第6話

「おいひー……」

「本当ね。あっイチゴもらうから」

「あーっ! ずるいよツカサぁ!」

「うーんおいしっ……ほらクリームやるからあーんしなさい?」

「あーん……いやイチゴとクリームは釣り合わんからな? あーんごときで私を誤魔化せると思うなよ?」

「しっかりあーんに乗って食べたくせに、何言ってんのよ」

「彼女のあーんに乗るのは彼女の務めだからだよ!」


落ち着いたBGMの中、空調の効いたレストランの席で。甘えモードから搾取モードにでも入ったのかツカサは店のメニューで一番高いパフェとチュロスを私に奢らせた。

ふふふっ学生から社会人にクラスチェンジした私にとってはそれくらいじゃ心は折れないぜ……? いやでもあれは流石に高いでしょ? あれでインディーゲーム何本買えるんだ?

やけになってガジガジとチュロスをかじる私をツカサは嬉しそうな顔で見ていた。見るなよぉ……

ごくんっとチュロスを飲み込んで、私は息を吐いた。


「しかしまあ、遊園地に来てまでレストランとはねー」

「まあそうね……あたしたち何しに来たのか分かんなくなるわね」

「こうなったらこの遊園地のレストラン全制覇を……!」

「やんないから」

「ぶー」


私はテーブルにつっぷした。そのままツカサに頭を撫でられた。くっ悔しい! こうなったらもう一度お化け屋敷に連れて行って……! ああ嘘ですっ、嘘だから頭を強く握らないで! ていうか彼女の心読むなよぉ!


「幼なじみだし恋人のあんたのやりそうなことくらい分かんのよ。どーせもう一度あたしをお化け屋敷に連れていこうとか言い出すつもりなんでしょ?」

「はい……そうでした……」


チュロスをかじりながら得意気に胸を張る恋人を見て、私はぎりぎりと拳を握った。でも飲み込むときの喉の動きがなんかいやらしいから許す。

でも私がテーブルにつっぷしている間にしれっと私のパフェつまんだの分かってるんだからな?


「ねっ、次はどうする? まだまだ夜のライトアップまで時間あるよ?」

「そうね……今の時間はショーもやってないし。あんたが決めてよ」

「そう? それじゃ……」


ツカサに渡されたスマホを眺めると、一つだけ。究極に面白そうなところがあった。

やはり、私たちはこの宿命からは逃れられないみたいだね!


「嬉しそうね。ねっ、何か良いトコ見つけたんでしょ? 教えてよ」

「それはね……いや、あえて内緒にしておこうかなぁ?」

「なにそれ? ほら口開けな?」

「あーん……んくっ。ほら、食べたら行くよ! 私たちにピッタリなところがあるんだ!」

「そっそうね。楽しみだわ」


今この子ってば私ののどを見てたな? ツカサにスマホを返しつつ、私は心の中で静かに笑っていた。存分に楽しもうじゃないか……

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