デート?のお誘い1


自宅に戻り、ベッドに飛び込む。


「はぁー、今日はいろいろなことがあったなー、疲れたし寝るか」


目を瞑ると眠ってしまいそうになる。


「あっ!」


あぶない、もうちょっとで寝るところだった。


大事な事を忘れていた。


田戸さんに連絡することを!


このまま眠りについたら、明日みんなに怒られるところだった。


ベッドから体を起こして、田戸さんから貰った紙を財布の中から取り出す。



えっと、電話番号は‥


田戸さんに、もらった紙をみて間違いないように電話をかけた。


《トゥルル、ガチャ》


「もしもし、田戸さん?」


「はい、田戸です」


「あの谷元です、ちょっと連絡が遅れました」


「あっ、谷元さん!全然連絡ないから電話してくれないのかなって‥」


少し元気がなさそうな声のような気がするが‥。

 

「すみません、あの後仕事でして終わった後、同僚と夕食を食べていたんで」


「へー、同僚と仲がいいんですね」


「みんな年が近いですからね、1人を除いて‥」



「こっちは、私より年上の方ばかりなのでなかなか話が合わないのです」


「そうだよね、資料館って若い方いなそうな職場だよね」


「今度1人大卒で女性が入るって聞いたから待ち遠しいです!」


声が弾む田戸さん。


「ところで、職場ってどこで働いているんですか?」


「本屋で働いているよ」


「そうなんですか!私も本屋か博物館か迷っていたんですよね」


「博物館か‥選択肢としてあったけど学芸員の免許を取らないといけないから大変そうだったからやめたんだよなー」


「私は大学で資格取れたからよかったですけど、一からやると大変ですからね」


「なら本屋にしといて良かったよ 店長になるかもしれないし‥」


「えー、店長にですか!すごいですね」


「店長としてやっていけるかと不安だけどね‥」


「そうなんですか、何事も挑戦だと私は思いますけど」


すごいポジティブシンキングな考え方、私はそんなポジティブな考え方にならないなと思ったけど‥



「なんか、田戸さんから勇気をもらった気がするよ」


「それならよかったですー!」



「話は変わりますが、今度都合が良い日にどこかいきませんか?」


田戸さんから、お誘いが来た。


「えっと‥」


こういう時は、どう返せばいいのだろうかと悩んでいると


「仕事で忙しいですか?店長になるって言っていたし」


「そ、そんなことないですよ」


「では、来週の日曜日どうですか?、ちょうど休館日なんですよ」


日曜日が休館日って、大丈夫なのかとまたまた心配になった。


「日曜日?えっと‥」


スケジュールが書いてある手帳を見ると、日曜日は、今のところ仕事は休みになっている。


「空いているよ」


「では、行き先はすべて谷元さんにお任せします!」



「えっ、あの‥無茶振りなんですが」


「ふふふ、楽しみだなー」


こちらの話を聞いていない。


しかたない。


「わかったよ、また行く場所が決まったら連絡するよ」


「では、お願いしますねー、おやすみなさい」


「おやすみなさい」


うーん。


どこに行こうか悩みの種ができてしまった。


長々と電話してしまったから、考えるのは明日にして早く寝るとしよう。



翌朝


「ふぁぁー、暑い」


9月にもなるが、まだ暑い日が続く。


さて今日は、嶋さんに店長について話し合わないといけないな。


朝食をとり、いつも通りの通勤ラッシュに巻きこまれながら七宮書店についた。


従業員専用のドアから、控室に入る。


タクが見当たらない。今日は休みか。


嶋さんが、いつもの朝礼を始めた。


「今日も暑いけど、一日みんな頑張っていきましょう」


「ああ、それから今日の仕事終わりにみな集まってくれるかい?私から話したいことがあるから」


「わかりました」


堀内さん、加藤さん、私がそう言って、私以外はそれぞれの持ち場に散らばっていった。


「あの嶋さん、ちょっとお話があるのですが」


嶋さんを呼び止めた。


