第4話

 食堂から教室に戻る途中、河野大遥こうのたいよう小南剛広こなみたかひろに尋ねた。

「どう思う?」

「大森のことか?」

「ああ」

 食堂は別館にあるので、校舎に戻るには一度外に出る必要がある。厳密には理科棟を通れば外に出る必要もないのだが、遠回りなので天気でも悪くなければわざわざ理科棟を通る生徒はいない。

 日差しを浴び、剛広は目を細めた。

「勧誘しておいて矛盾してるんだけどさ、正直なところを言えば、脈ありの態度を見せられるよりは全然好感が持てたなー。同じチームでやれれば、仲良くやっていけると思うんだけど」

 大遥は苦笑した。「矛盾だな」

「だから言ったろ」

「まあ、気持ちはわかるが」

 勧誘をしておいてなんだが、断られて残念な一方、大森寿々春おおもりすずはるが他人から必要とされたときにしか頑張れないような人間じゃなくてよかったという思いも確かにあった。

「それに、松原まつばらが認めるんならポテンシャルもあるだろうし。あとは、どうすればあいつからやる気になってくれるかって部分だなあ」剛広はあくびをしながら言う。「なんか考えはないのか?」

 大遥は顔をしかめる。「そういうのは、苦手だ」

「……使えねえ」

「お前だってひとのことは言えんだろ!」

「まあ、そうなんだけどさ……あ、ちょっと待ってくれ」

 大遥が眉を顰めると、剛広は自動販売機のほうに向かって歩いていく。なんとなく自分も喉が渇いてきた気がして、大遥は制服のポケットから財布を取り出した。剛広はカフェラテを、大遥は微糖のアイスコーヒーを買った。

 一口飲んで落ち着くと、大遥は罪悪感を思い出す。剛広がそんなことを気にするような人間ではないと知っていたからいままで一度も謝罪を口にしたことはなかったが、大遥のほうがいよいよ自責に耐えられなくなった。

「悪いな、剛広」

「ん、なにが」

 大遥は決まりが悪そうな顔をする。

「俺に付き合ってこの高校に来たばっかりに、こんなことになったことが、だ」

 大遥と剛広は、硬式野球チームの出身だ。中学の頃、二人は学校の部活動には属さず、地元大野城おおのじょうのクラブチームに所属していた。

 九州のチームは、やはり関東や関西などのチームと比べて知名度では大きく劣る。が、当然なかには図抜けた選手もいる。そうした選手は全国の高校のスカウトの目に留まり、ほかの地方の高校で活躍することも決して珍しくはない。

 剛広もその一人になるはずだった。いや、実際になれたはずだ。昨年、全国を制した高校から良い話をもらっていたのだから。

 それなのに、剛広はその話を蹴ってふつうの県立高でしかない福岡南高校に進学した。そればかりか、新入部員がたった三人という苦境にあえいでいる始末だ。所属していたクラブチームの監督から勧められたことも一因ではあるが、大遥の進学予定先が福岡南ふくおかみなみ高校だったことも、剛広が福岡南を選んだことに少なからず影響したはずだ。

 剛広はため息をついて言った。「お前に進路を決められたわけじゃねえよ。次それ言ったら怒るからな」常になく真剣な口調。しかしすぐに笑って、「それに、俺がお前のせいにしたら俺が悪者になるしな」と続ける。

 大遥は自己嫌悪に陥りそうなのを我慢して、「ああ、そうだな」とうなずく。

 剛広ならそうだろう、と大遥は思った。謝ったことを後悔しかけたが、謝らなければそれはそれで悪いものがたまっていただろう。むやみに自分を傷つけても仕方がないし、これでよかったと思うことにする。

 しかし……じゃあどうしたものだろう?

 大遥は、同年代の遊撃手ショートで剛広の上を行く選手は存在しないと思っている。もちろん福岡ひいては九州以外の、ほかの地域の選手を見たことはあまりないが、剛広以上の遊撃手がグラウンドに立っている場面はなかなか想像しがたい。

 その剛広が、世に知られることなくこのまま埋もれていていいわけがない。プロだって目指せるようなやつだ。こんな同期が三人しかいないような現状に直面している場合じゃない。

 自販機の前のベンチに腰掛けつつ、剛広がつぶやいた。

「なんとか一度、大森を連れてこれないかな」

 大遥は立ったままだ。

「連れてこれないかって、どこにだ?」

「決まってる。グラウンドに、さ」

「それは……なんだ、あれか? なし崩しに、『気づいたら野球部に在籍している』みたいな状況に仕立て上げるってことか?」

「あはは」と剛広が笑った。「違う違う。まあ、それも一つの手ではあるんだろうけどさ、たぶんそこまでする必要はないよ。……あいつ、たぶんキャッチボールさえしばらくやってないと思うんだよな」

 剛広はカフェラテのペットボトルを両手で包み込んでいる。

「それが?」と大遥は先を促す。

「なんかさ、大森って、無理やり野球を遠ざけてる気がするんだよ。だから、一度思い出してしまえば忘れられなくなるんじゃないかな」

「なんでそう思うんだ?」

「なんとなく。ただの勘」

「そうか」

 その勘をどこまで当てにできるかはわからないが、大遥にも覚えがあった。つい最近のことだ。受験が終わり、久しぶりにキャッチボールをするだけで、妙な高揚感があった。ボールを相手の胸元に投げ込む感覚が、グラブにボールがおさまる瞬間に伝わる手の痛みが、不思議なほどに心地よかった。

「必要なのは、たった一度のきっかけなんだと思う。大森はそんなもの待ち望んじゃないだろうけど、無理やりそのきっかけさえ与えれば」

「一度、か」

「うん。一回でいいと思う。だから……そうだな、例えば河野が土下座して頼み込むとか」

「おい、なんで俺なんだよ」

「ええっ。だって河野、自分のせいでこんなことになったとか言ってたじゃん」

「ちょっと待て。さっき格好つけてそれを否定したお前はどこに行った?」

「トイレ」

「はあ?」

「コーヒー飲んでたら、トイレ行きたくなった」

 勝手にしろ、とよほど言ってやりたいところだったが、大遥はこう答えた。「……俺も行く」

 昼食後というのもあって、大遥も五限の授業前に用を済ませておきたかった。キャップを締めて、制服のポケットにコーヒーの缶をねじ込む。

「だが、土下座まではしないにしろ、頼み込んで一度だけ無理やり連れていくっていうのはありだな」

 コンクリートの階段を上りながら剛広が言った。

「案外、亜弥瀬とかに行ってもらったらするっと説得できるかもな」

 大遥の頭の中に昔馴染みの女子の顔が浮かぶ。松橋まつはし亜弥瀬あやせ。同じ福岡南高校に通っており、確か一組で見かけた覚えがある。

「なんでそこで松橋が出てくるんだ?」

「いや、元チームメートのよしみというか。俺らみたいなむくつけき男どもに懇願されるより、女の子のほうが男心をくすぐれると思ってさ」

「そんなもんか?」

「そんなもんさ」剛広は朗らかに続ける。「男子高生だからな」

 一理ある……のだろうか。よくわからない。

「だが、松橋が俺たちに協力する道理がないぞ」

「かもしれないけど。でも、なんだかんだでひとがいいしさ、俺らがほんとに困ってるってわかったら、助けてくれるって」

 楽観的だな、と大遥は思う。だが、なにも提案しない自分がことごとく剛広の案を否定したところでなにも進まないこともわかっている。

「確か一組だったか?」

「うん」

「とりあえず行ってみるか」


 用を足した後、二人は一年一組の教室に向かった。ところが。

「いやに決まってるでしょ」

 亜弥瀬から返ってきたのは、にべもない言葉だった。

「えーっ、亜弥瀬が頼んでくれたら、俺らの代のエースが確保できるのに!」

「それって要するに、あたしに色仕掛けをしろってことでしょ? そんなのいや。だいたい、あたしがそんなことする理由もないし」

 大遥が口をはさむ。「いや、色仕掛けとまでは言ってないんだが。ただ、松橋から野球部に入らないかと大森に話を持ち掛けてほしいってだけだ」

「それでもいや。だいたい、女の子に誘われたから野球部に入る、っていうひとがエースでいいの?」

 まあ、確かに。

 松橋亜弥瀬は、小学生の頃に大遥たちと同じソフトボールチームに所属していた昔馴染みだ。やや小柄で童顔。見た目はまだまだ中学生くらいだ。とはいえ、幼さをずいぶんと残しながらも顔立ちは整っている。大きい目に小ぶりな唇。癖毛なのか、肩ほどまである髪は先のほうで少しうねり、前髪はくっきりとした眉のあたりで短く切りそろえられている。

 表情や感情表現が豊かで、いまもツンとして不機嫌そうなのが伝わってくる。

「じゃあ、柚樹を入れてたった三人のままでいいのかよ?」と剛広。

 亜弥瀬はうんざりとした表情を見せる。「いや、あたしが知ったことじゃないし……」

 ちなみに、亜弥瀬は野球部となにもかかわりがない。ソフトボールも、中学にソフトボール部がなかったのですでにやめてしまっている。亜弥瀬がなにか課外活動をしているのかする予定があるのかということも大遥は知らないし、野球部のマネージャーを希望しているという情報も聞いたことがない。

 とそこで、ふと気づいたように亜弥瀬が尋ねる。

「っていうか、加納くんも野球部に入るの?」

 ああ。そうか。

 大遥が答える。

「そういえば言ってなかったか。そもそも大森のことを教えてくれたのも柚樹なんだ」

「ふうん」とうなずいて、亜弥瀬は微笑む。「なんか、懐かしいね」

「だろ? だからさ、亜弥瀬もマネージャーとかで入ればいいじゃん」と剛広が提案する。

「いや、あたし、もう生徒会に誘われてるし。それに野球部のマネージャーってさ、興味がないわけじゃないんだけど、野球マンガとかでヒロインっぽく扱われすぎてて、それにあこがれてるみたいで憚れるんだよね」

 あこがれてなにが悪いのだろう、と大遥なんかは思ってしまうが、まあ、亜弥瀬はいろいろと気にするらしい。

「じゃあ、せめて大森の説得を手伝ってくれない?」

「だからいや」なかなか亜弥瀬は首を縦に振らない。

 もうすぐ昼休みも終わる。なので、一年一組の教室にはすでに結構な数の生徒たちが戻ってきている。

 その中、剛広がぱんと体の前で両手を合わせ、語気を強めて頭を下げる。

「頼む、一度だけ! 一度だけでいいから!」

 その声は一年一組の教室中によく響いた。ぎょっとしたように大遥たちのほうを振り向く一年一組の生徒たち。

「なっ……」亜弥瀬は顔を赤くして、口をぱくぱくとさせる。

 大遥も剛広が大声を出すものだからびっくりした。まわりの目を気にしていないのは剛広だけだ。

「……一度だけでいいから、って……」

「……なになに、なんの話? ……」

「……あれって、六組の小南くんだよね……」

「……亜弥瀬ちゃん、かわいいからなぁ……」

 教室内がざわめきだす。ルックスが抜群な剛広は、入学したばかりにしてすでに他クラスに広く存在を知られているらしい。

 おいおい、どうするんだ剛広……。

 いまから他人のふりをしても遅いだろうな、などと諦念を抱きながら、さてどうしたものか、と大遥は頭をひねる。

 そこに、闖入者が現れる。

「え、なんだ、この雰囲気……」

 ぼそっとした声が教室の入り口から聞こえた。振り向くと、先ほど別れたばかりの男子生徒の姿がそこにあった。

 大森寿々春だ。亜弥瀬の席が教室の入り口に近い位置にあるので、寿々春は大遥たちにすぐに気づいた。

「あれ、河野? 小南もか。なんだ、二人とも一組だったのか?」

「いや、そういうわけじゃないが……」

「ふうん?」首をかしげる寿々春。

「……だれだ、あいつ?……」

「……あのひとも亜弥瀬ちゃんに話なのかな……」

 またささやき声が聞こえてくる。こいつも間の悪い場面に入ってきたもんだ、と大遥は思う。早くも噂話の的になっている。

「あ、でもちょうどよかった。そういえば俺、二人に訊きたいことが」と寿々春が言いかけたそのとき、授業時間五分前を示す予鈴の音が鳴り響いた。

「あ、やばい」と寿々春はつぶやいた。「悪い。やっぱ今度な」

 寿々春は異様な教室の雰囲気にまったく構わず、教室の奥、窓際のいちばん前の席に歩いていく。その席には日の光を浴び、我関せずとばかりに机に突っ伏して寝ている男子生徒の姿。

「おい、稜人いつひと、起きろ。教科書返せ」

 どうやら友人に貸していた教科書を回収しに来たらしい。寿々春に話しかけられ、のそのそと男子生徒は顔を上げる。

「んー。三次以上の因数分解とかさせんじゃねえよ……」

 寝ぼけているのだろう。脈絡のないことを口にし、目をこすりながら、男子生徒は「数学Ⅰ」と題された冊子を寿々春に渡す。教室後ろの黒板には、「四限」の文字の隣に「数学」の文字が書かれている。教科書を手渡すと、男子生徒はこと切れたようにまた机の上に突っ伏す。

 寿々春は手に持った教科書をまじまじと見つめ、そして――

「これはお前のだろ! 古文返せ!」

 小声で怒鳴るという器用な真似をした。

 違うのかよ、と大遥は思った。ちなみに、三限のところに「古典」と書かれている。

 くすくす、と一組の教室のそこかしこから忍び笑いが聞こえてくる。

 結局、寿々春は男子生徒の鞄から飛び出していた古文の教科書を見つけると、勝手に回収して「じゃあ、またな」と大遥たちに言い残して一組の教室を出ていった。

 亜弥瀬があっけにとられたまま尋ねる。「えっと。もしかして、あのひとが?」

「ああ、うん」と剛広。「あれが大森だよ」

「へえ」亜弥瀬の視線は、寿々春が去っていった教室の入り口に向けられたままだ。やがてくすっと笑いを漏らして、「へんなひと」とつぶやいた。

 時計を見て、「剛広、俺たちもそろそろ戻ったほうがいいだろ」と大遥が言うと、「そうだな」と剛広はうなずいた。

「じゃあ、また頼みに来るから」

 亜弥瀬は盛大に顔をしかめた。

「いや。もう来るな」


 結局、なにも妙案が浮かばないまま放課後を迎えた。大遥は教室で着替えてから、野球部に顔を出した。部室が狭く全員は入りきらないので、一年生の荷物置き場はグラウンドの目の前の武道場玄関前になっている。ただ、剛広と柚樹の荷物と合わせて三人分の荷物しかそこには置かれていない。

 大遥がため息をついていると、まるで心中を見透かしたように、すぐ後ろから話しかけてくる声があった。

「やっぱり、ちょっと寂しいよなー」

 振り返る。そこにいたのは、野球部の三年生だ。

「向井さん」と大遥はその人物の名前を口にする。

 向井当真むかいとうま

 見た目は軽薄で、ついでに言動も軽薄だ。顔立ちは端正なはずなのだが、にやにやと少し色好きな感じがする笑顔をよく見せるせいか、同じイケメンでも剛広のような爽やかさはあまり見られない。

