センターがいいかも」
もうそろそろ、そんな季節だ。秋から編んでいれば、冬に間に合う。
(にしても、山岸さんが怪しい薬作ってそう…ね)
その台詞を思い出して、少し笑えてきた。
だって、あの時自分でも言ったけど。
(私も、そう思ってたから)
気が合うというか、感性が近いというか。
和弥も山岸さんも、私に自分の顔をみろっていうけれど。
「山岸さんこそ、自分のセンスの無さを省みなさいよ」
変なトコだけ気を使って、変な所だけ真面目で。
旧友というか、親友だけど。
それにしても…、これだけ冷えてくると鍋が恋しいわ。
そうだ、今度は山にセリでも探しに行こうかな。
「観光地や遊びに行く所は、全然知らないんだけど山なら私が案内できるし」
そうだ、そうしよう。
「女友達連れてくと、怒ったり頻繁に休まなきゃいけなかったりで全然山菜とれないもの。その点、和弥はゲームばっかりやってる割にそんな心配いらないのよね」
だから、楽しい。
「といっても、和弥も何か言いたそうな顔でずっとこっちを見てるのだけど」
それは、小さい頃からずっとそうだ。
「あいつ、山菜とかキノコはあまり好きじゃないのにクリだけ好きでかご一杯にしちゃってさ…」
楽しみ、次の休みが。
そんな事をも思いながら、山菜やキノコの図鑑をぺらぺらと眺める。
「どんなに予習復習しても、プロでさえキノコは怖いもの。だから、やっぱり木の実と山菜」
折角彼氏がいるのに、トイレと恋人なんて洒落にもならないじゃない。
そういって、自分のセンスの無さに苦笑した。
出かける場所も知らなきゃ、センスもない。
山菜に野菜、果物に木の実等豊富な自然は季節を教えてくれる。
だけど、それだけじゃ…。
絵になる程の景色も良いけど、きっと和弥はそんなもの気にもしてない。
「あいつは昔から、何か言いたそうな顔でこっちをずっと見てるだけ」
それで、何かあるの?って後ろを向いたり。言いたい事があるなら言ってみれば?って聞けば。
「お前疲れないの?」っていつも言うの。
失礼ね、私だって疲れもすればお腹も減るわよ何言ってんの?
「ゲージが違いすぎて、こっちの何倍あるんだよ~」
全く、昔からゲームに例えていうせいで笑えてきたじゃない。
「勇者よ、レベルを上げるには毎日筋トレをするのじゃ」とか悪ふざけしながら私は言ったけど。やっぱり、和弥は何か言いたそうにこっちを見て。
「せめて、初期装備位サービスしてくれよぉ…」なんてやり取りしたのを思い出した。
あぁ、懐かしいな。
そんな事を思いながら、来週何を取りに行くか想いをはせて。
「あいつ、いっつもクリとどんぐりばっかり山の様に拾って…」
今年も、来年もずっとずっと。
「私は、山菜も美味しいわよ」っていつもいうの。
んであいつはいつも、何とも言えない顔で苦笑しながら。
「おめーがつくるもんは大体うめぇよ、山菜じゃなくても全部美味い。じゃなきゃ、毎回来るかよこんなしんどいの」
って、楽しみだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます