第3話

吉田成とは廊下ですれ違うと挨拶するようになった。


「おはよう」


最初はそのくらいだった。日を追う事に会話するようになり、友達からは「吉田と仲良かったっけ?」って聞かれる事が増えた。


ぐっと距離が縮まったのは2年生に進級してからだ。

教室に入ると、ワイワイと賑わっていた。その中心にいたのが吉田成。

吉田は私に気付くと少し目を輝かせて


「同じクラスじゃん!よろしく!」


と、ブンブン手を振ってきた。

なんだかこちらも嬉しくなって手を振り返した。


「こいつは同じ部活の木下勇人きのしたゆうと!こっちはマネージャーの坂野由香さかのゆかと、その友達の、えーと」

村井望むらいのぞみ


自分の周りにいる人たちを紹介してきて、友達多いんだなあと思いながらも「よろしく」と一言。




別に1年の時が退屈だったわけではない。それなりに友達と仲良かったし、クラスも楽しかった。

でも去年の終わりに、たまたま出会って会話しただけの人がいるだけで、こんなに「今年はきっと楽しいんだろうな」と思えてしまう。



吉田成は、私にはとても輝いて見えたのだ。


「俺のことは成って呼んでくれていいから!みんな呼んでるし!」

「こいつ調子イイ奴だからさ〜。俺のことも勇人でいいよ!」

「私も!この子はのんちゃんって呼んでるよ!」


彼の周りに集まる人達は明るい人が多いみたいで、すぐに打ち解けることが出来た。


「私も葵でいいよ」


今から色々考えた。これからある文化祭や体育祭、2年生の大イベント修学旅行。

きっとこの人たちとワイワイするんだろうなあ、なんて。




そう、ただ、ワイワイ楽しく過ごせればいいなあ。ただそれだけで良かったんだ。

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好きということ ぽよきな @poyokina

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