第9話

相変わらず、休日になると和弥の部屋で二人でだらけていた。



「しっかし…、こうも行く先行く先潰れてると外出る気力もなくなるな~」


「言えてる…、ねぇ和弥。山岸さんが言ってたんだけど、サーカスや動物園や水族館って呼べるらしいわよ」



「へぇ~、時代は進んだなぁ…」


「進んで無いのは、和弥の頭だけだね♪」


「そら、おめーもだよ真琴」




何とも言えない顔で二人が、同じ部屋で考え込む。



「ここで、小説とかだと事件が起こってとか何だけど」


「何もねぇよ、ここ俺の部屋だぞ?」



それもそうねと、苦笑して考え込む。



「そういえば、和弥ってケーキ作るの上手じゃん。あれなんかコツとかあるの?」


「あぁ~、コツっていうか何というか俺は店の濃い甘さって苦手でさ。砂糖を使わないで甘くするみたいなものを良く使うんだよ」



「さつまいもを煮て作った、砂糖を混ぜない水あめとかな。だから菓子や煮物が、優しい甘さだろ?」


そういって、引き出しから大学ノートを真琴の前にすっと出した。



「へぇ~、勉強はできないのにこういうのは熱心じゃない」



「勉強は、お菓子や料理と違って即結果がでないから嫌いなんだよ」



成程ねと、苦笑しながら真琴がノートに眼を走らせてにこりと笑った。


「そういうお前は、研究とかした所見た事ねぇんだけど」


「ん?あぁ~、私のは勘よ。全部適当」



和弥の眼が点になって、真琴を二度見した。


「私は肥料とか、農具とかの研究はしてるけど。料理はいっつもカンで作るわよ?それがどうかした…って何よ、その顔」



「計量カップとか匙(さじ)とか使わないの?マジで??」


「使う訳ないじゃない、指でつまんで何回とかそんな感じだけど?」



「それで、何であんなに毎回美味いんだよ…」


「そりゃ、ほぼ毎日作ってるからよ。うちの庭で」



「だからお前、台所の道具ほぼ使えないんかよ…」



成程、長年の謎が一つ解けたと和弥が苦笑した。




「私昔さ、山岸さんが台所でうーにゃー言いながら微妙な料理作ってそれを食べるのに苦労してから。別に、台所で作らなくてもいいかなーとか思ってるわよ?」



「その話詳しく、あの女がうーにゃー言ってたって?」



「うん、何か初恋の男にお弁当を作ってくんだって張り切ってた」


「その話もっと詳しく!」



「あんたねぇ…」



「だって、他の女ならともかく山岸だぞ?あいつの場合なんか怪しい薬物作ってる様にしか見えないだろがビジュアル的に…」



「あの娘、眼鏡取ったら無茶苦茶可愛いわよ?」



「ああん?!」


「服装がクソださくてセンスがおばちゃんなだけで、ベースは悪く無いわよ?」



「真琴、お前本人の居ないトコでボロカス言ってるな。山岸はお前の旧友だろが」


「ただの、事実だもの。私も温泉一緒に行くまでそう思ってたし」



「温泉行ったん?どこ行ったんだよ」



「熱海よ、あの子がたまたま懸賞で当たってね」


「普通、彼氏と行くだろそういうの…」


「山岸さん、お弁当作って片思いの人の所に持ってったら。もうすでに彼女居て、何もないまま失恋して私だけ大変だったのだけど?」



「真琴南無、山岸もっと南無」



「酔いつぶれておぶって帰る羽目になったり、スイーツバイキング連れてかれたり」


「だから、一時期音信不通になってたんかよ…」



「別に、和弥が嫌いになったわけじゃないけど。むしろ、ずっと好きですけど。向こうが何もないまま失恋して傷心癒してる横で私だけ男友達と楽しくもしもししてたら和弥ならどう思います?」



「キレると思います、はい。間違いなく、壁ドンドン叩きながら怒ると思います」



「デスヨネ~、だから着拒否にしてたって訳」


「あぁー、何か聞いてみたら凄く納得出来たわ」



今日は、謎が良く解ける日だな…とか思いながら。



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