第24話「防波堤の決壊」
程なくすると階段を下りてくる足音が聞こえ、香織がソファに座る浩司の左隣に腰を下ろした。
「ごめんね
「何言ってるんですか! 香織さんが謝る必要なんてこれっぽっちもないですよ! あんなの間違ってます。綾音も勇夫さんも可怪しい。香織さんを責める二人をみてたら腹が立ってきて……文句を言ってやろうと思ったんですけど、それはさすがにヤバいと思ったんで、洗面所で頭を冷やしてたんですよ」
「ふふっ、
浩司が顔に手を当てながら、指の隙間からチラチラと香織の脚に目をやっている。
「か、香織さん……一ついいですか?」
「ん? なになに」
少し間を開けた浩司が口を開く。
「あ、あの……脚、隠してもらえません?」
「え? 脚?」
香織が自分の脚に目をやり、不思議そうに首を傾げた。
「私の脚がどうしたの?」
「そ、その脚は、罪です」
浩司にそう言われたが、全く意味が分かっていない香織。不思議そうな顔をしている香織に、浩司が説明する。
「こう言えば分かるかな? 香織さんって、凄く綺麗で可愛くて……そ、その、セクシーなんですよね。だから、白くて綺麗な生の脚が、その、エッチといいますか……。僕も一応男なんで、見ないでおこうと思っても、目がいっちゃうんですよね……。そういう意味でちょっとヤバいので、隠してもらえると助かります……はい」
急に顔を赤らめる香織。
「
そう言って口を閉じた瞬間、香織は思った。
──私ったら、凄く大胆なこと言ってない? エッチな流れに自分で持って行ってる……。普段我慢出来てる事が我慢出来ない。もう、どうせならこの勢いを利用して、もっと
「僕に、見て欲しい……」
そう呟き、浩司は思った。
──ヤバいぞ浩司! 理性が、理性がぶっ飛びそうだ。僕には綾音がいるし、香織さんには勇夫さんと
浩司は固く目を瞑り、早まる鼓動と動かしたい体にブレーキを掛け、本来なら言いたくもない言葉を口にしようとした。
「あ───」
が、香織に阻止されていまう。
「こ、
予測不能な香織の要求に、頭が混乱する浩司。
「手……ですか?」
浩司は香織の要求する手に何の意味があるのかさっぱり分からないでいた。理由は分からないが、香織に貸してと言われて「嫌です」という選択肢は無いので、左隣にいる香織に左手を差し出す。
浩司が差し出した左手の手首を香織が右手で握ると、自分の右太腿の上に置いた。
「えっ!?」
浩司は一瞬頭が真っ白になった。
香織は自分で作ったこの状況に、内心は心臓が飛び出そうな程動揺している。
──き、き、緊張しちゃう……。
浩司の思考が徐々に回復していき、香織が浩司の手首を握ったまま無言で動かないこの状況に思考を巡らせた。
──えっ……この状況はなんだ? お、落ち着け浩司。落ち着いて考えろ。僕の左手が香織さんの太腿の上に置かれてる。香織さんは無言で動かない。この僕の左手は、僕が動かして香織さんの太腿の上に置いたんじゃないよな? そんな事より、こ、この感触はヤバい……。香織さんは……うぉっ! ほ、ほのかに赤くなった顔がセクシー過ぎるだろ! だ、駄目だ……手が、手が勝手に動く……。
浩司は頑張って手を動かさないようにしていたが、自分の意志とは裏腹に、左手が勝手に軽く力を入れた。
太腿に軽い圧力を感じた香織がピクリと反応し、声を飲み込んだ。いきなり動いた浩司の手に心拍数が急上昇し、抱きつきたいと思っている衝動を必死に堪えながら考えている。
──
浩司も心の中で戦っていた。
──僕の動いた手に香織さんが反応したのに、拒否しない……。あぁ、もう耐えられない。香織さんが受け入れてくれるなら、そこに飛び込みたい。これは、愛、なのか? 僕には綾音が……。こんなの愛じゃないよな? いや、でも、僕は香織さんのことを……。駄目だ、もう何も考えられない。り、理性が……。
その香織のピクリとした反応を切っ掛けに、浩司は感情をコントロールするハンドルから手を離してしまった。
コントロールを失った感情は波となる。そこにストレスが加わる事によって大波となり荒れ狂った。その荒波に乗ったストレスが理性という名の防波堤に接触すると、大爆発を起こし見るも無惨に防波堤を決壊させた。
理性を失った浩司は、感情が赴くままに左手を香織の太腿に這わしていく。動き出した浩司の手に、香織の口から声が漏れた。
「あっ……」
この声を聞いた浩司は煩悩にまみれてしまう。左手の動きは加速し、内へ外へとその白くて美しい太腿の感触を楽しむように圧力を強める。
「はぁっ……んっ」
その浩司の手の動きに、香織の息は荒くなっていった。香織は、普段脚に触れられたくらいでこんなに感じる事はなかった。今の夫婦間の状態と太腿を触る相手が浩司である事、そして絵に描いたようなシチュエーションが香織の気持ちを普段の何倍も高揚させていた。肌の感覚が繊細になり、その敏感になった生脚を浩司に優しく撫でられ、時に強く握られると、味わったことのない快感の渦に呑み込まれ、その渦に身を委ねる香織であった。
そんな香織の荒くなった息遣いに呼応するかのように、浩司の左手が動きを増す。
浩司も今は普通の状態ではない。自分では感じないようにしていたストレスが一気に押し寄せ、それを全て発散させるかのように今の状況を楽しんでいた。もう歯止めが効かない状態。本能が脳を支配し、思考回路は遮断され煩悩の塊と化している。
本能によって動く浩司の左手が、香織の太腿の内側に向かって滑って行くと太腿に挟まれた状態になり、そこで止めた手に力を入れて香織の脚をゆっくりと広げていった。
この行為にも香織が拒否するとこはない。
もう止まる事の無い浩司の左手。動かせば動かす程ビクビクと小さく動き声を漏らす香織。その反応を直に手のひらで感じ、興奮を覚えながら浩司の欲求は更に増していく。
浩司は香織の太腿から視線を外し、香織の顔を見つめると、香織は軽く握られた手の人差し指を唇に当て、浩司がいる方とは逆の方向に顔を向けていた。
その色気のある首筋に、浩司は生唾を飲み込み、今度は内腿から膝に移動させた左手を、感触を楽しみながら上へと向かわせる。
滑らかな肌、柔らかい感触に、浩司の興奮がとどまることは無かった。力を入れたり抜いたりしながら、どんどん上へと進めていく。
やがて到達したのは短パンの裾。浩司は左手から右手に変え、その禁断の裾に右手の指を差し込んだ。
「んんっ!」
香織が声にならない声を上げた。
香織だけではなく浩司の息遣いも荒くなっていたが、本人はそれに気付いていない。浩司の耳に届く音は、香織の声と肌と肌が擦れる音だけ。今、視界に入っているのは、白くて柔らかい香織の太股のみ。
短パンの裾に忍び込んだ浩司の指。その右手の中指の先が香織の下着に当たった瞬間。
「あっ!」
香織の声が一段と大きくなった。
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