 しかし、実力は確か。押しも押されぬ福岡南高校野球部のエースだ。

織絵おりえちゃん以外のマネージャーと、あとついでに、もう何人か選手が欲しいところだよな」

「はあ」大遥は気の抜けた返事をした。「別に、一年のマネージャーは清水しみずがいるので十分だと思うんですが」

「いやいや。マネージャーを甘く見すぎだぜ、河野。むしろ、いちばん大事なのがいい監督がいるいないよりかわいいマネージャーがいるかどうかだ。俺ら選手のモチベーションに直結するからな」

 やはりチャラい。これで実力はかなりのものなのだから、野球の実力の代わりに大切ななにかを失っている気がしてならない。例えば誠実さとか。意外と神様はちゃんと平等なのかもしれない。

「それに、野球部って単純に男が多いしな。同性もいたほうが心強いだろ」

「それはまあ、確かに」

 いまのところ、一年の入部希望者のうちで女子は野球部マネージャー希望の清水織絵ひとりだ。上級生のマネージャーもいるにはいるが、確かにもう一人二人同学年に女子がいてくれると、織絵にとっても気が楽かもしれない。

「ですが、俺にとってはやっぱり選手が欲しいところですね」

「ええー。むさくるしいだけだぜ?」

 どうして、そんな汚物を嗅いだような顔をする。

「だとしても俺たちが三年のときに九人そろわないなんて事態は御免ですし」

 グラウンドを眺める。まだ練習の開始前。軽く体を動かしている野球部員が何人かいるくらいで、グラウンドに出ている人影はあまりない。クラスによってホームルームの終了時間はまばらなので、平日の練習では基本的にウォーミングアップを個々人で行うことになっている。

「そりゃさすがにないと思うけどな。でも確かに、今年の少なさは気がかりだよな」

「ええ。今日も大森ってやつを勧誘しに行ったんですが、色よい返事は聞けていないです」

 当真がいぶかしげな表情をした。「大森?」

「……え?」

「あ、いや」当真は言い訳めいた口調で続ける。「大森って、そんなに珍しい苗字じゃないけど、そんなにまわりに大勢いる苗字でもないからさ。俺の知ってる大森かもしれないって思ってな」

 大遥は言った。「……確か、寿々春です。大森寿々春」

 当真はひゅっと息を吸い込んだ。そして、「へえ」とにやりとした笑みを浮かべながらつぶやいた。「あいつ、うちに来てたのか」

 大森って、意外と有名人なのか? 大遥は強く興味を惹かれる。

「向井さん、大森を知っているんですか」

「ん? ああ、まあな。俺、平野台ひらのだいの野球部出身だし。二個下だからそんなに関わんなかったけど、いちおうは後輩だしな」

 あの、と大遥は期待を込めて言った。「向井さんから大森に声をかけてもらうことってできませんか」

「えーっと、それは俺からあいつに野球部に入るように言うってことか?」

「はい」

 うーん、と当真は眉間にしわを寄せる。「なかなか難しいなー。俺もまた聞きでしかないけどさ、あいつ中学んとき、野球をやめるって決断するだけの目には遭ってるからな」

「そう、なんですか」

「ああ」

「なにが……」あったんですか。そう続けようとしたものの、当真のすまし顔を見て、大遥は肩を落とす。「教えてもらえないっすよね」

 当真は苦笑した。「まあな。あいつも、わざわざ広められたくはないだろうし」

 そういう理由なら仕方がない。大遥としても無理やり聞く気にはなれない。顔が地面を向く。

 しかし、当真は言った。「けどまあ、機会があれば俺からも声をかけてみるよ」

 大遥は顔を上げた。「……いいんですか」

「そりゃあ河野もいちおう後輩だし。後輩の面倒を見るのが先輩だからな」それに、と当真は続ける。

「あいつが野球をやめることに、俺が納得いっていないんだ」

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