第6話

「くっそ~、又負けた」


相変わらず、スマホのイベントをこなしながら唸り声をあげている和弥。




その横で、アニメを見ながら和弥の方をチラ見して真琴が言った。



「ねぇ、それ失敗九回目でしょ。気晴らしに、どっか行かない?」



「そうだなぁ、久しぶりにボウリングでも行くか」



「そうね、ちょっと遠出になるけど行きましょうか」



そう言って、二人で隣町まで電車に乗って行こうとして。


そして、二人で駅の時刻表の前で項垂れた。





「そういえば、ここはど田舎で電車の本数なんか殆ど無かったんだった」



長らく二人とも電車になんて乗ってなかったせいで、その事をすっかり忘れていたのだった。



二人の後ろを、まるで口笛のBGMの様な寂しい風がひゅるりと抜けていく。




「「どうしよう?」」



思わず、二人ではもる。




「しょうがない、一端もどって車出すか」


「私も、少し燃料代だすわ」



そういって、再び家に戻って和弥は運転席に真琴は助手席に座った。



「ん?真琴、燃料代は俺もお前も出さなくて良さそうだぞ」


和弥が車のメーターを指さして、真琴が助手席からのぞき込む。



メーターはFの一番上まで針が来ていて、またあの母親(おせっかいやき)かと和弥は思わず何とも言えない表情で感謝した。



「和弥の所のおば様って、昔っからいつも無言でこう言う事やるから慣れないとびっくりするわよね」


真琴もシートベルトをつけながら、思わず苦笑いした。



「せめて、言ってくれりゃこっちも感謝くらい出来るんだけどな」



そういって、鍵を回すと軽快に車のエンジンがかかった。




しばらく、車を走らせて目的地に着いたのだが…。





「「何もない(わね)」」



道を間違えたのかと、地図を二人でチェックするが場所は間違いなくここだった。




どういう事だと、見渡すと張り紙がしてあって。



それを見る限り、先々月にボウリング場がなくなって解体が終わった後の更地になってるっぽい。



その張り紙の前で、二人してボウリングの倒れそうなピンの様に揺れていた。



「「うそん」」



燃料代が自腹じゃないだけせめてもの救いかと、再び二人で車に乗り込む前に自販機で飲み物を買い。


車に戻って、二人がドリンクホルダーにそれぞれの飲み物を置いて椅子を倒すと頭を無言で抱え。



タイミング悪く、お互いがお互いの顔を見合わせて変な顔になる。



「和弥君、先どうぞ」



真琴が手で和弥の方をちょいちょいやると、和弥は徐に窓を開けて怒鳴る。



「潰れてるなんて、聞いてねぇよ!」



真琴が思わず、よくできましたと笑いながら手で和弥の肩を軽く叩いた。



「はい、これ」


真琴がバックから、サンドイッチを取り出して和弥に渡し。


「何、このウマそうなサンドイッチ」


「手作りですが何か?」


笑顔で、真琴が和弥が良く使う言葉で首を傾けながら言ってみた。



「ありがとう、ございます?」



笑顔なのに疑問形で和弥が答えたら、真琴が満足そうに頷くと自分の分のサンドイッチも取り出して食べ始める。



「しっかしよー、これじゃただの楽しいドライブじゃんかよ」



「次からは、調べて来なきゃね」


そういって、真琴が持ってきたサンドイッチを二人で食べてさっき自販機で買った飲み物を飲んで一息ついた。



一息ついたらなんか、可笑しくて二人とも声を出して笑った。



「さて、このまま帰ると本当に私たちは休日二人きりでドライブをしてサンドイッチを食べただけになります」


真琴が茶化して、和弥に言えば和弥が神妙に頷いた。



「して、何か妙案がありますかな。お代官様~」


和弥が時代劇の声マネをしながら、真琴に尋ねる。


「誰が、お代官よ。せめて、姫にしてってば」


真琴も笑いながら、和弥の冗談にのった。




「そうね~、ここからもう少し走らせてポニーに乗りに行くなんてどうでしょう?」


その様子を思い浮かべて、和弥が言った。


「それで、行こう。それなら、善は急げだ」


といって車のキーを回した後で、真琴が和弥の握るハンドルに手をそえて真顔で言った。

「安全運転で…、ね♪」


「はい、急ぎません」


「宜しい、では出発~」



そんなやり取りの後、車は走り出した。

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