「谷元くん、店長の話かい?」


「そうです、みんなにも相談したのですが、私が店長になってもいいと了承を得たので、その‥」


「おおー、やってくれるのかい!」


喜ぶ嶋さん。


「はい、頑張りたいと思います」


「そうか、それはよかった」


「帰りに、またみんなに話そうと思うのだが、息子夫婦の家にいくのが、早くなったんだ」


「それは、急ですね」


「細かい話は仕事終わりにするから」


「はい、わかりました」


もうそろそろ開店の時間だ。


シャッターを開けないといけないな。


ガラガラガラ


お客様が、数人並んでいた。


「お待たせいたしました、開店時間です」


扉を開けると早速お客様が数人、店に入ってきた。


「いらっしゃいませー」


その後、いつも通りの仕事をこなした。



閉店時間になると、残っているお客様がいないか確認や本の整理をしているとレジ前にいる嶋さんが、


「もうお客様はいないね、ではみんなここに集まってくれるかい?」


「はい、わかりましたー」


私と加藤さん、堀内さんがレジ前に集まった。


「今日一日お疲れ様でした、谷元くんから聞いたかもしれないが、腰を痛めてから仕事も辛くなったから、息子夫婦が住んでいる神奈川県に引っ越すことになったんだ」


「貴海から聞きました、嶋さん、腰がいたいなら休んでもらっていいんですよ」


「私もそう思います」


「ははは、2人とも優しいな、私は店長だからね、もうあと引っ越すまで一週間だから最後までがんばるよ」


「えっ!そんなに早く引っ越すことになったんですか?」



「ああ、息子の都合でね、だから谷元くんに後を任せることができて嬉しいよ」


「そうですか‥‥寂しくなりますね」


「おい、おい、しんみりしないでくれよ、泣けてくるからね」


泣きそうな表情の嶋さん。



「あと一週間しかないから店長の引き継ぎをビシバシ伝授するから」


「お手柔らかにお願いします」


「ははは、こちらこそ」


「では、話は以上だから、みんな戸締りと電気を消したら帰宅してくれ」


というと嶋さんは、帰って行った。


戸締りと電気を消した後、従業員入口の前で、


「じゃあ、加藤さん、堀内さん」


「貴海、明日は私が休みだから私の分まで頑張ってね」


「私がいるから大丈夫!」


堀内さんが、やる気だ。


「じゃあ、よろしく」


「何言ってんの、貴海もでしょ?いや店長!」


「まだなっていないから、その呼び方はしないでよ、なんかソワソワするから」


「はいはい、じゃあまた明日」


「さいならー」


帰り道、田戸さんと何処にいこうか悩んでいた。


バスに乗っていると、市内の観光スポットが広告として載っていた。


田戸さんは、七宮市には来たことないだろうし、今、巷で話題の御朱印集めがあったな。


スマホで、ちょっと調べてみる。


あった、コレだ。


SNSで話題!7つの神社巡りをして御朱印を集めよう。


なるほど、楽しめそう。



そのサイトに書いてあることをまとめてみると、こうだ。



七宮市には、昔から伝えられている話がある。


それは7つの神社にお参りすると願い事が叶うと言われているのだ。


その7つの神社とは、酒照神社さかてるじんじゃ白田神社しろだじんじゃ岩弓神社いわゆみじんじゃ大海人神社おおあまとじんじゃ佐千原神社さちはらじんじゃ阿良声神社あらごえじんじゃ明地神社めいちじんじゃだ。


よし!田戸さんと行くのは、この御朱印集めにしよう。


自宅についたら、田戸さんに早速電話だ。


バス停につき、自転車置き場から自宅に向かう。


「ただいまー」


「おかえり、今日は早かったのね」


母親が、玄関にやってきた。


「今日は、ご飯食べずに帰ってきたから」


「じゃあ、夜ご飯食べるのね」


「頼むよ、じゃ出来るまでちょっと部屋で電話をかけるから、できたら呼んでね」


「わかったわ」


足早に2階の自分の部屋に向かった。





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