第16話「責任とってもらわないとね?」
浩司と香織が二人で夕食の準備をしていると。
「お〜い、真琴が起きたぞー!」
二階から勇夫の声が聞こえてきた。
「起きたぞーって、香織さんご飯の準備してるのに……」
「いいのいいの、いつもの事だから……ね? 私、ちょっと
「もちろんですよ! 早く行ってあげて下さい」
「ごめんね」
香織が二階へと足を向け、キッチンを出たその時。
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。リビングを横切ろうとしていた香織がインターホンの画面に目をやる。
「あっ、綾音ちゃんだわ」
「香織さ〜ん、
浩司がキッチンから少し大きめの声で香織に声を掛けた。
「うん! ありがと〜」
香織が礼を言って足早に二階へ上がる。香織の後ろ姿を眺めながら、玄関へと急ぐ浩司。
ガチャ……
「
「わっ!
浩司が事情を説明する。
「そうなんだ。それじゃあ、このままお邪魔しちゃおうかな?」
綾音も家の中へ入り、浩司と一緒に夕食の準備を手伝うことに。
❑ ❑ ❑
皆が揃い、夕食がスタートした。
勇夫と綾音の話で盛り上がる中、香織がせわしなく動き、綾音もそれを手伝っている。
「綾音ちゃんごめんね、お客さんなのに」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
浩司は、夕食が始まってから香織がスーパーでの出来事を口にしない事に、一人考えていた。
──香織さん、スーパーであった事言わないのかな? 勇夫さんが何もしてくれないって言ってたから、言ってもしょうがないのか……。でも、あれはさすがに注意しとかないと危ないだろ。勇夫さん何考えてるんだ? 香織さんのこと好きじゃないのかな?
浩司が一人悶々としていると、香織と目が合った。目を閉じながら軽く頷く香織に、浩司も同じ仕草で返し心で思う。
──言わなくていいってサインだよな? まぁ、夫婦間の問題だもんな。僕がとやかく言う筋合いは無い……か。
「そう言えば浩司君が家のネットを見てくれたんだって?」
勇夫が浩司にそう話し掛けると、香織と勇夫のことを考えていた浩司が不意をつかれて少し驚いている。
「え? あっ、はい。そうなんですよ。うちのプロバイダーの方が安いし、何かあった時に僕が担当なら安心かと思いまして、営業してました」
「それはいい! 良かったじゃないか香織。ネットがストレスだって言ってたから、これで解消だな? はっはっはっ!」
勇夫の言葉に浩司は思う。
──うわ〜、他人事だな……。香織さんに勇夫さんのこと聞いてなかったら、妻想いな発言なんだろうけど、内情を知ってると勇夫さん痛いなぁ……。
すると、綾音が口を挟む。
「うわ〜、勇夫さんって妻想いなんですね! 香織さん羨ましいな〜」
「そう? 綾音ちゃんも優しい旦那様で良かったね」
香織が綾音にそう言葉を返した。
「う〜ん、優しいですけど、ちょっと体が細いんですよねぇ……」
浩司の体型は、細身ながら筋肉質で無駄がない。普通の人が見れば逞しい体と言うだろう。だが、綾音は違う。綾音はとにかくマッチョ好きなので、浩司の体型に不満を持っていた。
「ふむ、確かに浩司君は細身だな! 飯も食ったし、二階で一緒に筋トレするか?」
これには浩司が断固として拒否する。
「丁重にお断りさせて頂きます」
それに対し、綾音が少し嫌味っぽく言葉した。
「
「ああ! それは有り難い! プロの先生に無料で指導してもらえるとは、贅沢だな!」
「もしかしたら、高く付くかもしれませんよ?」
「はっはっはっ! これは一本取られた! しかし、綾音ちゃんなら幾らでも払うぞ!」
勇夫と綾音が二人で大笑いしながら席を立ち、二階へと上がって行った。その様子を半目で見ていた香織が。
「何が面白いんだか。筋トレ筋トレって……やればやるほど良いってものじゃないでしょ? そんなにやっても体に良くないんじゃない?」
リビングで、浩司と香織と真琴の三人になると、香織が不満を口にした。
浩司は今にも寝そうな真琴を抱っこし、香織に言葉を返す。
「僕もそう思いますけど、何を言っても無駄ですよ。筋トレしてる自分に酔ってるんでしょうね」
「あ〜、
席から立ち上がった香織が、破れたスカートを見て困惑している。
「破れてるって言うより、切れてる感じですね……って、わわっ!」
浩司がいきなり目を手で覆った。
「どうしたの
「いや、香織さんが切れた所を引っ張ったから……その、し、下着が……」
「えっ?」
香織がスカートの切れた所を摘んでいたその場所が、位置的に下着が丸見えになる所だった。
「やだ、恥ずかしい……。
「み、みてな……いや、す、少しだけ……」
「
浩司が手で目を覆ったまま、あたふたしている。
「せ、責任ですか! 取り……責任とらせて頂きます!」
香織が大笑いした。
「あはははっ。じゃあ、責任とってもらいましょう! って、嘘よ」
浩司がやっと手を目から離すと。
「いや、責任とります! て、手伝いをします! え〜と、
笑いながら考える香織。
「ふふっ、ありがと。──そうね……せっかく寝てるから、上に連れて行くと起きそうよね。このラグに寝かせてもらえる?」
「了解しました! ゆっくり連れて行きますね……」
浩司がそう返事をし、真琴が起きないようにゆっくりと立ち上がった。
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