第3話
「ねぇ、和弥。それ何のゲームよ?」
「ん?あぁ、これは最近新しいのが出たRPGだよ。ほら、チラシとかでよく見るだろ」
相変わらず、休日に和弥の部屋でだらけている二人。
「ん~、先々週店が狭い事を除けばご飯はまぁ当たりだったわけだけど」
「そうね、私じゃまずあんなお洒落な所は選ばないわね」
「俺達二人でチョイスしたら、街中華とかファーストフード店とかになりそうだな」
「私は、そういうの安くて好きだけど?」
「流石に、同じとこに昔から行ってるからあきるよなぁ」
区切りの良い所でセーブして、ゲーム機を引き出しにしまった。
「そうよねぇ、私はアンタんところでこうしてノベルやらなんやら読んでても快適だから特に文句はないのだけど」
「俺の母さん、どっか連れてけって煩いしなぁ」
「迷惑とか?」
「いんや、多分お前がインドア系の趣味も好きだって事を知らないだけだと思う」
そういえばと、真琴が今まで和弥を連れて行った出かけ先を指を折りながら思い出す。
「えっと、山登りでしょ。崖登りでしょ、後は湖の上でボートでしょ」
「山登りは確か、中学の時にいきなりハイキング行こうって言って呼びに来て。三千メートル位の山登ったんだっけ。死ぬかと思ったよ、あんときゃ」
「んで、確か高校の時は崖登りしてたんだっけ」
「俺と確かヒーロー映画見に行って、そのヒーローが特訓で崖登りしてたのを見ては眼を輝かせて私これやりたいとか真琴が言い出したのが発端だった気がするけど」
確か、一時期毎週の様に崖登りに付き合わされたはずだ。
「んで、とどめは大学時代にキャンパスでカップルが湖の上でボートに乗ってるのを指さして私も乗りたいとか真琴が騒ぎ出して二人で乗ったまでは良かったけど」
「私がやりたかったのは、漕ぐ方だったのよね」
「それで、周り全部カップルのボートで俺だけ女に漕がせてるとか言う、公開処刑に等しい環境になって。係員にすら、俺が白い眼で見られながらボートを降りるとかいう事になって二度と行くかバカってなったハズ」
「私は楽しかったけど?」
「自分を鏡で見てから、言ってくれ。薄い茶髪にモデルスタイル、白い肌に平均よりやや上の顔。中身を知らなければ、十人居て七人はカフェに座ってるのが似合いそうな感想がでそうな可愛いよりの見た目してからに」
「他人の評価なんて、気にしたら負けだと思うの」
「少しは気にしろって、おかげで俺が周りにあの後どんだけ言われた事か」
ワザとらしく溜息をつくと、和弥が頭の後ろに手をやった。
「しっかし、そう考えると田舎って行くとこ殆どねぇなぁ」
「空気は美味しいし、山が近いから私みたいなのは毎日鍛えがいがあるけど?」
一瞬ジト目になるが、いつもの事だと苦笑した。
「こういう中身だとは、思わないよなぁ。付き合ってく男は大変だ~」
「今の彼氏は、和弥なんだけど」
一瞬で、眼が点になる。
「そういえば、そうだわ」
「ね?諦めた方が人は幸せになれる事もあるのよ」
「そうだな、下手にうるさい女よりマシか」
「それは、私以外の前では言わない方が良いわよ。私から見ても、何でこんな話す事があって。買い物が長いのよとか思ってるし、言ったら言ったで目の敵にされるもの。世渡りって大事なのよ?、特に女の世界では」
それで一時期いじめにあっていた、山岸さんを思い浮かべながら真琴が苦笑した。
「まぁ、元親友の事は生まれて来た性別を間違えた位の認識でいる俺です」
「その方が、お互い気楽でいいわよね。下手に取り繕う必要もないから、居心地よくてついこうして部屋に上がり込んでやることが無ければ二人でだらけてる訳だしね」
ここに居ない時は、真琴は勉強してるかトレーニングジムでひたすら体を動かしているかだと言う事は長年の付き合いで和弥はよく知っている。
「そういえばさ、真琴って料理出来るんだよな?」
和弥が唐突に尋ね、真琴は鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。
「何よ、失礼ね。料理も応急処置もキャンパーの基本よ基本」
あー、と和弥は何かを思い出した様に頭をがしがしやった。
そういえば、お前台所で料理した所を見たことがないぞ。海でも山でも、なんならうちに来た時も家の庭で。外でて組み立て式の調理器具とかカンカンに薪入れて網のっけたたものや鉄板のせたもの使って作ってたわこいつ。
「でも、ゲテモノは作ってないはずよ。和弥もうまいうまいって食べてたじゃない」
和弥は確かに、全部美味しかったのを思い出して溜息をついた。
「俺がスイーツを台所でつくって、真琴が外でキャンプ飯作ってって。高校時ぐらいまでよくやってたな、いつからだっけやらなくなったの」
真琴がうーんと腕を組んで、一生懸命思い出そうとした。
そして、ぽんと手を叩いてにっこり笑った。
「確か高校受験で和弥が上の大学受けようとして、必死に勉強してて遊んでる余裕何か無くなって。なし崩し的に勉強してたんじゃなかったっけ?」
二人で顔を見合わせて、それだそれだと納得し合う。
「やる事も無いし、次の休みにでもやるか」
「そうね、久しぶりに和弥の作ったショートケーキが食べたいわ」
「俺も、真琴のカレー喰いたいし。次の休日は、買い物からだな」
「といっても、野菜や肉や卵なんかはうちの母さん所からもらってくる方が新鮮で良いものなんだけどね」
「いいとこの料理屋に出荷してる、本物の農家のとれたてとスーパーのもん比べるのが失礼だろ。主に、作ってる真琴の両親に対して」
「残念うちではスパイスは作ってないから、カレー粉とか一部はスーパーのお世話にならなきゃいけないのよ」
「来週が楽しみだな、早く来週になんねぇかな」
「そうね、こういう昔やってた事を思い出しながら過ごすってのも悪く無いわよね」
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